曽祢まさこ「赤い闇の烙印」(1997年6月1日初版第1刷発行)

 収録作品

・「地獄沼」(「'95月刊ホラーM5月号」初出)
「ある町外れにある中学校の裏山にある沼。
 その沼は魔物が棲むと言われ、町の人達は滅多に近寄らなかった。
 学校での凄惨ないじめに耐えかね、自殺しようと一人の少女がその沼を訪れる。
 少女の目の前に、沼の主である魔物が現れるが…」

・「夢の果実」(「'95月刊ホラーM11月号」初出)
「現実に不平不満たっぷりの女子学生、美加子。
 彼女は、別世界の王女であることを夢想する。
 美加子の現実への不満が最高潮に達した時、鏡の中に、美加子が夢想した王女が現れる。
 王女は華やかだが制約だらけの生活に飽き飽きし、美加子と二年の期限付きで心を交換しないかと持ちかける…」

・「赤い闇の烙印」(「'96月刊ホラーM4月号」初出)
「みかえはわがままで甘えん坊の少女。
 彼女はある夜、何か得体の知れないものに襲われ、首を絞められる。
 みかえは悪霊の仕業と考え、親友の依子にそのことを相談すると、霊よりも生きている人間の方が強いと教えられる。
 次の夜、また霊らしきものが現れるが、みかえが消えるように強く言うと、それは消えてしまった。
 それ以来、何度もそれはみかえの前に現れるが、にらみつけると、消えていく。
 しかし…」

・「呪われた月曜日」(「'96月刊ホラーM6月号」初出)
「日曜日の夜は憂鬱…翌日にはイヤなイヤな月曜日…。
 学校ではいじめを受け、家庭では顧みられない少女、千里は、月曜日が来ないよう祈りながら、眠りにつく。
 彼女の祈りが通じたのか、目が覚めても、同じ日曜日が繰り返されていた。
 何度も同じ日曜日を過ごすうちに、千里は周囲への鬱憤を晴らそうと考える…」

・「恐怖の一夜」(「'96月刊ホラーM10月号」初出)
「不寛容な両親へのあてつけに家出した唯子。
 しかし、泊まる当てがなく、お化け屋敷と言われる廃屋に潜り込む。
 そこでは、過去に一家無理心中があり、以降、そこに住む幸せな家族は皆、不幸に見舞われるとの噂があった。
 噂など気にもかけず、唯子は泊まれる場所が確保できて、一安心。
 その夜、唯子が目覚めると、どこからか話し声が聞こえてくる…」

・「蒼の墓標」(「'97月刊ホラーM3月号」初出)
「子供の間の、他愛のない怪談話。
 あるモンスターが三本指の手で人間の首を絞めて殺した後、後頭部に穴を開け、中身を吸い出してから、その人物になり代わるという。
 それを見破るには、首についた三つのアザしかない。
 冗談とバカにしていた少年だが、彼の友人の首に、三つのアザを見つける。
 友人は「ちょっとぶつけた」と説明したものの…」

 現在も活躍中の大ベテランでありながら、少女マンガに興味がある人以外には、一般的に広く知られているとはちょっと言いがたい、曽祢まさこ先生。
 正直、もったいない話であります。
 全ての作品を読んだわけではないので、断言はできないのでありますが、非常に巧みなストーリーテラーだと思います。
 特に、短編は非常に完成度の高い作品がいくつもあります。
 この単行本には、「地獄沼」「夢の果実」「赤い闇の烙印」「蒼の墓標」といった捻りのきいた作品が収められておりまして、読み応えがあります。
 派手さやセクシーさに欠ける絵柄に食指が動かない人も多いでしょうが、機会があれば読んでみたら如何でしょうか?
 じっくりと細部まで味わえるマンガだと私は考えております。

平成27年6月17・18日 ページ作成・執筆

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