愛田真夕美「魔少女」(1998年1月1日初版第1刷発行)

 収録作品

・「モモとアオ」(1995年「月刊ホラーM」9月号初出)
「都内の私立中学校に通う小林アオ。
 父親が単身赴任中で月に一度しか帰宅しないため、実質的に、母親と妹のモモ(5歳)と三人暮らし。
 母親は、夫とうまくいかず、ノイローゼ気味で、数年前から、アオに憎悪を向けていた。
 アオは、母親のためを思い、ずっと我慢していたが、遂に父親がその事実を知る時が来る。
 両親や兄が苦しむ姿を目にしたモモが、皆が幸せになるように取った行動とは…?」

・「紫(ゆかり)」(1996年「月刊ホラーM」7月号初出)
「萌子の親友の紫は、もの静かで、儚げで、心優しい少女。
 ある日、突然、紫は心臓発作で亡くなる。
 だが、葬式の夜、萌子は、紫が、柩の中でなく、「ここにいる」と告げる夢を見る。
 以来、萌子は、紫の亡霊を幾度となく目にするようになる。
 萌子が紫に、現れる理由を尋ねても、彼女は、何も答えず、悲しそうな顔をして消えるだけ。
 思いあまった萌子は、唯一の肉親だった、彼女の兄を訪ねる。
 萌子が、紫はまだ生きているような気がすると話すと、彼は彼女を自分のアトリエに連れて行く。
 そこは、彼が、紫が幼い頃からずっと描き続けてきた、彼女の肖像画だらけであった。
 しかし、彼女は、その肖像画に対して、違和感が拭えない。
 その夜、萌子は、紫の夢を見る。
 夢の中で、紫は、兄にここを動かないよう言われていると話すと、血まみれになるのであった。
 萌子は、紫は館のどこかにいると思い、もう一度、紫の兄に会いに行くのだが…」

・「ミドリ」(1997年「月刊ホラーM」1月号初出)
「倉石真樹が想いを寄せる尾本先輩には、付き合う女性が不幸になると言われていた。
 それは単なる噂でなく、実際に、付き合った女生徒は交通事故にあったり、嫌がらせでノイローゼ寸前まで追い詰められたりしていた。
 そして、今度、付き合っていた美術部部長の由美は突然の自殺を遂げる。
 そうと知りつつも、真樹は、気落ちしている尾本先輩の姿を見るのに忍びず、遂に告白する。
 こうして彼との距離は徐々に近づいていくが、真樹に無言電話や嫌がらせが始まる。
 尾本先輩にはミドリという妹がいるようなのだが…」

・「青子 黄子」(1997年「月刊ホラーM」8月号初出)
「松本青子・黄子は一卵性双生児。
 同じ服に同じ髪型、同じ好み、二人は全てが一緒。
 そして、「対」にならないものは不自然だと、徹底的に排除する。
 母親は、二人を全く平等に扱わないといけないという強迫観念から、精神に失調を来たしていく。
 父親は、母親のために別居し、双子をそれぞれ引き取ろうと考えるのだが…」

・「彩」(1997年「月刊ホラーM」10月号初出)
「女性の相次ぐ失踪。
 事件性はなく、まるで神隠しにあったように皆、消えていた。
 村瀬タカオの彼女、西田麻美子も行方不明となり、消息は掴めないまま。
 祖母が言うには、霧が女性達をさらっているのだと言う。
 ある夜、タカオの妹は何かに呼ばれるように外に出ていく。
 タカオは彼女を追うが、いつの間にか二人は霧に包まれていた。
 どのぐらいの時が経ったのか、気が付くと、そこは見知らぬ洋館であった。
 洋館には、主人である、幼い少女、彩、執事の老人、そして、行方不明となった麻美子。
 麻美子は帰る気は全くなく、また、外部に連絡する手段もない。  彩に頼まれ、タカオは館に滞在することになる。
 執事の老人によれば、この屋敷を訪れた者は「至上の幸福」を手に入れることができるらしいのだが…」

2021年2月20・21日 ページ作成・執筆

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