かずはしとも「ラブコールは闇に消える」(1996年11月1日初版第1刷発行)

 収録作品

・「ラブコールは闇に消える」(「月刊ホラーM」1996年2月号)
「由麻は電話魔の少女。
 家では父親がうるさく、夜、近所の電話ボックスで話の続きをしようとするが、先客がおり、彼女は少し離れた、人気のない公園に向かう。
 そこの公衆電話の前で彼女は携帯電話を拾う。
 汚れていたが、使用可能で、彼女は家に持ち帰り、友人とその携帯電話で話す。
 その夜、携帯電話に着信がある。
 親に聞こえてはまずいので、出ると、「ホシノ」という男性から杏子という女性への愛の電話であった。
 由麻は杏子のふりをして話を合わせ、日曜日の三時、携帯電話を拾った公園で彼と会う約束をするのだが…」

・「インタビュー」(1995年「月刊少女フレンド6月号増刊 サスペンス&ホラー」)
「筒井は「月刊BOOKS」の女性記者。
 彼女は人気怪奇小説家の黒川玲衣の大ファンで、インタビューのために、黒川玲衣の家を訪れる。
 それは山奥の一軒家で、黒川玲衣は家政婦と二人きりで住んでいた。
 また、黒川玲衣は非常に美しい女性であったが、マスコミの前には決して姿を現さない。
 雑誌の特集は「わたしのとっておきの怖い話」で、黒川玲衣は筒井に「友人の話」をする。
 友人の圭子には幼い頃、理沙という親友がいた。
 二人は、どちらかが先に死んだなら、幽霊になって知らせに来るという約束をする。
 そして、その時は死んだ方が生きている方の足をくすぐると決める。
 十年後、圭子は美しく成長して、冴えない理沙を蔑むようになっていた。
 圭子に彼氏を取られた理沙はマンションから飛び降り自殺をするが…」

・「あなたのおもかげ」(「月刊ホラーM」1995年7月号)
「智生はカメラの大好きな青年。
 彼の憧れは商業デザイン科の沢田絵里であったが、奥手のため、遠くからファインダーで覗くだけであった。
 ある日、勢いで交際を申し込むと、あっさりとOKされる。
 二人の仲は彼女のヌードを写真に撮るまでになるが、彼は彼女の視線が彼に向けられていない気がして仕方がない。
 ある日、彼は絵里に写真の現像の仕方について聞かれ、詳しく教える。
 だが、程なくして、彼女から理由もなく、一方的に別れを告げられる。
 納得いかない彼が彼女の後をつけると、彼女は写真の貸暗室・スタジオに入って行った。
 沢田絵里の目的とは…?」

・「黒真珠の海」(1994年「月刊少女フレンド8月号増刊 サスペンス&ホラー」)
「久和島梢(くわしま・こずえ)は黒真珠のネックレスをアンティック・ショップで買った時から、奇妙な夢を見るようになる。
 彼女は澄んだ海の中におり、見上げると、海上に灯台と白い建物が見えるが、ふと自分の手を見ると、白骨化していくというものであった。
 旅行会社のパンフレットで白い建物の写真を見て、彼女は南方の宮良島を訪れる。
 白い建物は宮良島黒真珠センターで社長の玉城と話をするが、彼は彼女の話をまともに取り合ってはくれない。
 とりあえず、彼女は夢でいる場所の見当をつけて、崖から海に降りようとしたところで、津山要(つやま・かなめ)という青年に声をかけられる。
 彼は地元の人ではなく、去年、この島に来た時にここが気に入って、いついたのであった。
 崖の所で彼女は財布を見つけ、中を見ると、女性の運転免許証が入っていた。
 運転免許証によると、財布の持ち主は田嶋メグミという東京出身の娘で、五年前に捜索願が出されていた。
 しかも、運転免許証に付いていた汚れは彼女の血液型と同じA型血液であった。
 梢は本土に戻り、黒真珠を調べてもらおうとするが、最終便の船を逃してしまう。
 その夜、民宿に泊まった梢はまたあの夢を見るのだが…。
 黒真珠のネックレスの秘密とは…?」

・「身代わりはあなた」(「月刊ホラーM」1996年3月号)
「萌は交通事故に死ぬ。
 生死の境目で、彼女は死神に会い、24時間以内に「身代わり」を見つければ、彼女は助かると告げられる。
 方法は簡単で、「身代わり」の耳の後ろにウロコを貼り付けるだけでよく、後のことは死神が引き受けてくれるのであった。
 生き返った萌は「身代わり」を探して、町を彷徨う。
 だが、どんな人にも「家族」や「大切な人」がいて、とても「身代わり」になんてできない。
 タイム・リミットが迫る中、彼女は妹の美玖のことを考え始める。
 美玖は生まれつきの病気で、学校にも行けず、ずっと家にこもりっぱなしであった。
 そして、共働きで忙しい両親に代わり、萌はずっと彼女の面倒をみてきていた。
 萌の決断は…?」

・「電脳逢瀬」(1995年「きみとぼく12月号増刊 ミステリー&サスペンスSpecial」)
「アユミは面食いな娘。
 彼女は、理想の男性を見つけるため、パソコン通信のチャットに励む。
 実際、頭が良く、財力のある男が多いが、こと容貌に関しては、彼女のお眼鏡に叶う男性はまだ現れない。
 だが、「雅也」というハンドルネームの男性が彼女は気になっていた。
 彼はK大学の工学部で、チャット上ではかなりの紳士であった。
 オフ会で彼に会えなかったものの、その後、彼女に彼からメールが来る。
 彼とやり取りするうちに、彼に対する憧れが膨らむが、彼は理由を付けて、彼女とは会おうとしない。
 ある日、彼からのメールが途絶え、チャットにも参加しなくなる。
 連絡の取れないまま、時間が流れるが、ある日、彼から手紙が届くのだが…」

・「人魚の骸」(「月刊ホラーM」1996年9月号)
「短大生の鈴木みちるは恋人よりも、写真の道を選ぶ。
 彼女は失恋の傷心を癒すため、南の小さな島を訪れる。
 一軒しかない民宿はユタとリュウの姉弟が経営しており、ユタは美しい女性であったが、足が悪かった。
 みちるがこの島に来た目的は、ジュゴンの撮影。
 最近は海が汚れたこととダイバー客が増えたせいで、その噂も聞かないが、リュウが彼女を穴場に連れて行く。
 そこで念願のジュゴンを目にするが、一匹のジュゴンに銛でつけた傷があった。
 誰かがジュゴンを密漁しているようなのだが、その目的とは…?
 そして、奇怪な愛情のかたちが明らかとなる…」

 意外なオチの「インタビュー」、凝った内容の「黒真珠の海」が個人的には面白く思いました。
 「電脳逢瀬」は時代を感じます…。(オタク達の姿にいろいろとフラッシュバックするものがありました。)

2023年7月21日 ページ作成・執筆

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