渡千枝
「放課後の怪談@ 死者との交信」(2001年3月1日初版第1刷発行)
「放課後の怪談A 花いちもんめ」(2001年4月1日初版第1刷発行)

・「第1話 魔界に逃げた少年」(1999年「THEフレンド」夏号)
「大学生の坂井多恵は、教育実習を行うこととなる。
 担当は五年二組で、担当教官は敷島先生。
 有能な敷島先生のお陰で、クラスは安定しており、彼女は順調に教育実習期間を過ごす。
 ただ一つ、彼女は、増田和彦という生徒のことが気にかかる。
 彼は、全く感情を外に出さず、存在感が希薄な生徒であった。
 ある晩、彼が突如、行方不明となる。
 放課後の学校で、多恵は彼を見かけており、子供達は、彼が学校の怪談の噂を試したのではないかと言う。
 その噂は、逢魔が時、北怪談の踊り場の前の大鏡を背にして、「遊びにおいで」と三回唱えると、鏡の中から子供が出て来て、その子供にじゃんけんで負けると、鏡の中に連れ去られてしまうというものであった。
 多恵は、増田和彦が母親から虐待を受けていたことを悟り、子供達の言う事を信じる。
 そんな時、彼女の前に度々現れていた、坊主頭の少年の幽霊が現れ、彼女をある場所に案内する…」

・「第2話 死者との交信(アクセス)」(2000年「月刊ホラーM」6月号)
「シドニーからの帰国子女の仙石寺紗那は、ある小学校の六年二組に編入する。
 担任は敷島先生で、クラスにもすぐにとけ込み、雪野蘭という親友もできる。
 また、同じクラスで、多田翔太という幼稚園の頃の幼馴染とも再会。
 蘭によると、彼の家庭は、父親の倒産のため、大変な状況にあったが、それでも、彼は以前のように元気いっぱいだったらしい。
 だが、ここ一週間ぐらいで、彼はすっかり覇気をなくし、授業中も居眠りばかりするようになっていた。
 ある時、紗那は、坊主頭の少年の幽霊に教えられて、翔太が、学校のパソコンの教室で、ネット対戦のゲームをしていることを知る。
 彼はそのゲームに夢中で、対戦相手に異常なほど、こだわっていた。
 彼の対戦相手は「Babe」というのだが…」

・「第3話 闇に舞う千羽鶴」(2000年「月刊ホラーM」8月号)
「クラスの市原龍臣(たつおみ)は、プライドの高い、ガリ勉君。
 クラスメート達を見下し、それでも、内申書のために、いやいや学校に通う。
 ある日の登校する途中、彼は、車を避けようとして、電柱に頭をぶつける。
 幸い、怪我は大したことがなく、そのまま、学校に向かうが、どうも様子がおかしい。
 学校には、人の気配はあるのに、誰にも会うことできない。
 また、学校から出ようにも、校門の柵が高くなっていて、脱出することができない。
 そんな時、一つだけ、教室の明かりが見える。
 その教室は使われていないはずなのだが…」

・「第4話 はいあがる霊」(2000年「月刊ホラーM」12月号)
「城之内麗花と戸倉優子は幼稚園の頃からの幼馴染。
 成績優秀ではあるが、勝気で強引な麗花に対し、優子は引っ込み思案で大人しく、心優しい女の子であった。
 二学期最初の席替えの際、窓際になった麗花は、優子に席を変わるよう迫る。
 実は、麗花は、小学校三年の時、窓から見えるベランダのふちに、誰のものかわからない指があるのに気付く。
 進級して、教室が上階に移るにつれ、指から手の甲、腕と徐々に学校の方へ伸びてきていることがわかり、麗花はその正体を知るのを恐ろしがっていた。
 また、その幽霊を、麗花だけでなく、優子も見ており、今回は、紗那が窓際の席に座ることで収まる。
 だが、ある雨の夜、教室に忘れ物を取りに来た麗花は、うっかり窓際に近づき、その幽霊を目の当たりにしてしまう。
 以来、彼女は自宅の部屋に閉じこもったまま、誰にも会おうとはしない。
 一方、学校では、麗花が見た幽霊が学校を徘徊しているという噂が流れ始める。
 それは、長い黒髪に白い着物を来た、女の幽霊で、麗花の席の周囲の生徒達が次々と災難に巻き込まれていく。
 幽霊の正体は…?」

・「第5話 理科室の骨」(2001年「月刊ホラーM」1月号)
「昭和23年(1948年)、新制中学三年の田所裕之は、妹の幸代と、親が遺した長屋で暮らしていた。
 ある日、彼は、幸代から、学校の裏山の池で、澄男と会ったと聞かされる。
 澄男は、小学生の時の友人で、小学六年生の時に、防空壕を直撃され、死んだはずであった。
 気になった裕之は、母校の小学校を訪ねるが、当時の担任によると、やはり、終戦の年に澄男は死んだという。
 更に、小学校で澄男の幽霊と出会い、裕之は彼の死を実感させられる。
 それから数日後の雨の日、彼の留守の間に、幸代が学校の裏山の池に出かけてしまう。
 裏山の崖は崩れやすくなっており、彼は妹を迎えに学校へと出かけるのだが…」

・「第6話 花いちもんめ」(2001年「月刊ホラーM」2月号)
「雪野蘭は、クラスの女子で「花いちもんめ」をする夢を見るようになる。
 その夢の中で、一月前に病死した橋本由佳が向こう側にいて、こちら側の女子を指名する。
 そして、彼女に呼ばれた女子生徒は、意識不明の状態になるのであった。
 クラスの女子は次々と呼ばれて、雪野蘭も同様の目にあう。
 どうやら、橋本由佳はこの世に未練があるために、一人であの世に逝けず、クラスメートを道連れにしようとしているらしい。
 途方に暮れる紗那達の前に、坊主頭の少年の幽霊が現れる。
 彼は、彼女の霊をあの世に連れて行くから、彼を学校から出してくれるよう頼む。
 だが、彼は、死ぬ前のことを何一つ、名前すら覚えていなかった。
 紗那達は、彼の正体を突き止めるために、あちこち問い合わせるのだが…。
 タイムリミットは、橋本由佳の四十九日が終わる、卒業式の日…」

 少年の幽霊を中心にした「学校の怪談」テーマの連作です。
 ハート・ウォーミングな内容で、結構、感動しちゃいました。
 お勧めです。

2020年7月17・19日 ページ作成・執筆

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