藤田素子「お江戸残酷物語」(1996年10月1日初版第1刷発行)
収録作品
・「針地獄」(1994年「月刊ホラーM」11月号)
「お糸は、着物屋の針子。
彼女は吉見屋の番頭、喜三郎と恋仲であった。
だが、彼が着物を受け取りに来た時、着物に針が刺さったままであった。
女主人は、着物を出したお志摩を、その場で尻叩きにする。
その針はお糸のものであったが、喜三郎の手前、言い出すことができない。
その日、お糸が帰宅すると、身体中から針が突き出てくる。
そして、お糸の前に、びしょ濡れのお志摩が現れ、お糸を睨み、「くやしい」と一言呟き、消える。
その後、お志摩の水死体が上がり、お糸は自分のせいでお志摩が自殺したと罪悪感に苛まされる。
更に、お志摩の幽霊は、お糸の太股に「殺された」という文字を縫い込む。
お糸は、着物屋の女主人に真実を明かすのだが…」
・「死にかんざし」(1995年「月刊ホラーM」3月号)
「絵皿教室に通う、お美乃は、大黒屋の一人息子、悦二郎に見初められる。
だが、彼女は玉の輿に乗るために、借金をしてまで、お嬢様のように振る舞っていたのであった。
彼女の願いはただ一つ、心臓の悪い姉を、長崎の医者に見せること。
けれでも、姉はお美乃が働きもせず、遊びほうけていると怒り、自分のかんざしをあげると見せかけて、お美乃の頭に突き刺す。
ある日、金に困ったお美乃は、長屋のこやし(うんこ)代を横領する。
それを知った大家は、姉にその分のうんこを出せと強要したところ、便所の床が抜け、姉は肥樽の底で首の骨を折って死亡。
その時、お美乃は悦二郎と逢引中であったが、彼女の頭にかんざしが食い込んでいき、糞尿の臭いが漂う。
実は、かんざしには、姉の飲んでいた薬が付着しており、これは健常者には毒で、かんざしが刺さったところは爛れてしまう。
これは姉のお美乃への呪いなのであろうか…?」
・「復讐の爪」(1995年「月刊ホラーM」5月号)
「一文無しのお鈴は、空腹のあまり倒れたところを、大工の八吉に救われる。
彼は彼女に一目惚れし、そのまま、同棲することとなるが、実は、お鈴は、スリ集団の夜桜一家の一員であった。
また、彼女は、彼女と同期のお熊が、流された島から脱出しようとして、溺死したことを知る。
不器用なお鈴はスリの才能はなかったが、お熊には抜群の能力で頭角を現していた。
しかし、お熊や他の夜桜一家の連中は、八吉が作った泥棒よけの細工に引っかかり、捕まっていた。
お鈴は、お熊に祟られていると知るのだが…」
・「血の恋文(ファンレター)」(1995年「月刊ホラーM」9月号)
「売れないからくり芸者のお菊は遂に、劇場を首になる。
最後の舞台に立つ前、支配人に挨拶をしに行くと、天井から紅で書かれた手紙が落ちてくる。
手紙は「一ファンの紅」からで、彼女を苦しめるものは呪うとストーカーまがいの内容であった。
それでも、彼女にとっては初めてのファンレターで、それを懐に水芸をしていたところ、手紙の紅が水に混ざって、血のようになる。
この「血のからくり」が受けて、彼女は劇場の看板娘となる。
ある夜、彼女の家を、手紙の差出人である紅が訪ねて来るが…」
・「呪い版」(1995年「月刊ホラーM」11月号)
「白菊、お栄、久乃、お豊の四人は八丈島から逃亡する。
だが、お豊は直前に計画を知らされ、躊躇いがあったのか、舟から転落。
このままでは渦に巻き込まれてしまうため、三人はお豊を見捨てて、逃亡する。
脱出が成功すれば、おとがめは受けず、三人は新しい生活を始めるが、瓦版に、彼女達を題材にした物語が掲載される。
それは、偶然と考えるには、あまりにも似すぎていた。
白菊は、この作者である、なめくじ長屋の佐吉を訪ねるのだが…」
・「残酷絵巻!!美人女房」
「太平百物語」の一話の現代語訳に、絵をつけたものです。そのため、内容は割愛いたします。
なお、この話のもとになっているのは「唐宋伝奇集」収録の「画工」かもしれません。
「画工」は、本間祐・編「超短編アンソロジー」(ちくま文庫/2002年9月10日発行)に「絵師」のタイトルで収録されております。
前の袖の紹介文によると、「新感覚・ネオ・お江戸ホラー」とのことで、私にはよくわかりませんが、そういうことらしいです。
個人的には、「針地獄」と「呪い版」が、ストーリーを捻っていて、かつ、読後感もよく、面白いと感じました。
ただし、「死にかんざし」は何回読んでも、意味がよく掴めない作品でした。
にしても、「脱糞を強要された挙句、便所の床が抜けて、肥桶の底で首の骨を折って死亡」なんて、かなりイヤな死に方ではないでしょうか?
2021年2月27・28日 ページ作成・執筆