高橋葉介「夜姫さま」(2007年4月10日発行)

・「鷹姫さま」(「月刊ホラーM」2005年11月号/単行本化にあたり二色彩画)
「山で狩猟をする青年。
 彼はつがいの鷹の片方を撃ち落とし、そこに向かうと、左肩に怪我をした娘の姿があった。
 彼は彼女の手当てをして、町に連れていく。
 二人は結婚し、娘は妊娠する。
 冬のある日、二人が公園の並木道を歩いていると…」

・「泥姫さま」(「月刊ホラーM」2005年7月号)
「ヘドロで汚れた海。
 タカヒロは両親と共に海水浴に来ていた。
 砂浜で彼は崩れかけた砂の亀を目にする。
 彼が形を直すと、亀は動き出し、お礼にタカヒロを泥宮城に連れていく。
 海の底にある泥宮城には泥姫がいた。
 彼は歓待を受けるのだが…」

・「猫姫さま」(「月刊ホラーM」2005年9月号)
「少年が連日、見世物小屋のテントを訪れるのは、ガラス瓶の中に浮かぶ少女の生首を見るためであった。
 彼は生首を解放し、生首の切断面から肉芽が生え、美しい少女の肢体に育つことを夢想する。
 ある日、彼は、彼に想いを寄せる猫娘を唆し、ガラス瓶を持ってこさせる。
 猫娘は崖から突き落とし、彼はガラス瓶を家に持ち帰る。
 しかし、ガラス瓶から出した生首はどんどん大きくなり…」

・「闇姫さま」(「月刊ホラーM」2006年1月号)
「少女は闇姫。闇の中に棲む者。闇が彼女の王国。
 しかし、母親を名乗る女が彼女の聖なる闇を破り、いつもの悪夢が始める。
 彼女が城を出ると、城下には醜い下賤の者でいっぱい。
 その臭いに気分が悪くなってきた時、彼女は「ガッコウ」の前にいることに気づく。
 彼女は一時、身分を隠して通っていたが、ある日、やんごとなき身分の姫君であることがばれ、散々な目にあってから、行っていない。
 そこに、同じクラスだったナイト(内藤)が現れ、今日は開校記念日だと教える。
 彼は彼女にハンバーガーをくれるが、その見返りとして…」

・「井戸姫さま」(「月刊ホラーM」2006年3月号)
「夏の暑い日。
 少年は人気のない林の奥に廃井戸を見つける。
 誰かの呼ぶ声が聞こえ、中を覗くと、底に「井戸姫さま」がいた。
 「井戸姫さま」は上半身が女性、下半身が蛇で、その笑顔は心がとろけるようであった。
 少年は「井戸姫さま」を彼だけの秘密にして、様々な食べ物を与える。
 彼女が一番望んでいるものとは…?」

・「夢姫さま」(「月刊ホラーM」2006年5月号)
「少女は弟の夢を見る。
 火事の家の中、弟に手を引かれて逃げる夢。
 夜中、夢遊病の弟の後をつけて、墓地に行く夢。
 森の中、迷子になった彼女は弟の手を引いて、森から脱出を目指す夢。
 そして、今度見る夢で、制服姿の彼女と盛装の母が会うのは…」

・「夜姫さま」(「月刊ホラーM」2006年7月号)
「夜姫さまは可愛い女の子。
 彼女は夜の空を飛ぶ。
 地上からは死んだばかりの魂たちが天井に昇っていくのが見え、彼女も死にきれない魂たちのお手伝い。
 そんな彼女はもちろん、戦争も大好き。
 ある夜、彼女は公園で幸せそうなカップルを見かけ…」

・「星姫さま(スター・プリンセス)」(「月刊ホラーM」2006年9月号)
「星姫さまの今月の星占い。
 牡牛座からへびつかい座まで13星座。
 さて、あなたの未来は…?」

・「沼姫さま」(「月刊ホラーM」2006年11月号)
「沼で釣りをする男。
 彼が釣り上げたのは、女の腐乱死体であった。
 その指に素敵な指輪がはまっているのを目にして、男は指輪を抜き取り、死体はまた沼に沈める。
 彼はその指輪を恋人にプレゼントし、恋人は大喜び。
 だが、彼女に女の影がつきまとう…」

・「口裂け姫さま」(「月刊ホラーM」2007年1月号)
「サキちゃんが学校から帰ると、家には誰もいない。
 部屋の真ん中には、お母さんの赤い口紅が一つ置いてある。
 彼女は戯れに顔の両端まで口紅を引くと、あら不思議、口が裂けてしまう。
 早速、彼女は外に出て、その大きな口で皆を驚かす。
 だが、調子に乗って、彼女に吠える犬も、いじめっ子のケンちゃんも丸飲みにしてしまう。
 ここに至って、怒られるのではないかと心配になり、彼女は家に戻って、口紅を落とそうとするのだが…」

 「10人のお姫さま」を主人公にした「童話」風物語です。
 漫画というよりは「絵物語」に近く、あとがきで高橋葉介先生は、日本の漫画の原点は「紙芝居」という論を披露しております。(非常に参考になるので、是非ご一読を。)
 そのため、絵の一つ一つが「見せ場」になっており、高橋先生の独特の絵世界を堪能することができます。
 もちろん、ハズレの作品はありませんが、個人の好みで言うなら、ゲテモノ趣味が横溢する「猫姫さま」、心霊写真とムンクの融合したような「沼姫さま」、ブラック・ユーモア溢れる口裂け女譚「口裂け姫さま」です。
 特に、恋する男には健気かつ勇敢な(割りにあまり報われないような気のする)「猫姫さま」には胸キュンです。

2023年2月10・11日 ページ作成・執筆

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