柴垣まゆみ「長い夜をぬけて」(1997年10月1日初版第1刷発行)
収録作品
・「長い夜をぬけて」(1996年「月刊ホラーM」12月号初出)
「中学二年生のちえりは内気な少女。
彼女には、部屋のぬいぐるみと話をするという子供っぽいところがあった。
十月の終わり、彼女は、父親の浮気が原因で、両親が離婚し、母親に引き取られる。
そのことをネタに学校でいじめられるが、幼馴染の佑と勝が彼女をいつも慰めてくれる。
佑は優しく、包容力があり、勝は口は悪いが、面倒見のいいナイスガイであった。
学校では彼らが心の支えになってくれるが、家庭では、離婚後、母親は徐々にノイローゼになっていくのをどうすることもできない。
また、来月の12月になると、何かが起こるという不安が心から離れない。
佑と勝は何が起こるか知っているようなのだが…。
そして、迎えた12月1日…」
・「6月の雨」(1996年「月刊ホラーM」6月号初出)
「六月、梅雨。
小学六年生の後藤由衣は、クラスメートの梶田遼のことが気になって仕方がない。
彼は、複雑な家庭に育った少年で、五日前から行方不明になっていた。
ある時、由衣は学校で、梶田遼とそっくりな少年に出会う。
彼は、遼の双子の兄で、江純遥(えずみ・よう)であった。(姓が違うのは、両親が離婚したため。)
遥は遼の行方を捜しており、由衣も彼に協力を申し出る。
そこで、彼は由衣に、クラス担任の奥山律子先生の机に手紙をこっそり置いてくるよう頼む。
手紙には、夜の九時に教室に来るよう書かれており、差出人の名前は梶田遼になっていた。
手紙を盗み見した由衣は、遥には内緒で、教室に隠れる。
夜の九時、奥山先生が教室に入って来るが、そこに現れたのは…?
梶田遼に一体、何が起こったのであろうか…?」
・「秘密」(1996年「月刊ホラーM」8月号初出)
「このみと桃子は大の親友。
桃子は、アル中の父親に虐待されて育ったが、二年前、父親が転落死して以来、母子共、幸せに生活していた。
ある時、このみは、クラスメートの久保剛について、桃子にこぼす。
彼は、このみに気があって、彼女にいたずらばかりするのであった。
桃子は、このみの名前を使って、彼を呼び出し、道路に突きだして、交通事故死させる。
このみは、桃子の行為に戸惑いながらも、これを二人だけの秘密にする。
しかし、久保剛が受けた電話から、彼の兄が桃子を怪しみ始め…」
・「闇の瞳」(1996年「月刊ホラーM」2月号初出)
「ミッション・スクールの私立黒羽学院高校。
両親が事故死したため、刀根花夜子は寮に入る。
彼女のルームメイトは仁科泉、掛見川エリナ、本条瑠美の三人で、花夜子を心から歓迎してくれる。
だが、この「109号室」にはある因縁があった。
五年前、この部屋にいた、高柳光子という生徒が時計塔から跳び下り自殺をしたのである。
以来、四人部屋にも関わらず、三人しか配置されなかった。
花夜子が入寮した翌日の晩、ゴミ捨てに行った本条瑠美が頭を斧で叩き割られて、殺害される。
その次に、掛見川エリナが顔面にナイフを突き立てられて、死亡。
花夜子は、自殺した高柳光子とそっくりだと言われるが、連続殺人事件と、過去の自殺事件は何か関係があるのだろうか…?」
・「雪の足跡」(1997年「月刊ホラーM」2月号初出)
「雪の季節。
飯田美百合の、二階の自室の窓の下に、毎夜、謎の足跡がつく。
足跡の主は目に見えず、部屋の窓の下でいつも終わる。
そのことがあり、下校の際、彼女は、変わり者の秀才、布川敬士と一緒に帰ってもらう。
途中、例の足跡が彼女に向かって、進んでくる。
彼女は逃げ出すが、敬士は足跡の前に立ちはだかり、彼女に何の用かと尋ねる。
足跡の主は、六年前のことを話してほしいと頼んでいた。
六年前、小学校二年の美百合はH山で行方不明になっていたのだが…」
粒よりの短編集です。
見た目の派手さはありませんが、じわじわと良いです。
特に、「長い夜をぬけて」「6月の雨」「雪の足跡」は、少し残酷で、少しほろ苦く、そして、優しい内容で、作者の「ハート」を感じます。
2021年2月21・22日 ページ作成・執筆