綾瀬涙&K・東里「まむしの森」(1997年9月1日初版第1刷発行)

 収録作品

・「まむしの森」(「月刊ホラーM'95年6月号」初出)
「ある学校に転校してきた、真神(まみ)と真鬼の姉妹。
 双子であるにも関わらず、気立てがよく明るい真神に対して、真鬼は乱暴なヤンキー娘と性格は正反対。
 この学校の裏山には「まむしの森」と呼ばれる森があり、立ち入り禁止となっていた。
 だが、そこを溜まり場にしていた不良の連中が、ある時、魔虫の封印を解いてしまう。
 魔虫は不良達に憑りつき、その肉を喰らって繁殖。
 生徒達は次々と魔虫の餌食となっていく…」
 んで、結局、主人公の姉妹の正体は何だったのでしょうか…?
 もしかして、続きものだったとか?

・「還らず病院」(「月刊ホラーM'97年1月号」初出)
「千恵利は、前夜、食べ過ぎたため、吐いて、魔鬼病院に運ばれる。
 母親には優しくしてもらえるし、担当医の魔鬼はイケメンだし、千恵利はウキウキ気分。
 だが、伝染性の病気で両足を切断した少年に出会ったことで、千恵利は不安を覚え始める。
 彼が言うには、この病院を生きて出た人間はいないらしい。
 彼女は病気でないと主張するが、彼女の血液から「伝染性の細菌」が発見され、退院させてもらえない。
 サディスティックな治療の末に衰弱した彼女は病院からの脱出を図るのだが…」

・「葬儀屋」(「月刊ホラーM'96年1月号」初出)
「闇夜野(やみよの)黒男は、高校生ながら、闇夜野葬儀社の代表。
 葬儀社の評判はすこぶる良かったが、高校では皆にいじめを受けていた。
 それでも根が天然とあって、いじめっ子達からすれば手ごたえがなく、同じクラスの相羽かなえが標的となる。
 壮絶ないじめに耐えかね、かなえは学校の屋上から飛び降り自殺。
 彼女を葬儀を請け負った黒男は、彼女の成仏させるために、彼女の未練を晴らす手伝いをする…」

・「幽名ガイダンス」(東里桐子・名義/「ホラーDX'95年7月号」初出)
「浅子は、気が付くと、見知らぬ少女達と、見知らぬ空間で、テーブルについていた。
 少女達によると、自分達はもう死んでいるとのこと。
 実際、浅子は貧血を起こし、学校の屋上から転落死していた。
 また、先客の佑(ゆう)は学校で肝試しの際に幽霊に憑り殺されており、ひなのは失恋のショックで自殺していた。
 三人がわいわいやっているうちに、いじめを苦に首吊り自殺をした麻夜という少年も仲間に加わる。
 浅子は、自分の死が自殺に扱われていることに激昂し、汚名をそそぐことを決意。
 浅子の説得により、幽霊の少年少女達は、自分の未練を晴らすべく、生徒達に自分の存在をアピールし始めるのだが…」
 ブラック・ユーモア溢れる傑作です。
 「転んで(死んで)も、ただでは起きない」女子高生達のしたたかさ(もしくは無神経さ)を見事に描いております。

・「ずっと…いっしょ」(「月刊ホラーM'95年1月号」初出)
「成績優秀で学級委員の冴子、勝気で運動の得意な愛、美貌が自慢の優美。
 三人は小学校の頃からずっと仲良し三人組であったが、その裏の顔は三人で結託して、気に入らない相手をいじめまくって、叩き潰してきた。
 ある日、三堂悠司というハンサムな青年が彼女達のクラスに転入してくる。
 頭も良く、スポーツも抜群、性格も明るい彼はすぐにクラスの人気者になる。
 彼に惚れた優美はアタックするものの、あっさりはねつけられる。
 続いて、愛も告白するが、優美の二の舞いとなる。
 プライドをいたく傷つけられた二人は、クラスメート達に睨みを効かせて、悠司をクラスで孤立させる。
 いずれ悠司が自分になびくとの考えであったが、二人を尻目に、冴子は悠司をちゃっかりゲットする。
 三人のパワー・オブ・バランスが崩壊した時、嫉妬と憎悪が噴出する…」

 知名度は高くありませんが、そのスジでは評価の高い(ような気のする)作品です。
 「ホラーM」の知識の乏しい私に語る資格はないのは重々承知しつつも、三家本礼先生の作品と並んで、最も「ホラーM」らしい作品だと思います。
 荒唐無稽な内容なのに、暴走する奇想と突拍子のない残酷描写で問答無用で読ませる様は、良くも悪くもアナーキー。
 綾瀬涙先生もK・東里(aka 東里桐子)先生も、特に怪奇マンガに特化した漫画家さんではなかったようですが、そんなお二人に斯様なバッド・テイスト極まる作品を産み出させたところに、当時の「ホラーM」が如何に神懸かりなオーラを発していたか、窺えます。
 ただし、残念なことに、このコンビの単行本はこの一冊のみで、雑誌掲載分の多くは単行本未収録のようです(注1)。
 まとめて復刻する価値はあると思いますが、ヤバい描写(注2)も多いので、ハードルは高いかもしれません。

・注1
 私は「ホラーM」を大して所持していないので、実のある話はできません。
 知っている範囲内で紹介すると、「ホラーM2000年3月号」に「定休日」という短編が載ってます。
 内容は、フリーマーケットの日のみ出現する、身体の部品を交換する店で、理想の身体になろうとする女子高生の話です。

・注2
 この画像は、この単行本での個人的ベスト「ずっと…いっしょ」のもの。
 当初、ツイッターで紹介しようかと考えましたが、不特定多数の人の目に付くところに晒すものではないと考えなおし、やめました。
 んにしても、死体を始末するため、その場で食べ始めるという発想が凄過ぎる!!
 しかも、血はどうするか問われ、「生理だっていえばいいでしょ」。
 脳ミソにウジがわきそうだ…。

2018年1月17日 ページ作成・執筆

ぶんか社・リストに戻る

メインページに戻る