高橋葉介「ストーリィ・テラー」(2012年11月20日初版第1刷発行)

 九鬼奇句子は「月刊テラァ・ストーリィ」の編集人。
 彼女は一般の人から不思議な体験・目撃談を収拾する。
 今回、彼女が取材するのは…。

・「赤ずきん」(「まんがグリム童話」2011年11月号)
「赤座絹子は短大を卒業後、小さな会社に就職する。
 入社一日目、彼女は上司に「お使い」を命じられる。
 彼女の仕事は、本社に出向き、会長本人に書類の入った封筒を渡すことであった。
 そして、目印として赤いベレー帽をかぶるよう言われる。
 本社はものすごい田舎にあり、本社ビルはまるで廃墟。
 会長室の前まで案内されるが、部屋の前には幾つもベレー帽が落ちていた。
 中に入ると、会長は百歳を超えるであろう巨大な老婆であった。
 封筒の書類に書かれていた言葉とは…?」

・「ヘンゼルとグレーテル」(「まんがグリム童話」2011年12月号)
「両親に会いたさに、施設を脱け出した兄妹。
 夜道で迷子になり、更には雨にまで降られ、二人は凍える。
 睡魔に負けた妹が目覚めると、そこはお邸の一室であった。
 兄の姿はなく、女主人が言うには、彼女を捨てて行ってしまったとのこと。
 そこは魔法の家のようで、綺麗な庭には花がいっぱいあり、お邸は大きく、お人形のような服を着せられ、それに贅沢な食べ物と甘いお菓子が与えられる。
 夢のような暮らしに魅せられ、数日経つ頃には彼女は兄のことを忘れかける。
 ある夜、兄が寝床の彼女を起こし、早く逃げるよう言うのだが…」

・「ラプンテェル」(「まんがグリム童話」2012年1月号)
「森の中にぽっかりと開けた空き地に立つ高い塔。
 塔には高い所に窓が一つだけあり、一人の女が助けを求めている。
 女は、下から見上げている男に向かって、その長い黒髪を垂らし、登ってくるよう頼む。
 男が髪を掴むと、髪は彼の腕に絡まり、男は持っていたナイフで髪の毛を切り、逃げる。
 帰宅後、男は恋人にその話をするが、彼女は全く信じない。
 彼がお茶を入れている間に、恋人は髪をしまってある箪笥の引出しを開け…」

・「ハーメルンの笛吹き」(「まんがグリム童話」2012年2月号)
「ある娘が会社の独身寮への帰る途中、一人の男が待ち伏せしていた。
 男は口笛を吹いており、その懐かしい調べを聞いていると、たまらなく切なくなる。
 彼女は男の後について廃屋に入り、仏壇のある部屋で何度も激しく犯される。
 その後、彼女は妊娠し、男児を産む。
 男児もあの曲を口笛で吹くようになるのだが…」

・「眠れる森の美女」(「まんがグリム童話」2012年3月号)
「ミタ・ナユコはあるお邸に家政婦として雇われる。
 その邸には女主人とその息子のヒデヒロの二人暮らしであった。
 ただし、ヒデヒロは服毒自殺に失敗してから、意識不明の寝たきりになっており、ナユコの仕事は彼の世話であった。
 彼女が仕事を終え、アパートの自室に戻ると、夜、夢にヒデヒロが現れる。
 彼は何度も彼女を犯す。
 その夢は、彼女が仕事をやめてからも続き…」

・「シンデレラ」(「まんがグリム童話」2012年4月号)
「継母と二人の連れ子の娘と喧嘩して、家をとび出してきた娘。
 だが、頼れる人もなく、金も底を尽き、途方に暮れていた時、奇妙な噂を耳にする。
 その噂通りに、夜中の12時に裸足で街角に立っていると、車が彼女の前に止まり、豪邸へと運ぶ。
 そこで身ぎれいにさせられ、彼女は全裸で寝室に横たわる。
 現れたのは、よぼよぼの爺様で、彼女は爺様の相手をさせられる。
 爺様は彼女を気に入ったと靴を渡し、気が付くと、彼女は最初の街角に立っていた。
 身体には豪華な毛皮のコート、そして、両手には札束を抱えて。
 以来、毎夜、彼女は、老人からもらった靴を履き、例の街角に立つ。
 不思議なことに、彼女と寝る度に、老人は若返るのだが…」

・「夏の庭、冬の庭」(「まんがグリム童話」2012年5月号)
「野上の兄貴は血も涙もないヤクザ野郎。
 彼は借金のカタに女を取り上げては、売り飛ばしていた。
 大抵は使い物にならない女が多いが、たまに上玉がある。
 中でも、鈴(ベル)という女は上玉中の上玉であった。
 彼は彼女を「味見」しているうちに、すっかりその身体に溺れてしまい…」

・「白雪姫」(「まんがグリム童話」2012年6月号)
「雪子の父親は新しい妻を迎える。
 継母となる女性は父親の前では優しかったが、留守の間は男を連れ込んでいた。
 ある時、男が雪子を褒めたことから、継母は彼女に嫉妬する。
 そして、車で雪子を山奥に連れて行き、リンゴジュースで眠らせた後、森の中に放置する。
 目覚めた彼女の周囲には七人の子供達が集まっており、皆で夢中になって遊ぶのだが…」

・「長ぐつをはいた猫」(「まんがグリム童話」2012年7月号)
「雨の夜、末広マサトは一匹の黒猫を拾う。
 彼は猫をアパートに連れ帰り、餌を与えてから、抱いて寝る。
 いつの間にか彼のふとんの中には「寝子」と名乗る娘がいて、マサトは彼女を抱く。
 その夜から寝子は彼の部屋にいつき、また、マサトは幸運に恵まれていく。
 ある時、寝子はマサトに一流企業の面接に行くよう勧める。
 面接会場に向かう時、彼は一人の女性とぶつかるが、彼女はその企業の会長の娘で、彼に一目惚れ。
 彼女は就職に口を利くと言うが、彼は寝子を捨てるにはしのびず…」

・「青ひげ」(「まんがグリム童話」2012年8月号)
「九鬼奇句子の親友、マリコ。
 彼女は山奥の館に住む、かなり年上の男性と結婚する。
 主人は彼女に地下室だけは絶対に見てはいけないと命ずるが、当然ながら、彼女は地下室に降り、切り裂かれた女達の死体を目にする。
 気絶した彼女は主人に介抱されて目を覚まし、全て夢だと言われる。
 だが、夢かどうか自信が持てず、奇句子を屋敷に呼ぶのだが…」

・「オオカミと七匹の子ヤギ」(「まんがグリム童話」2012年9月号)
「八木沢真奈は交通事故で頭を負傷し、記憶を失う。
 医師の治療により、徐々に記憶を取り戻していくが、幼い頃の記憶だけがどうしても戻らない。
 真奈の友人の竜一は、大学病院で九鬼奇句子のことを聞き、彼女に相談する。
 真奈の願いもあり、奇句子は彼女の心を覗き、幼い頃の真奈を視るのだが…」

・「漁師とおかみさん」(「まんがグリム童話」2012年10月号)
「ボロ家に住む姉弟。
 ある日、弟が近くの空き地の古井戸を覗くと、底にヒラメがいた。
 ヒラメは、ここから出してくれたら、どんな願いでも叶えると言う。
 弟が姉に相談すると、姉はボロ家を豪邸に建て直してくれと頼む。
 姉は次々と願い事をして、ナイスバディ―になり、たくさんの男からモテモテになる。
 彼女は半年ばかり遊びに出るが、数年後…」

・「ろくろ首 Another Story」(「月刊少年チャンピオン」2011年9月号)
「駅のホームで電車を待っていた女子高生。
 急に眠くなり、気が付くと、空に向かって首がどんどん伸びている。
 彼女の首は九鬼の部屋を訪ねるが…」

 高橋葉介版「グリム童話」ですが、「他人のお話に介入できる」能力を持つ九鬼奇句子を主人公にすることによって、一捻りも二捻りもしたストーリー展開となっております。
 また、掲載誌が「いちばん残酷なまんがグリム童話」だったせいか、高橋先生独特の流麗な官能描写が多く盛り込まれ、実に目の保養になります。
 個人的なお気に入りは「長ぐつをはいた猫」。「猫娘」はこうあってほしいものです。(と言っても、私は猫は苦手ですが。)
 あと、この姉妹作が「怪談少年」になるのかな?

2023年2月4日・3月5日 ページ作成・執筆

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