山本まゆり「リセットシリーズF 罪と罰」(2005年10月1日初版第1刷発行)
あなたが人生を後悔した時に現れる堕天使アンリ。
彼は「人生のセーブ係」で、人生を「リセット」できるチャンスを与えてくれる。
あなたが選ぶのは「天使の道」?それとも、「悪魔の道」?
・「悲惨な結婚」(2004年「月刊ホラーM」6月号)
「恵美香は普通の主婦。子供はなし。
夫は温厚で生真面目な性格で、中小企業の経営者。
ある日、彼女は、高校の同級生の吉川小夜子がカリスマ主婦としてテレビで紹介されているのを観て、衝撃を受ける。
しかも、相手は、同級生で不良の葛西であった。
実は、葛西は資産家の一人息子で、両親が事故死した後、その遺産を元手に事業を起こし、大成功。
その頃、キャリアウーマンを目指していた小夜子は彼と偶然再会し、フィーリングが合って、結婚したのだと言う。
小夜子の姿を見て、江梨香が自分の幸せについて考えていた時、妊娠が判明する。
だが、同時に、夫の会社が倒産し、経済的な事情から江梨香は堕胎せざるをえなくなる。
夫婦で共に頑張ろうとするも、抜け殻のような夫に愛想を尽かし、江梨香は実家へ帰る。
実家でゲームを見つけ、プレイすると、アンリが現れる。
江梨香は高校時代に戻り、葛西に告白し、付き合うこととなるのだが…」
・「消したい過去」(2004年「月刊ホラーM」10月号)
「未央子は平凡なOL。
彼女は営業の浅見に憧れていたが、初対面が彼女のドジで、まともに顔を見ることもできない。
ある日の帰宅途中、彼女は一人でバーに入る。
すると、そこで浅見が一人で飲んでいた。
彼と一緒に飲むことができて、未央子はとても嬉しかったものの、泥酔して、彼にマンションまで送ってもらうという失敗をしてしまう。
でも、これをきっかけに、未央子は浅見とまた飲みに行く機会を得る。
そんな時、一人の女性が横浜支所から未央子の部署に転勤してくる。
その女性、堺美鈴は高校時代に未央子をいじめ抜いた張本人であった。
彼女は未央子を開口一番ゴキブリ呼ばわりして、未央子の過去を暴露する。
更に、未央子が浅見と飲んでいる時、美鈴がやって来る。
ゴキブリという言葉に浅見がクスっと笑うのを目にして、未央子は店を出て、暗澹たる気持ちで帰宅する。
彼女が「リセットできたらいいのに」と願った時、テレビの画面にアンリが現れる。
未央子は高校時代に戻り、美鈴にいじめられる前に、先回りして、今度はいじめる方になるのだが…」
・「罪と罰」(2005年「月刊ホラーM」2月号)
「須藤さつきは高校一年生の女子。
ある朝、彼女は痴漢にあい、駅員に突き出す。
犯人は人気俳優の五十嵐和人であった。
さつきは中学一年生の時に痴漢にあったことがトラウマになっていて、警察を呼ぶ。
以来、彼女は五十嵐和人のファンの嫌がらせを受けるようになる。
このままでは家族にも危害が及ぶと、告訴を取り下げた所、今度は嘘つき呼ばわりされ、学校でいじめを受ける。
被害者なのに踏んだり蹴ったりの目にあった彼女は引きこもりになるが、ある日、ゲームをしていると、アンリが現れる。
元の生活を取り戻すため、さつきは痴漢されている時に戻り、痴漢行為に耐える。
だが、五十嵐和人から痴漢のターゲットにされ、次回も痴漢にあう。
すると、河上高久という青年が五十嵐和人の痴漢行為をとがめ、彼女を助けてくれる。
でも、これまでの経験から、さつきは深追いはしないよう彼に頼む。
その代わり、彼は毎朝、彼女と同じ車両に乗り、彼女を守ってくれる。
二人は自然と付き合うようになるのだが…」
・「ウワサ」(2005年「月刊ホラーM」5月号)
「美久の父親は芸能事務所の社長。
大きな屋敷の一部は寮になっていて、デビュー前や新人の世話をしている。
美久はこれを利用し、様々な噂を仕入れては、学校でそれを売り、荒稼ぎしていた。
ある日、寮に北丘沙羅と元瀬翔という新人が入る。
二人にはスター性があり、瞬く間に人気者となる。
しかし、二人には全く隙がなく、美久は噂が入手できず、ヤキモキ。
そこで、ある時、元瀬翔の部屋に無断で忍び込む。
部屋を物色していた時、その現場を沙羅に押さえられる。
これを逆恨みして、美久は沙羅の秘密を暴き、それをネットに流す。
その復讐として、美久はレイプされる。
傷ついた美久の前にアンリが現れる。
美久は翔の部屋にいるところを沙羅に見つかった時点に戻るのだが…」
巻末の「ごあいさつ」で、山本まゆり先生がイタリアのロック・バンド「アルティ・エ・メスティエリ」の来日コンサートを観に行き、メンバーが来るかもしれないというバーで待っていたという話が出てきます。(注1)
山本先生はプログレ好きで、過去には「人間椅子」の方々と対談したこともある御方。
機会があれば、音楽の趣味についてお話を伺いたいものです。
・注1
余談だけど、二十年ぐらい前、大阪の十三のライブハウス(?)での「シルバー・アップルス」(電子音サイケのパイオニアの一つ)のライブを見に行かなかったことをいまだに後悔している。
過去を振り返ると「しなかった後悔」だらけ…。
飲まずにはいられない。
2022年11月10日 ページ作成・執筆