小林一夫「怪談狐につかれた娘」(160円)



「金貸しを営む、津の田屋。
 一家で観音様にお参りした帰り、娘が、白狐の親子を発見する。
 野犬に襲われたために、父狐は死に、母狐も負傷。
 母狐は、娘に、自分の傷が癒えるまで、子狐を世話してくれるよう頼んで、姿を消す。
 しかし、娘に無断で、父親は子狐を使用人に捨てさせ、娘は母狐の妖術で発狂してしまう。
 それから、一年後、津の田屋の主人は、悪名高い旗本、白狼組から、借金を返済してもらうために、屋敷を訪れる。
 ところが、白狼組は金を返すつもりはさらさらなく、津の田屋の夫婦と下男を惨殺。
 また、狐憑きの娘の方は、餓死させようと、倉に閉じ込めたまま、放置する。
 そんな悪逆な白狼組の面々の前に、白狐と、狐憑きの娘の亡霊が現れ、一人また一人と死へと追いやっていく。
 白狼組の主、悪久根狂十郎は、用心棒として、無限無想の剣士である中津原石斉、北辰一刀流の根星三四郎、また、祈祷師のおばばを雇う。
 しかし、白狐の妖術により、彼らは次々と倒れ、ただ一人、生き残った三四郎は、妖刀青江下坂でもって、白狐を追うのだが…」

 失敗作です。
 理由は、ストーリーに矛盾があること(死んだはずのキャラがまた出てくる)と、ラストの説明が意味不明であること。
 一応は主人公らしい根星三四郎も、一貫性のあるキャラでなく、ストーリーを混乱させているように思います。
 また、罪のない女子供や老婆が無意味に死ぬのも、いただけません。
 140ページの描き下ろしですので、描いている最中に、作者自身が混乱してしまったような印象を受けました。

・備考
 カバー貼り付け、また、カバーに痛みあり。背表紙の下部、欠損。糸綴じあり。pp9・10、上部に裂け。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕と、貸本店のスタンプあり。

2020年4月5日 ページ作成・執筆

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