曽祢まさこ「新・呪いの招待状B 黒い翼の天使達」(2009年5月1日初版第一刷発行)
カイは呪殺専門の呪術師。
彼は依頼者の寿命十年と引き換えに、憎い相手を呪殺してくれる。
さて、今回の依頼は…?
・「花夢 ―殺意の花束―」(2008年「月間ホラーM」6月号)
「牧村さくらは下町の商店街にある花屋の娘。
彼女は花が大好きで、店の手伝いを通じて、花の世話や仕事を覚え、高校卒業後はフラワースクールにも通っていた。
ある日、古くからのお得意である喫茶店で、マスターから藤崎柾という青年を紹介される。
彼は、このあたりの大地主である藤崎家の三男で、27歳、独身、そして、イケメン。
しかも、彼はさくらに、母親の誕生日に送る花を選ぶという大口の依頼をする。
彼と花のアレンジについて相談するうちに、二人の仲は急接近。
更に、誕生日の花は成功し、彼女のもとに仕事が殺到する。
彼から資金援助を受け、さくらは「マキムラ・華乃」の名で店を開き、とんとん拍子に成功する。
だが、柾の婚約者である葵がイタリアから帰国したあたりから、前途に暗雲が立ち込め始める。
柾は実家に相談に帰り、さくらは彼と結婚を望んでいたわけではないが、すっきりしない。
ある夜、彼女は夢を見るが…」
・「黒い翼の天使達」(2008年「月間ホラーM」8月号)
「カラスのカンナがマリーにビーズの指輪を持ってくる。
カンナによると、西の方にある女学校で夕方、屋上から捨てられたと話す。
マリーが自室で指輪を観賞していると、「指輪の記憶」が視える。
この指輪は、ある少女が彼氏から買ってもらい、小さな袋に入れて、幸運のお守りにしていた。
そんな大切なものが無造作に捨てられたことに疑問を抱き、マリーは、彼氏と喧嘩をして衝動的に捨てたのでは…と考える。
マリーはカンナを呼び出し、事情を説明。
カンナが様子を見に行くと、陽奈子という少女が落ち込んでおり、友人のユリカが彼女を慰めているという。
そして、ハルという男子生徒と会うと、二人とも元気になっていた。
マリーは陽奈子に指輪を返そうと考え、カンナと共にその女学校へ飛ぶ。
だが、マリーは指輪を捨てたのが、陽奈子でなく、ユリカであることに違和感を覚える。
その後、指輪は陽奈子のもとに戻るのだが、事態は意外な方向に…」
・「嘆きのオフェーリア」(2008年「ホラーM」10月号)
「渡部理沙子(19歳)はS大経済学部の娘さん。
彼女の家は代々資産家であったが、彼女が幼い頃、母親と死に別れ、仕事人間の父親は異国で交通事故死する。
後継ぎとなった彼女には多くの縁談が持ち込まれるが、本人は結婚なんて考えていなかった。
ある日、彼女が公園を歩いていると、嶋村慎二という画家志望の男性(30歳)とぶつかる。
彼はスケッチブックを落とすが、彼の描いた絵は、理沙子の家にある「オフェーリア」の絵とそっくりであった。
この「オフェーリア」は、彼女の祖父(五歳の時、死亡)が大切にしていた絵で、彼女が小さい頃、祖父の横に絵の女性の姿を何度も見たことがあった。
彼の描いた絵について聞くと、彼は「夢を見て描いた」と話す。
理沙子はオフェーリアが彼と引き合わせてくれたと信じ、彼への援助を申し出て、親戚達をだまらせるために、籍を入れようとする。
だが、嶋村慎二にはある目的があった…。
一方、カイのもとに依頼主が現れるが、その依頼主とは…?」
・「ホームタウンの奸計」(2009年「ホラーM」2月号)
「あずみ(13歳/中学一年生)の両親は念願の一戸建てを購入。
あずみもようやくペットを飼うことを許され、犬をもらってきて、チャタと名付ける。
また、隣家の学はS大付属中学の二年生で、ちょっぴり想いを寄せる。
ある時、ペットのチャタときっかけに、彼と接点ができる。
彼はペットが飼いたかったものの、汚いという理由で、両親に許してもらえなかった。
話を聞くと、彼の両親は恐ろしく潔癖で教育熱心、そして、鼻持ちならない程、高慢ちきであった。
あずみと学が恋に落ちていく一方で、両家の確執が深まっていく。
学の両親に嫌味を言われ、あずみの両親も「売り言葉に買い言葉」、そして、お互いに嫌がらせをヒート・アップさせていく。
あずみと学の仲は裂かれそうになるのだが…」
「呪いのオフェーリア」は「絵画怪談」の一種で、なかなか凝った展開を見せます。
ただ、個人的に、他の三作は結末がどうもすっきりしません…。
2022年5月3・5日 ページ作成・執筆