高橋葉介「怪談少年」(2014年3月20日初版第1刷発行)

 六道辻成は姉の影絵と二人暮らし。
 影絵は「視える」人で、様々な相談を承っていた。
 その影響で、彼が巻き込まれる怪異な事件の数々とは…。

・「耳なし芳一」(「まんがグリム童話」2013年4月号)
「帰宅途中、辻成は姉と出会う。
 姉は、今夜「よくないモノ」が彼を連れに来るため、筆と硯と墨を買いに出たと話す。
 家に帰ると、姉は彼を全裸にさせ、身体に守護の呪文を書く。
 書いた後、姉は彼に絶対に声を出してはいけないと警告し、隣の部屋に引っ込む。
 その夜、「よくないモノ」がやって来るのだが…」

・「茶碗の中」(「まんがグリム童話」2013年5月号)
「姉がのっぺらぼうになっていた。
 原因は、辻成が帰り道にクラスメートの西本カンナの家に寄ったためであった。
 彼女の家で彼は舶来の紅茶を御馳走になるが、飲もうとすると、茶碗の中に彼を睨みつけてる姉の顔が見える。
 彼は飲まずに帰ろうとするが、その際、茶碗がひっくり返し、お茶と一緒に姉の顔もどこかに流れてしまったのであった。
 彼は姉の顔を捜しに出るのだが…」

・「猿の手」(「まんがグリム童話」2013年6月号)
「姉の客が仕事の謝礼に置いていった『猿の手』。
 この『猿の手』は願いを三つ叶えてくれるという。
 辻成が「死んだ父さんに会わせてください」とお願いしたところ、『猿の手』は彼の首を絞めつけ、死なそうとする。
 姉は『猿の手』を釘で板に打ち付け、箱に入れ、川に流そうとするのだが…」

・「竹青」(「まんがグリム童話」2013年7月号)
「姉のもとに、西本カンナの母親が相談に来る。
 彼女はまず、娘のカンナが見た夢について話すが、それは、父親がカンナの寝顔を覗き込んでいると、それは父親ではなくカラスだったという夢であった。
 また、カンナの母親も夫がカラスに見えることがあり、どうやらカラスと父親が入れ替わったらしい。
 辻成は姉の手伝いをさせられ、お寺の境内に集まるカラスにカンナの父親がいないか呼びかけていると…」

・「蜘蛛」(「まんがグリム童話」2013年9月号)
「下校途中、辻成は川向こうの空家の窓に一人の少女を目にする。
 彼は彼女と同じ動作をして、無意識のうちに川に入ろうとするところをカンナに止められる。
 その後、川を渡って、空家を調べるが、少女の姿はなかった。
 彼は少女に懐かしさを感じ、見覚えがあるように思えて仕方ない。
 その夜、就寝中の彼の身体は何者かに操られるように動き、あの川岸へと向かうのだが…」

・「夢十夜」(「まんがグリム童話」2013年10月号)
「辻成はこんな夢を見た。
 夜、山道を誰かを背負って歩いている。
 それは女の人で、彼女は彼に話しかけてくる。
 20年前のこんな夜、彼は彼女を殺して埋めたのであった。
 辻成は目覚めるが、その女性には見覚えがない。
 姉にその話をすると、彼女には心当たりがあった。
 昨日、大家が姉のところに来て、過去に殺した女房の霊が夢に現れて困ると相談したのだが…」

・「笛吹かば我ゆかん」(「まんがグリム童話」2013年11月号)
「辻成が学校に出かけようとすると、見知らぬ男性から姉へ渡すよう笛をことずかる。
 学校へ行く途中、西本カンナにせがまれ、笛を吹いてみると、実に良い音色。
 だが、音色に呼ばれ、笛の「使い魔」が現れる。
 姉はこの笛を「悪霊祓い」に使う予定だったのだが…」

・「妖女」(「まんがグリム童話」2013年12月号)
「辻成は学校帰り、古びた洋館があるのに気づく。
 上階の窓から老婆に呼び掛けられ、彼は屋敷に入る。
 老婆のいる部屋には、少女の人形が寝台に横たわっていた。
 老婆はこの人形を生きている娘と思い込んでおり、数年間、ずっと寝たきりだと言う。
 そして、辻成のような男の子にキスをされたら、きっと目を覚ますと、彼に懇願する。
 老婆の気が済むようにと、それから毎日、辻成は人形にキスをするのだが…」

・「刺青の男」(「まんがグリム童話」2014年1月号)
「辻成と影絵は銭湯に行く。
 そんなに遅い時間でもないのに、男湯も女湯も客は一人。
 湯船に浸かった二人が、身体を洗う先客の背中を見ると、男の先客の背中には女の生首が、女の先客の背中には男の生首の刺青が入れてあった。
 先客は自分の刺青について話し出すのだが…」

・「黒猫」(「まんがグリム童話」2014年2月号)
「辻成とカンナは下校途中、川に猫を詰めた袋が流されているのを目にする。
 辻成は竿で袋を引っ張り上げるが、袋の中から出てきたのは、人間女性の頭の黒猫であった。
 辻成が帰宅すると、その猫女が姉に相談に来ている。
 彼女の亭主はアル中で、ある日、彼は彼女を愛猫と共に殺し、証拠隠滅のために、家に火を付けたと話す。
 彼女は悔しくて成仏できず、復活したものの、身体は猫と合体し、それを見た亭主に袋詰めにされ川に流されたのであった。
 猫女は姉に亭主への復讐を依頼するのだが…」

・「幽霊屋敷」(「まんがグリム童話」2014年3月号)
「週末、辻成と姉は、あるお金持ちが最近手に入れた別荘にやって来る。
 彼らの仕事は、人を追い払おうとする人形の幽霊達を祓うこと。
 辻成は屋敷の中で姉とはぐれ、ある部屋にやって来る。
 そこには人形の主人である少女の霊がいた。
 辻成は少女と遊ぼうと言い、二人は仲良く遊ぶ。
 二人は成長し…」

・「変身」(「まんがグリム童話」2014年4月号)
「ある朝、目を醒ますと六道辻成は一匹の巨大な蟲に姿を変えていた。
 覚醒した彼は家を突き破って、ビルよりも高く巨大化する。
 彼の目の前に、同じ化物の姿をした母親が現われ、この世界を破壊し人間を支配しようと言うのだが…」

・「ハイ、オカアサマ」(「マンガ少年」1977年12月号)
「あるお邸の女主人の老婆は、亡き息子の嫁を忌み嫌っていた。
 彼女はことごとく彼女を無視して、遺産は全てペットの鸚鵡に譲ると遺言する。
 ある日、老婆は背後から刃物の刺され、殺される。
 警察は、夢を疑わず、物取りの仕業と判断する。
 ただ一つ、腑に落ちないのは、鸚鵡が殺されていることだが…」

 古今東西の有名な古典「怪談」からインスピレーションを受けて描かれたから「怪談少年」なのでしょうか?
 と言いましても、二番煎じではなく、高橋葉介先生お得意の巧みなショートショートを堪能することができます。
 この作品の最大の魅力はキャラ立ちが抜群なこと。
 気弱ないじめられキャラの六道辻成、謎めいたクール・ビューティな姉、辻成に淡い恋心を寄せる西本カンナの三角関係(?)により、ミステリアスなストーリーにユーモアと躍動感を与えることに成功しているように思います。
 ちなみに、個人的に一番好きなのは「黒猫」。何回読んでも、笑ってしまいます。
 あと、ラストは好みが分かれるかもしれませんが、まあ、いいんじゃないでしょうか。

・備考
 サイン本。

2023年2月3・4日/2024年3月20日 ページ作成・執筆

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