蕪木彩子「よみがえる少女」(1994年3月20日第1刷発行)

・「よみがえる少女」(1993年「月刊ホラーM」Vol.1)
「八千代は中学生で、父親は大学病院の外科医。
 彼女は島津という男子と仲良くなるが、彼に想いを寄せる松平美喜のグループに睨まれることとなる。
 夏休みを目前にしたある日、理科の実験の際に、美喜たちは八千代を脅そうとして、八千代は顔に硫酸を浴びてしまう。
 父親による治療を受けるものの、火傷は肉にまで達し、顔の右半分に爛れが残る。
 手の施しようがなかったが、ただ一つだけ方法があると父親は話す。
 八千代の特殊な体質とは…?」

・「バラバラ」(1993年「月刊ホラーM」Vol.2)
「中学生の公恵は母子家庭。
 最近になって、彼女は杉原タエ子の夢をよく見る。
 タエ子は小学校の頃、仲良しだった女の子で、公恵と同じく、両親が離婚して母子家庭であった。
 小学五年の時、彼女は隣町に引っ越し、文通も一年後には途絶え、公恵は彼女の事をほとんど忘れていた。
 ある夜、タエ子が窓の外に現れると、彼女の身体が腐り始めるという夢を見る。
 タエ子の身に何かが起こったのではないかと考え、公恵は隣町へ出かけ、彼女のアパートを訪ねる。
 部屋にはタエ子がいたが、一瞬、彼女の両手両足が切断されたように見える。
 そして、公恵が帰ろうとすると、タエ子の姿は消えていた。
 その夜も公恵はタエ子の夢を見るのだが…」

・「恐怖の和子さん」(1993年「月刊ホラーM」Vol.3)
「小学生の間で広まっている『恐怖の和子さん』の噂。
 四階の女子トイレの鏡に「和子さんは盗んでません」と四回唱えると、鏡の中に和子さんが現れるという。
 この和子さんは実在の人物で、数年前、第四小学校で、災害地への募金を集めることになった。
 和子さんはその募金係となるが、集めたお金がなくなり、彼女に疑いがかかる。
 ある日、彼女は女子トイレで問い詰められ、逃げようとしたところ、鏡に顔から突っ込んで亡くなったのであった。
 貴子と良枝はその話に興味を持ち、第四小学校のその女子トイレを訪れる。
 貴子はトイレの鏡に向かい、噂が本当がどうか確かめようとするのだが…」

・「ファミリー」(1992年「ホラーハウス」4月号)
「ある一家(両親・長男・長女・次女の五人)。
 潔癖症の母親が全てを取り仕切り、母親のお気に入りは要領のいい長女だけ。
 ずぼらな次女は早々とネグレクトされ、一流大学の試験を二度失敗した長男は見捨てられるのは時間の問題。
 そして、教師を勤める父親は家庭で居場所をなくし、新興宗教にハマっていた。
 この家族の真の姿とは…?」

・「肉の記憶」(1992年「ホラーハウス」6月号)
「美和の姉が、一人娘のユリを連れて、家に戻ってくる。
 彼女は高校の時から伸吾という男性と付き合っていて、結婚後も仲が良かったが、行方不明になったという。
 そのことを美和は訝りながらも、姉が持ってきた肉の料理はとてもおいしい。
 彼女は以前から頭痛に悩まされていたが、徐々に何かを思い出しそうになる。
 彼女が過去の「おぼろげな記憶」を突き止めた時…」

・「腐臭に誘われて」(1991年「ホラーハウス」10月号)
「中学二年の少年。
 彼は「腐臭フェチ」であった。
 また、三年生の麗子先輩に夢中で、彼女は秀才かつスポーツ万能、そして、深窓の令嬢といった趣の美人であった。
 彼女をストーキングするうちに、彼は彼女も彼と同じく「腐臭フェチ」であることを知る。
 彼女の汗を吸ったタオルに混じる腐臭の正体とは…?」

 表題作の「よみがえる少女」はオチが強烈なインパクトを誇る名作です。
 「ファミリー」は「暗夢」や「死臭の森」と並ぶ、ダウナーな社会派もので、読後のどんより感は他の追随を許しません!!
 「腐臭に誘われて」は「臭いフェチ」でも「腐臭フェチ」を扱っているため、変態度は高めで、人によってはスプラッター描写よりも苦手かもしれません。
 こう、つらつらと書いていて思うのは、やっぱり、蕪木彩子先生の作品ってしみじみといいです…。

2023年7月26日 ページ作成・執筆

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