合田蛍冬・漫画/関よしみ・原作
「マッドサマースクール@」(2018年8月10日初版第一刷発行)
「マッドサマースクールA」(2018年8月10日初版第一刷発行)
「マッドサマースクールB」(2019年9月10日初版第一刷発行)
「マッドサマースクールC」(2019年12月10日初版第一刷発行)



単行本@(電子書籍配信サイト「Renta!」2017年8月24日配信〜12月14日配信分)
・「第1話 実験棟」
 段上祥美(だんじょう・ひろみ/17歳)は高校三年生。
 研究者だった彼女の父親は十年前に失踪し、父親の妹に育てられてきた。
 彼女は母親に楽してもらうため、国立大学を目指し、猛勉強に励む。
 しかし、この夏は連日猛暑日で、しかも、家のクーラーが壊れてしまい、勉強に手がつかない。
 ある日、彼女が駅に行くと、停電で電車が来ない。
 暑さにキレたサラリーマンが刃物を持って暴れ、彼女はそれに巻き込まれてしまい…。
・「第2話 選ばれし者」
 目覚めると、そこは病院だった。
 彼女は十日もの間、入院していたが、彼女の身体の刺傷はほとんど治っていた。
 医者からは、刺されたショックで受けた傷をひどいものを感じたのだろうと言われ、彼女は自分の思い違いと受け取る。
 退院後、彼女は一学期の終業式に出席する。
 そこで祥美にはショックな出来事が待ち受けていた。
 学術研究都市特別奨学生制度「未来人エクスペリメント」に小川綾乃が選ばれたのである。
 「未来人エクスペリメント」は全国から優秀な学生を集めて、将来有望な研究者を育成するプロジェクトであった。
 小川綾乃は祥美よりも成績は下位なのに、代議士の娘という立場を利用し、祥美のチャンスを奪い取る。
 失意の祥美が帰宅すると、彼女に書留郵便が届く。
 その中身は「未来人エクスペリメント」の受講資格通知書で、彼女は「特別推薦枠」であった…。
・「第3話 立入禁止」
 書類によると、まず初日に学力診断テストがあり、選抜メンバーに選ばれた者のみが二十日間の強化合宿(8月10日〜30日)に参加できる。
 場所は郊外のかなり山奥にあるキトラス学術研究ビルで、久保グループの会長である久保修太郎により建てられたハイテク・ビルであった。
 久保の挨拶の後、学力診断テストが行われる。
 強化合宿に参加できるのは二十人のみ。
 祥美は18位で合格し、因縁の小川綾乃はギリギリの20位で滑り込む。
 合格者は一人一部屋を割り当てられ、その他にも様々な施設が充実していた。(17・18階が夏期講習会場/19・20階が受講者宿泊施設。)
 ただ一つ、21階以上は工事中のため、立ち入らないよう、コンシェルジュの篠原有里子から注意を受ける。
 しかし、高橋智湖(学力試験で三位)は祥美を連れて、最上階に行こうとして…。
・「第4話 寺田博士の実験体」
 祥美は智湖と共に42階に行ったはずだが、気が付くと、ラウンジで居眠りをしていた。
 智湖はその日以来、姿を消すも、翌日から怒涛の合宿が始まり、目の前の勉強に追われ、それどころでない。
 一方、ビルの責任者である桜井悠司は寺田明夫に呼び出される。
 寺田明夫は42階の研究棟で、新薬「D」の研究に従事していた。
 彼は桜井に全身大やけどの患者を見せるのだが…。
・「第5話 停電」
 ビルが停電になり、皆は大騒ぎ。
 いつまで経っても復旧せず、祥美は下の階の方が涼しいのでは?と考え、階段で一階に降りる。
 そこでは桜井が携帯電話でヒステリックに怒鳴り散らしていた。
 それもそのはずで、停電のため、正面玄関が開かないのであった。
 桜井に命令され、祥美は17階に戻るが、そこでは暑さで皆がパニックを起こしていた。
 講師たちや生徒達は工事用のエレベーターで下に降りようとするのだが…。
・「第6話 閉ざされたビル」
 正面玄関は開かず、非常口につながる通路もシャッターで塞がれていた。
 更に、火災が発生し、彼らは結局、17階に戻ることになる。
 外部との連絡は取れず、予備の非常電源も落雷で壊れ、しかも、今はお盆の真っ最中。
 当分の間、救助は来そうにない。
 そんな中、藤原広和(学力テストで二位)だけが楽しそうであった。
 スマホを返してもらった彼が祥美に見せた写真とは…?

単行本A(電子書籍配信サイト「Renta!」2018年3月配信〜7月配信分)
・「第7話 暗躍」
 今、現在、ビルに取り残されている生徒達は以下の通り。
 段上祥美(17歳)〜ヒロイン。
 梅本将吾〜高校三年。学力テストで一位の秀才。がり勉で、皆とは距離を置く。
 藤原広和〜高校二年。学力テストで二位。振舞いは軽いが、何かを知っている様子。
 日熊資泰〜浪人生。学力テストで五位。明るく、皆を励ます、頼りがいのある兄貴分という感じ。
 谷瀬優〜高校三年生。ヤンキーの入った粗暴かつ自己中な青年。
 成田陸〜高校三年生。ちょっぴりキレやすいメガネくん。高瀬優とつるむこと多し。
 沢田桜〜高校三年生。勝気で活発な娘。
 川村利之〜高校三年生。恋人を亡くし、自失状態。
 原田萌〜高校三年生。病気で一年間休学。おチビでぽっちゃり。
 長谷川優太〜高校三年生。おチビでぽっちゃりなメガネくん。
 小川綾乃〜祥美と同じ学校の高校三年生。代議士の娘を振りかざすタカビ〜女。高田栄人とブラウンの付き人あり。
 そして、行方不明となった高橋智湖であるが、その彼女が突然、祥美の部屋を訪れる。
 彼女は全身にひどい傷を負い、怯えていた。
 彼女は42階で寺田という男に拘束され、停電の際に隙を見て逃げてきたと話す。
 一方、桜井は30階の配電室で爆発に巻き込まれ、気絶していた。
 トランシーバーの着信音で目覚めた彼は様々な事故に見舞われているのを知る。
 しかも、寺田とは連絡が取れず、上層の研究棟のフロアはロックがかかり、下からは入れなくなっていた。
 その時、桜井は何者かに背後から襲われる…。
・「第8話 モルモット」
 電気が通じず、日中なサウナ状態のビル。
 皆、それぞれを思いを抱え、救援を待ち続ける。
 そして、迎える二十日。
 工事業者がお盆休みを終えて、戻ってくるはずだが、そんな気配は全くない。
 しかも、飲食物はあとわずか。
 この状況を見て、梅本将吾は「何者かの明確な意図があって」このビルに自分達を閉じ込めているのではないかと話す。
 その言葉を藤原広和が受け継ぎ、ここは「寺田博士の巨大な実験場」だと付け加える。
 「D−計画」とは…?
・「第9話 寄生虫」
 詳しい話を聞くため、祥美は藤原広和の部屋を訪れる。
 彼の口から語られる「D−計画」は想像を絶したものであった。
 更に、この計画の責任者である寺田博士の写真を見せられた時、祥美の頭の中で全ての事実がつながる。
 智湖や藤原広和だけでなく、祥美もまた…。
・「第10話 地下に潜むもの」
 救援が来ない中、ある者はエゴをむき出しにし、ある者は理性を失う。
 それでも、警備員や数学講師、一部の生徒達(谷瀬優、成田陸、沢田桜、小川綾乃、ブラウン)は脱出の方法を探り、防火扉を開け、一階に降りる。
 正面玄関はやはり開かないが、通路の奥にドアが開いているのを発見。
 このドアは研究者にしか開けられないはずで、地下に階段が続いていた。
 地下にはただっ広い部屋が広がり、細長いケーズが幾つも設置されている。
 中から助けを求める声が聞こえ、そのケースを開けると、その中にいる娘の身体は異様に変形していた。
 彼女は「D−計画」について話し、温度を下げるよう求める。
 温度がある限度を超えると…。

単行本B(電子配信 2018年11月配信〜2019年1月、3月配信分)
・「第11話 それぞれの思い」
 地下から現れた怪物が17階にも迫る。
 生き残った生徒達とコンシェルジェの篠原は上階を目指すことになり、準備に大わらわ。
 そんな中、日熊資泰の姿がない。
 彼は手錠で拘束された桜井の前にいた。
 日熊の正体とは…?
 また、彼に想いを寄せる小川綾乃は彼の部屋で意外なものを発見する…。
・「第12話 みんなで上へ」
 生徒達は一旦、ラウンジに集合する。
 祥美は藤原広和を迎えに彼の部屋に向かう。
 だが、そこには彼の姿はなく、血に染まったバスタブがあった。
 戸惑う祥美の耳に藤原の助けを呼ぶ声が聞こえ、血まみれの彼の幻を視る。
 彼が伝えようとしたこととは…?
・「第13話 トモコ襲来」
 階段を登り、一行はどうにか32階に到達。
 暑さは刻々と増し、しかも、別ルートで避難していた生存者たちと連絡が取れなくなる。
 とりあえず、上を目指そうとすると、祥美の前に高橋智湖が姿を現わす。
 智湖は祥美を迎えに来たと話し、いきなりキスをする。
 緊急事態に何をしているのかと小川綾乃が間に入ると、それが智湖の怒りに火をつける。
 智湖は普通の身体ではなかった。
 祥美は智湖を止められるのだろうか…?
 一方、谷瀬優と成田陸はその場から逃げ出すも、上階からも化物が来ることに気付き…。
・「第14話 生存への共闘」
 智湖は祥美との「融合」そして、「進化」を目論む。
 だが、祥美に拒絶され、智湖は祥美を自分に取り入れ、支配しようとする。
 その窮地を救ったのが日熊であった。
 更に、その場に桜井も登場。
 日熊はショック状態の祥美を実験棟に連れて行き、残りの生徒達は桜井の指示の下、屋上を目指す…。

単行本C(電子配信 2019年9月〜12月配信分)
・「第15話 私のお父さん」
 父親に会うため、祥美は実験棟の42階に向かう。
 怒りによる急激な覚醒のため、彼女の身体は奇妙に変化していた。
 実験棟で彼女は寺田明夫に会い、本当の父親を知る。
 そして、自分の出生の秘密も…。
・「第16話 10年前の真実」
 桜井と生徒達は40階まで到達。
 屋上まであと10階なのに、階段が故意に破壊されていた。
 しかも、階上からは化け物が現れる。
 彼らは生き延びるため、戦い、知恵を絞る。
 一方、祥美は、父親を救うため、寺田の実験体になろうとしていた。
 彼女は寺田から十年前の事故について聞く。
 それは先日の彼女の通り魔事件とも関係があった…。
・「第17話 実験の果てに」
 桜井と生徒達はどうにか次の階への登り棒を組み立てる。
 だが、その頃には暑さと疲れでへろへろ。
 休憩の間、彼らは何故、この夏期講習に参加したのか話していく。
 その頃、実験棟の42階では、寺田明夫の実験が成功していた。
 だが、それは彼の思ったような成功でなく、彼は結局、大切な人を失うこととなる。
 それにもかかわらず、彼は自分の過ちを認めない。
 そこに高橋智湖が現れ…。
・「第18話 未来を生きる者」
 桜井と生徒達は屋上に到着。
 屋上にはヘリポートとヘリコプターがあるが、段上祥美と日熊資泰がまだ来ていない。
 彼らは無事、脱出できるのであろうか…?
 そして、七年後…。

 関よしみ先生の名作「マッドサマースクール」(「マッドパパ」収録)を原案としておりますが、それっぽいのは単行本@のみで、後は合田蛍冬先生のオリジナルです。
 一応、「閉鎖されたビルでの焦熱地獄」の要素はあるものの、メインは「寄生虫によりモンスター化した人間に襲われる」というモンスター・パニックもの、かつ、「閉鎖されたビルからの脱出」というサバイバル・ホラーでもあります。
 そう聞くと、さほど新味のない内容に思われるかもしれませんが、ストーリーの要要に見せ場をきっちり用意しており、個人的にはかなり面白かったです。
 ラスト付近、わがままばっかりの生徒達が打ち解けていくあたりはちょっぴり感動しました。
 と、まあ、良作だと思いますので、読む価値はあります。
 ちなみに、その後、合田蛍冬先生はいろいろなトラブルに見舞われてますが、それを乗り越え、元気に復活されるよう心から祈っております。

2023年9月20〜22・27日 ページ作成・執筆

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