沖田有美子「学園迷宮」(1995年12月1日初版発行)

・「放課後は殺意の時間」(1994年「ホラーM」6月号掲載)
「聖城女学園高等学校。
 片山愛美はクラス委員で、成績優秀な女子生徒。
 しかし、この学校は志望校を落ちたために入ることとなり、二流高校と蔑んでいた。
 クラスメート達とは一切打ち解けず、家では受験に失敗したことを母親に八つ当たりする。
 ある日、愛美は同じクラスの岸田久美と食堂で知り合う。
 久美は不良ぽかったが、実にオープンで、彼女と仲良くなったことをきっかけに、クラスメート達とも打ち解けていく。
 ある日の放課後、愛美は久美から、工業高校の男子生徒達を紹介され、ゲームセンターに行く。
 だが、皆で楽しんでいるところを、担任の小森先生に見つかってしまう。
 以来、小森先生は久美に嫌がらせをするようになり…」

・「霧の壁」(1995年「ホラーM」4月号掲載)
「朝から霧の深い日。
 ある中学校で生徒や先生が一人また一人と姿を消していく。
 霧がどんどん深くなる中、クラス委員の歩美、千春、真理は学校からの脱出を図るのだが…」

・「奪う視線」(1994年「ホラーM」12月号掲載)
「永江さつきは東京からの転校生。
 彼女の父親は銀行の支店長で、その都合上、引っ越してきたのであった。
 さつきはスタイル抜群で、頭も良かったが、家庭科だけは苦手。
 学校に居残りして、ワンピースの仮縫いに悪戦苦闘していると、クラスメートの新川美智が話しかけてくる。
 新川美智は非常に影が薄く、クラスメートともほとんど会話がなかった。
 美智は、仮縫いを仕上げる代わりに、さつきの家に行っていいかと交換条件を出し、さつきはその条件を飲む。
 日曜日の午後、さつきは美智を自分の部屋に招くも、美智は人のものをべたべた触り、何だか気持ちが悪い。
 これをきっかけに、美智はさつきを真似るようになり…」

・「赤い闇の森」(1995年「ホラーM」10月号掲載)
「夜の森。
 理香は、佐織の写真を藁人形と共に釘で木に打ち付けていた。
 佐織は理香の親友であったが、中学の時から付き合っていた高田を彼女は奪ったのであった。
 突如、木の陰から若い男が現れる。
 彼の名は刀夜で、長い間、この森にずっと閉じ込められていたと言い、どうも人間ではない。
 それでも、願いを叶えると言われ、理香は御神木の下の石をのけ、彼を解放する。
 まず、手始めとして、理香は刀夜を彼氏として、佐織に紹介する。
 予想通り、大人っぽく、イケメンな刀夜に佐織はすぐに心を奪われる。
 次に、理香は、佐織と高田を遊園地に誘い、ダブル・デートをするのだが…」

・「月光桜色」(1992年「ボニータミステリー」No.28掲載)
「木田朗は陸上短距離走の中学記録保持者であったが、高校入学後、陸上部に入るのを渋る。
 朗は「キタロー」という綽名の通り、霊を視る能力があり、慣れるまでは明るいうちに帰りたいからであった。
 最初の登校日早々、彼は、学校の桜の木に男子生徒の幽霊を視る。
 その幽霊は陸上部の相田智久という先輩で、三月に交通事故で亡くなっていた。
 クラスの高屋さくらは相田智久と何か関係があるようなのだが…」

・「死者からのメッセージ」(1990年「サイン別冊SCミステリー」掲載)
「ある高校のバスケットボール部。
 一年生の森居由貴は、二年の中野先輩が目当てで、入部していた。
 他にもそういう部員は多く、中野先輩をプレーを見ては大はしゃぎをするが、同じく二年の小山先輩(女子)はそういう女子達に厳しい。
 ある日の放課後、忘れ物を取りに戻った由貴は、小山先輩と一緒に帰ることになる。
 小山先輩は練習熱心で「バスケの鬼」と呼ばれていたが、実際は、心配りのできる、優しい女性であった。
 由貴は彼女と話していて、小山先輩が中野先輩に想いを寄せていることを直感で知る。
 その直後、バスに乗ろうとした小山先輩は交通事故にあい、死亡。
 以来、由貴は小山先輩の幽霊に付きまとわれるが、その理由とは…?」

 個人的なベストはストレートなホラー「霧の壁」。
 「人喰い霧」(?)というB級な発想に貫かれておりますが、こういう作品、ありそうでなかなかないのでは?
 あと、初期作品「月光桜色」「死者からのメッセージ」は心温まる作風で、良いと思います。
 ただし、「赤い闇の森」はダメ。
 解放してもらう代わりに願いを叶えると言っておきながら、ラストで「願いはかなえた さあ、代償をもらうぞ」というのは納得いかないぞ。

2023年1月19・20日/2月3日 ページ作成・執筆

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