山本まゆり「リセットシリーズE 覚めない夢」(2004年11月1日初版第1刷発行)

 あなたが人生を後悔した時に現れる堕天使アンリ。
 彼は「人生のセーブ係」で、人生を「リセット」できるチャンスを与えてくれる。
 あなたが選ぶのは「天使の道」?それとも、「悪魔の道」?

・「復讐のターゲット」(2003年「月刊ホラーM」7月号)
「美里と香菜はアース・クェイクというバンドのメンバー、吉岡圭吾の大ファンであった。
 だが、香菜はライブの前日、飛び降り自殺をする。
 香菜は妊娠していたことが恐らく、原因であったが、相手が誰だかわからない。
 美里は香菜の母親に会った後、香菜に貸していたゲームを返してもらう。
 家に戻り、香菜のデータでゲームを始めると、画面にアンリが現れる。
 美里は香菜が自殺をする前に戻り、香菜が自殺したビルへ向かう。
 ビルの屋上では、手すり越しに香菜と圭吾が対面していた。
 圭吾は二人で子供を育てようと言い、香菜が喜んで彼に近寄った時、彼は彼女を突き落とす。
 美里は圭吾が香菜を殺す一部始終を目撃しながらも、止めることができなかった。
 美里は圭吾を尾行し、彼のマンションを訪れる。
 彼は美里に、今日のことを忘れる代わりに彼と付き合うという契約を持ちかけるのだが…」

・「涙の選択」(2004年「月刊ホラーM」3月号)
「由良は24歳にしてバリバリのキャリア・ウーマン。
 彼女は結婚を考えないが、それは彼女が私生児だからであった。
 由良の母は、家庭持ちの愛人と付き合い、由良を妊娠。
 実家からは縁を切られ、以来、女手一つで由良を育ててきた。
 由良が会社で重要な仕事を任された矢先、母親の様子がおかしくなる。
 脳外科病院で調べたところ、かなり進行したアルツハイマー病であった。
 しかも、母親は由良に心配をかけたくなくて、初期の段階から隠していたらしく、今はまだら呆けの状態になっていた。
 介護について相談したところ、介護保険施設に入れるか、日中の間、ヘルパーに来てもらうか選択することとなる。
 施設に入れるのには躊躇いがあり、彼女は訪問介護を選ぶ。
 だが、これでは残業はろくろくできず、家では呆けた母親が起こすトラブルで心身ともに休まる暇がない。
 遂に限界に来て、母親を施設に入れようとしても、空きはすぐに埋まり、次は何年先になるかわからないとのこと。
 パソコンで施設を探そうとした時、画面にアンリが現れる。
 由良は、施設にするか、訪問介護にするかという選択をする時点に戻り、今度は介護保険施設を選ぶ。
 母親を施設に入れたことで、仕事は充実。
 しかし、彼女が面会に訪れると…」

・「覚めない夢」(2003年「月刊ホラーM」12月号)
「麻弥と江梨香は田舎の中学生。
 モデルに憧れる二人は日曜日に片道三時間かけて渋谷を訪れる。
 渋谷センター街で二人を分かれて、スカウトされるかどうか運試しをする。
 結果、麻弥はモデルクラブの名刺をもらい、江梨香はモデル雑誌のスタッフにスカウトされる。
 帰宅後、麻弥は両親に芸能界に入りたいと言うが、父親は怒って名刺を破り捨てる。
 一方の江梨香はモデル雑誌にレギュラーで載るようになり、麻弥の失望に追い打ちをかける。
 ある時、麻弥がゲームをしていると、アンリが現れる。
 彼女は、両親に芸能界入りの話をしている時に戻り、名刺を確保。
 翌日、家出して渋谷に行き、名刺の電話番号に電話する。
 彼女は事務所に連れていかれるが、覚醒剤入りのジュースを飲まされ、裸の写真を撮られた上、バージンも喪失。
 更に、覚醒剤漬けにされた彼女はクスリ欲しさにAVでも風俗でも何でもすることとなる。
 彼女がリセットしたいと痛烈に念じた時、アンリが再び現れる。
 彼女はもう一度やり直すことを望むが…」

・「ふたつの命」(2003年「月刊ホラーM」10月号)
「女子高生の少女(名前わからず)が川辺を歩いていると、捨て犬を入れた箱が流されてくる。
 仔犬を救ったのは、小学生の少年であった。
 彼は犬を飼いたいらしいが、団地住まいでは無理で、少女も賃貸マンションで同様。
 そこに見知らぬ青年が現れ、借家だけど一戸建てだからと犬を持って行く。
 翌日、彼女が川辺の道を通ると、昨日の犬の生首が落ちていた。
 どうやらこの近辺では動物の虐待が頻繁に起こっているらしい。
 あの男の仕業とわかってはいるが、証拠はなく、彼女は犬のお墓を作り、弔う。
 その夜、ゲームをしていると、アンリが現れる。
 彼女は、男が犬を引き取ろうとしている時点に戻り、今度は自分が仔犬を引き取る。
 どうにか里親を探し、これで一安心かと思いきや…」

 読み応えのある作品が多い単行本です。
 ベストは(多分)ドロドロな「覚めない夢」です…。
 いや、もう、これ、マジで精神的にキます。
 でも、歌舞伎町あたりではざらにある話なのかも…。(田舎者の私には想像もつきませんが)

2022年11月9日 ページ作成・執筆

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