さいとう邦子「狼は忘れない」(1995年10月1日初版発行)

 収録作品

・「狼は忘れない」(1994年「ホラーM」Vol.4 掲載)
「脳血栓のために陸上競技をあきらめざるを得なかった星野すばる。
 彼女の前に、大神四朗という青年が現れ、彼女のボディガードになると宣言。
 彼が言うには、彼の前世は狼で、前世の彼女に助けられるが、その際、彼女は射殺されたとのこと。
 その証拠に、右胸のあたりに三つのアザがあると主張する。
 四朗は彼女にまつわりつき、すっかり彼女の犬扱い(注1)。
 だが、人の期待を裏切ることを厭う彼女は右胸にアザはないことを彼に見せる。
 そして、自分に二度と近づかないよう「命令」するのだが…」

・「金髪の狼」(1994年「ホラーM」7月号掲載)
「田舎の高校に転校してきた、乾さおり。
 彼女には、前世において「山吹」という名の金色の狼だった記憶があった。
 更に、転校して初めて仲良くなった、みおの彼氏が、前世で一緒に暮らしていた才蔵の生まれ変わりだと直感する。
 みおの彼氏の名は中村才蔵で、バンドに夢中の単細胞野郎。
 さおりはドラムの経験があったことから、彼のバンドに入ることとなり、彼との仲は急接近。
 ある時、さおりは彼が前世のことを覚えていないかどうか気になり、探りを入れてみる。
 その場面を、みおに見られてしまい…」

・「砂の狼」(1994年「ホラーM」8月号掲載)
「昔の中央アジア。
 ノマド王国の若き王、ジャヤ・ハーンは、戦いで領地を拡大し、「血に飢えた狼」の異名を持っていた。
 彼は、前世において狼だった記憶を持ち、狼だった彼を救ってくれた女性を捜し求める。
 占い師によると、その女性の生まれ変わりには右胸にアザがあるという。
 ようやく見つけ出した女性は、ファティマという自由奔放な踊り子。
 ジャヤ・ハーンは彼女を喜ばそうとするが、戦のことしか知らず、戸惑うばかり。
 そんな時、隣国の大軍がノマド王国を攻撃しようとしていると知らせが入る。
 ジャヤ・ハーンは先制攻撃を仕掛けることを決めるが、その前夜、彼の寝室をファティマが訪れる…」

・「ユメのおおかみ」(1994年「ホラーM」12月号掲載)
「水泳部の伊藤結女(ゆめ/一年生)は、ビート板を取りに、旧校舎の物置小屋に行った際、三年の大場一也と鉢合わせる。
 彼は不良で知られていたが、何故か、結女の右胸のアザを見て、顔色を変える。
 しかも、棚から落ちた荷物から、身を挺して、結女をかばう。
 一也が言うことには、彼は前世、狼で、彼女は狼だった彼を落とし穴から救ってくれたらしい。
 そして、「狼の掟」では一度受けた恩は必ず返さなければならず、そのため、勝手に身体が動いてしまうのであった。
 その日の放課後、結女は、憧れの稲木に、一緒に帰ろうと誘われる。
 だが、彼には、物置小屋で壊した稲荷像の怨念が憑りついていた。
 一也は、稲木から結女を守ろうとするのだが…」

・「白銀の狼」(1995年「ホラーM」2月号掲載)
「革命の嵐の吹き荒れるロシア(っぽい国)。
 領主を暗殺したセリョージャは逃走中、吹雪に巻き込まれる。
 力尽きた彼は夢か幻か銀色の狼を目にするが、気が付くと、銀色の髪の娘の家にいた。
 娘の名はマリンカといい、頭が少し弱く、身よりもいない。
 彼女に匿われ、セリョージャは傷が癒えるまで滞在することとなる。
 だが、ある日、村人達が、帝国軍により大量虐殺される。
 セリョージャは、同志達と共に、司教の暗殺を試みるが…」

・「オオカミにおねがい」(1995年「ホラーM」5月号掲載)
「江西まいこにしか視えない、狼の幻。
 狼は、前世で彼女に助けられたお返しに、一つだけ願いを叶えようと話す。
 進学問題、憧れの香川君、バスケ部でメンバーを外されたこと等、まいこにはトラブルがたくさんあるものの、決して狼の力を借りようとはしない。
 途方に暮れた狼は、満月の夜、彼女の願いを全て叶えるため、ある手段に打って出るのだが…」

 「狼の恩返し」をテーマにした「ロマンチック・オカルト・ミステリー」(カバー裏の紹介文より)です。
 個人的には、ギャグ・タッチが快調な「ユメのおおかみ」がいい塩梅にはっちゃけていて、好きです。

・注1
 ザ・ストゥージーズの1stアルバム収録の「I wanna be your dog」は名曲です!!

2021年1月24日 ページ作成・執筆

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