「怪談特集L」(発行年月日不明/150円)



 収録作品

・沢田竜治「顔」
「女性の顔を美しくすることに憑かれた医師の玄庵。とある侍の娘を手術の失敗により醜くしたために、殺されてしまう。が、その妄執により幽霊となり、通りすがりの女性の顔の皮をはぎ、醜くなり、気の狂った娘のもとに向かうのであった…。」  よくある『顔のない眼』パターンですが、邪魔をする娘の父親や同心、岡引きを片端から顔の皮を剥いで殺しまくる、グロさがなかなか心地よいです。

・中井康弘「甘言殺」
「若い侍の賢次郎は剣術がさっぱりダメで、道場では皆から笑いもの。木陰で泣いているところを通りがかりの百姓に嘲笑され、斬り殺す。その夜、あまりの屈辱に崖に立ち、死を考える賢次郎の背後に、年老いた道師が立ち、賢次郎が日本一の剣客になる相をしていると言う。半信半疑ながらも、賢次郎は道師の言うことに従い、まず、道場でいつも賢次郎をバカにしていた兄弟子を倒すことができたのだが…」

・山口勇幸「鏡」
「主人公の石田弾正は、貧乏な浪人で、長屋暮らし。ふと壁に開いた穴から、隣人の佐久間が三十両を持っているのを目にする。佐久間は家宝の鏡を泣く泣く手放して、この金をつくったと言う。その金に目が眩んだ弾正は、雪の日に、佐久間を斬殺、建てかけの家の壁に佐久間の死体を埋め込む。佐久間から奪った金で、弾正は仕官することができ、ある日、祝宴に誘われる。その飲み屋には、佐久間が売ったという家宝の鏡が掛かっていた。そして、その鏡の中に、死んだ佐久間の姿が…弾正は鏡を外して、投げ捨てるが、その鏡のかかっていた壁は、弾正が佐久間の死体を埋めた壁だった…。」
 実験的な作品です。
 話は徹底して、石井弾正の視線で描かれます。映画で言うところの、「カメラ・アイ」です。
 ただ、作品として成功しているとは決して言えません。描写のほとんどが主人公の目に映る事物や風景だけですので、絵がスカスカ。こう言っては何ですが、手抜きをしている印象が拭えません。
 これ以降、山口勇幸先生の作品を(私は)確認できておりません。推測ですが、この頃になると、精も根も尽きちゃっていたのではないのでしょうか。そのことを考慮に入れますと、最後の最後まで、一応は、とんがり続けてきたように思います。だからこそ、私は山口勇幸先生の作品が愛しくて、たまらないのです。

平成26年4月28日 執筆・ページ作成

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