柳田やなぎ「しりこだま」(2010年6月1日初版第一刷発行)

 川太郎はぱっと見はイケメンの少年だが、実は河童であった。(特技は「尻子玉」抜き。好物はキュウリ。)
 彼の夢は嫁さんを見つけて、12匹の子供に恵まれること。
 今日も懲りずに若い娘にアタックするが…。

・「第1話 泉」
「高校生の泉(16歳)が目覚めると、見知らぬ小屋の中であった。
 そばには川太郎と名乗る少年がいて、彼女に突如、求婚してくる。
 驚く彼女だが、断れば尻子玉を抜くと脅されて…」

・「第2話 ユキ」
「ユキは、自分の女友達が憧れの勇太と付き合うことを知り、カンカン。
 そこに、川太郎が現れ、彼女にプロポーズする。
 一方的に話を進められ、更に尻子玉を抜かれそうになった時、ユキはある考えを思いつく。
 彼女は自分よりもいい女がいると川太郎に話し、女友達を携帯電話で呼び出すのだが…」

・「第3話 師匠とその弟子」
「キュウリの買い出しのため、川太郎は子河童たちとバスに乗る。
 すると、男が若い女性の尻を撫でているのが目に入る。
 川太郎は男が尻子玉を抜こうとしていると考えて、男に話しかける。
 川太郎と男はバスから降り、話をするうちに、男は川太郎が痴漢のプロだと勘違いして…」

・「第四話 亜美」
「星也と亜美はカップルであったが、星也はDV野郎で、亜美は彼の隷属状態にあった。
 星也は河童を捕まえようとして、罠(蓼の汁を塗ったキュウリ)をしかけると、それに川太郎が引っかかる。
 川太郎が死んだと思い込み、星也は彼を川に投げ込むが、それにより川太郎は復活。
 川太郎は川辺で様子を見ていた亜美を命の恩人と思い込み、彼の小屋に彼女を誘う。
 これを利用して、星也は女装して、川太郎の小屋を訪れるのだが…」

・「第五話 加奈」
「川太郎は友人の河童からモテるようにした方がいいと助言を受ける。
 人間の女の子は「キレイな服」や「キラキラした物」が好きらしいので、川太郎は着飾り、祖父の集めた宝石を持ちだす。
 そんな時、川太郎は加奈という少女と出会う。
 加奈は母子家庭の長女で、仕事で忙しい母親の代わりに、四人の子供の面倒をみていた。
 彼女の夢は玉の輿で、川太郎は金持ちのボンボンっぽく彼女の目に映る。
 加奈は川太郎と水族館でデートするのだが…」

・「第六話 宮代」
「メス河童の祢々子は川太郎を探していた。
 メス河童は17歳になる前にオス河童の「惚れ肝」を喰うと、長寿と美貌を得られるのであった。
 川太郎が嫁探しに高校に入学したことを知り、祢々子は宮代という、いじめられっ子の女の子にとり憑き、高校に潜入。
 そして、川太郎に接近し、彼を篭絡するのだが…」

・「第七話 神扇」
「前話がきっかけとなり、宮代と川太郎は、神扇という男子生徒が部長を務める「妖怪クラブ」に入部する。
 神扇は親切そうだが、川太郎を試したり、観察したり、いろいろと聞き込みをしていた。
 彼は河童について興味を持っているようだが、その目的とは…?」

・「おまけまんが 校長先生の畑」
「川太郎は校長先生の作るキュウリが大好物。(尻子玉の次に好き。)
 しかし、時期が過ぎて、もうキュウリはおしまい。
 川太郎はがっかりするが、また苗が植えてある。
 そこで、彼は苗を念力で大きくしようとするのだが…」

 「河童」を描いた漫画は幾つかありますが、その中でも断トツのインパクトを誇るタイトル「しりこだま」。
 内容は、オス河童の川太郎の婚活(?)を描いたものですが、そんなことよりもまず、川太郎がちっとも河童っぽくなくて、釈然としません。(頭頂の皿すらなし。)
 また、タイトルにある尻子玉は人の魂ということですが、あんなもん、食べるなよ…。
 また、ほのぼのした絵柄に反して、意外にも、尻子玉を抜かれて殺される人は多いです。(単行本で計四人/二話に一人ぐらいの割合)
 川太郎は見た目はイケメンですが、実はヤバい妖怪で、そんなもんが野放しにされてるのも、何だかなあ…。(普通だったら、人間に皆殺しにされてるはず。)
 こんな感じで、説得力を欠いたまま、話がヌルく進んで行くので、「河童もの」を期待すると大きく肩透かしを食らいます。
 ちなみに、紙の本では一巻だけですが、電子書籍で二巻が出ております。(二巻完結)
 二巻は未読ですが、野菜作りの好きな校長先生の活躍を期待しております。

2023年11月22・23日 ページ作成・執筆

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