「怪談特集F」(150円)



 収録作品

・東田健二「夜を探がせ」 「南条健吾は、母の病死全快祈願のためにお宮参りを続けていた。
 ある日、健吾は、神社の御神木を切り倒そうとする老人を目にする。
 老人を止めようとしたところ、はずみで老人は転倒、頭を強く打ち、死んでしまう。
 健吾はその場から逃げ出し、家に戻ると、見知らぬ若い娘が家の中に入っていく。
 部屋で臥せっていた母親に尋ねると、誰も家に入って来たものはないと答える。
 しかし、家の中には娘の持っていた燭台が置かれていたのであった。
 その頃、神社では、永代の燭台が行方不明になり、大騒動。
 その様子を木陰から窺っていた健吾は、覆面をした何者かに襲われる。
 相手は、健吾と同じく伝鬼智神流の使い手であった。
 撃退したものの、神社では老人の死体が見つかり、騒動は更に大きくなる。
 この老人は、前の神主の下男、茂助であったが、何故か斬殺されていた。
 神主は、健吾が犯人だと村人に訴え、南条家に村人が詰めかけてくる…」
 非常にわかりにくい話です。
 最後のコマで、一気に説明しておりますが、それを読んでも、イマイチ内容を呑み込めないという有様。
 アイデアをうまくプロットに活かしていれば、それなりに読み応えがあったと思うのですが…惜しい作品です。

・田野稔「消え失せた男」
「梶幻四郎と落海京之介は親友同士であった。
 落海京之介は梶幻四郎の屋敷に足しげく通っていたが、ある時からぱったりと姿を現さなくなる。
 不審に思った幻四郎が、落海の屋敷を訪ねると、京之介は訳あって江戸へ発ったと聞かされる。
 手紙でもあるかと思い、待つが、何の音沙汰もなく、時だけが流れていく。
 そのうちに、江戸で京之介が崖から転落死したという知らせが幻四郎の耳に入る。
 それから、一年後、幻四郎は、京之介の姉、雪とその養子の侍が無理心中をした場面に遭遇する。
 養子の侍は雪によって刺され、雪はその後、自分の喉を短刀で突いて、自害していたが、養子の侍は雪に何かを書き残していた。
 それによると、京之介は落海の敷地のどこかに生きているらしい。
 京之介の行方を突き止めようと、幻四郎は探りを入れるのだが…」
 最近のマンガには絶対にありませんが、半世紀前には「ライ病(ハンセン氏病)」を扱ったマンガが幾つかあります。(注1)
 不勉強なため、ハンセン氏病というものがどのようなものかよくは知りませんが、それでも差別的に描かれていることは明白です。
 本来はこういう画像は封印されるべきなのでしょうが、ここまでゲテゲテしいと、ちょっぴり心惹かれてしまうかも…。

 う〜ん…「差別はダメ!! ゼッタイ!!」と叫ばずにはいられない…。
 ちなみに、タイトル表紙の「眉間に蠅」のイラストを見ると、アメリカ合衆国ではダメ映画として有名な「トロルU」(「Troll2」)(注2)を思い出します。

・山口勇幸「血染の手」
「江戸時代。
 町民の誰からも慕われる浪人の月丸。
 実は、彼は幻影城の城主の若殿であった。  十年前、武家社会の因習に嫌気がさした月丸は、城を飛び出し、町民の中で、貧しくも正しく暮らす道を選んでいたのであった。
 しかし、幻影城の城主が危篤に陥り、嫡男である月丸を探していることを月丸は知り、幻影城に戻ることにする。
 あることから月丸と同居していた、浪人の尾原は、月丸と入れ替わるべく、月丸の右腕のアザと同じ刺青を入れ、幻影城の案内をすると称して、月丸を山奥深くに誘い込む。
 そこで尾原は月丸に斬りつけ、月丸は川に転落、結局、惨死する。
 月丸の怨霊に付きまとわれながら、尾原は幻影城に向かうが、若殿であることを証明するためには宝刀が必要であった。
 尾原は宝刀を取りに、月丸を殺した山を再び訪れるが…」

・注1
 例えば、以下の作品。
 いばら美喜「刀の錆」(貸本/東京トップ)
 吉田松美「黒い館」(貸本/ひばり書房/「オール怪談・54」収録)

・注2
 映画は未見ですので、詳しいことはわかりません。
 が、「おでこに蠅が止まった状態でシャウト」は有名なシーンらしく、YouTubeで観ることができます。
 ただ、わざわざ探して、観る程のものでないことをあらかじめ断っておきます。

・備考
 糸綴じあり。カバー痛み。

2016年3月18日 ページ作成・執筆

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