曽祢まさこ「花鬼の記 〜赤い瞳のみづは〜」(2012年9月1日初版第一刷発行)
・「第一話 赤い瞳のみづは」
明治の頃、鬼怒田の東の山裾にある庄屋屋敷で、竹彦は、母と共に暮らしていた。
年の離れた二人の兄は家を離れ、実業家の父は町中の別宅にいることが多かった。
幼い彼は身体が弱く、臥せていることが多かったが、体調の良かったある日、裏山の隠れ家に、若い女性のお遍路が倒れているのを発見する。
彼女はみづはという名で、髪・唇・瞳は真っ赤で、胸からは血を流していた。
だが、彼女は彼に人を呼ばないよう言い、じっとしていれば治ると安心させる。
彼は、みづはに食事を運ぶが、日に日に、彼女の髪や瞳は黒に近づいて行く。
どうも体調によって、髪と瞳の色は変化するらしい。
彼女のもとを訪れた後、彼は腹痛に襲われ、臥せる。
その夜、黒髪のみづはが、死にかけている彼の枕元に現れ、運が良ければ助かると、血を一滴、飲ませる。
そして、彼にある秘密を教えるのだが…。
・「第二話 夢鬼追記」
竹彦の孫の竹流(たける)は、高校受験を控えた中学三年生。
彼は幼い頃、祖父が亡くなった時に、みづはと出会い、以来ずっと、彼女の面影を胸に抱いていた。
女友人の千里から、水端(みづは)村の伝説を聞かされ、彼はその水端村について調べる。
その近辺に水神を祀った神社があり、彼は、みづはと再会できるよう、そこにお百度参りをしようと決める。
一方、千里は、彼がお百度参りをしていることを知り、水端村の伝説に出て来る「赤い髪の鬼」のせいだと考え…。
・「第三話 花の行方」
N市の大学に進学し、同棲するようになった竹流と千里。
千里は彼との同棲にウキウキであったが、ある時、テレビで少年の誘拐殺人事件のニュースを観てから、竹流の態度が変わる。
少年の葬儀の場面に、みづほの姿が映っていたのであった。
彼は、殺された少年の墓地でようやく彼女と再会し、思いの丈を打ち明ける。
みづはには拒否されながらも、彼は千里と別れ、みづはと会おうとする。
千里は、彼の心を取り戻そうと、彼の心を捕らえた相手を突き止めようとするのだが…」
2020年6月8日 ページ作成・執筆