北川玲子「うろこ少年」(1996年6月1日初版第1刷発行)

 収録作品

・「うろこ少年」(1995年「月刊ホラーM」2月号掲載)
「松崎まるみは、仲間はずれが怖いばかりに、人の顔色ばかり窺っている少女。
 彼女は、学校からの遅い帰り道、顔中、ウロコで覆われた少年を目にする。
 翌日、友人達にその話をすると、その少年は「うろこ少年」と呼ばれていた。
 少年は水曜日の夕方、駅方面へ通学路を行くと、向こうから歩いて来るらしい。
 まるみは友人達に案内をせがまれ、翌週の水曜日、彼女達は通学路で張り込みをする。
 当のうろこ少年がやって来ると、友人達は、うろこ少年を好奇の眼差しで見つめ、面白がる。
 うろこ少年は走り去るが、偶然、居合わせた、隣組の男子達に捕まってしまう。
 まるみは止めようと思うものの、関わり合いになるのも怖い。
 丸みの方に突き飛ばされた、うろこ少年に彼女は「大丈夫?」と声をかけるが、彼は「ノロッテヤル」と答える。
 逃げようと、車道にとび出た彼は、車に轢かれて死亡。
 まるみは、自分は悪くないと考えるつつも、罪悪感に苛まされるが、ある夜、うろこ少年が彼女の部屋を訪れる。
 以来、まるみの顔は、うろこ少年と同じようになり、うろこ少年は彼女の部屋に住みつくのだが…」

・「僕を殺さないで」(1995年「月刊ホラーM」10月号掲載)
「山下かなえ(高校二年生)の家に、岡田和也という少年がやって来る。
 彼女の母親は、女社長で、ボランティアとして、事情があって親と暮らせない子供達の一時的な里親をしていた。
 和也はしっかりとしているように見えるが、非情に独り言が多い。
 母親から、離婚した両親が二人とも引取りを拒否していると聞き、かなえは彼の心の支えになれないかと考える。
 その頃、近所で、若い母親と赤ん坊が惨殺されるという事件が起こる。
 この事件に和也がかかわっているようなのだが…。
 彼の双子の兄弟のマサヤとは…?」

・「アレクセンシア」(1994年「月刊ホラーM」9月号掲載)
「巷で話題の、美容と健康にいいと言われるアレクセンシア。
 見た目はカエルの卵のようだが、実は、熱帯の植物の樹液で、特殊な菌を持ち、砂糖水で発酵して寒天状になるらしい。
 由香の母親はアレクセンシアにおおはまりで、ご近所にも配っていたが、由香の口にはどうも合わない。
 そのうちに、母親の様子がおかしくなる。
 食事は取らず、砂糖水ばかりを飲んでいる。
 由香は母親を止めようとするのだが…。
 アレクセンシアの秘密とは…?」

・「バーン・アップ 〜炎上〜」(1995年「月刊ホラーM」7月号掲載)
「みずき(高校三年生)の中学時代の友人達が、原因不明の焼死を遂げていく。
 彼女達に共通しているのは、三年前、部活帰りのバスで、酔っ払いが車内でガソリンを撒き、放火したという事故。
 その事故で、友人のかすみは、逃げ遅れたみずきをかばって、焼け死んでいた。
 みずきは罪悪感に苛まされ、かすみの夢だった弁護士を目指し、毎週の墓参りも欠かさない。
 しかし、ある夜、みずきは金縛りにあう。
 膝辺りに何ものかがのしかかり、「殺してやる…焼き殺してやる…」と呪いの言葉が囁かれる。
 恐怖で金縛りが解けた、みずきは窓の向こうに、かすみの霊を視る。
 そして、みずきが最後の一人となった時…」

・「悪魔の微笑み」(1994年「増刊ホラーM」Vol.4 掲載)
「藤城めぐみ(15歳)は、名門私立校のマリア女学院に入学したばかり。
 登校途中、彼女は織戸えりかという少女と出会う。
 同じ外部入学で、知り合いが少ないということもあり、えりかはめぐみに友達になってくれるよう頼む。
 めぐみは気軽に了承するが、えりかは人懐っこい外見と裏腹に、恐ろしく嫉妬深い。
 ある日、めぐみはえりかの家を訪れる。
 父親は世界的な生物学者で、車椅子の身体であった。
 父親はめぐみに、えりかは母親の愛を知らずに育った寂しがり屋なので、裏切らないよう、ずっと友達でいてくれるよう求める。
 とは言え、めぐみだって、他に友人もいれば、やりたいこともある。
 だが、それが恐ろしい事態を招くことに…」

 マイナーですが、粒よりの内容です。
 「うろこ少年」は、作者の実体験がもとになっているため、考えさせられる内容となってますが、残りの作品は「ホラーM」らしいバッド・テイストが堪能できます。
 特に、「僕を殺さないで」「アレクセンシア」は、奇想とグロ描写が炸裂していて、素晴らしいです。

2021年1月24日 ページ作成・執筆

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