「怪談特集M」(150円)



 収録作品

・沢田龍治「ドクロ殺法」
「半面ドクロの侍が二年ぶりに町に戻って来る。
 本名は机源三郎という武士であったが、ライ病で顔の右半分が腐り、骨が露出してしまい、町から姿を消していたのである。
 ドクロ侍は、父親の仇討ちに来た男を返り討ちにした後、丹波兄弟を次々と斬殺していく。
 丹波兄弟は、嫌われ者の浪人で、町人を脅して、金を巻き上げていた。
 ドクロ侍の思惑は…?
 そして、彼を影で操る者とは…?」

・船野竜児「怪蝋」
「八丁堀の同心、疾風一平太と子分の吉松は、釣りの最中、偶然に、死人から小包を手に入れる。
 包みの中には、太い西洋蝋燭が入っており、それを燃やすと、中から人の腕が現れる。
 一平太は、捕物小町と言われるお喜久と、蝋燭の謎をどちらが先に解くか、腕比べをする。
 一平太の方は、蝋燭屋にこの蝋燭を飾らせて、網を張る。
 また、蝋燭に丸松屋の名があったが、これは、昔、何らかの事情でお取り潰しになった、幕府商人であった。
 一方のお喜久は、刺客に襲われるも、難を逃れ、囚われた吉松を救うために、丸松屋に小間使いとして潜り込んでいた…」



・巌太郎「不知火ヶ原」
「晩秋の暮れ、奥州路。
 雨の中、一人の侍が、人家を求めて、広野をさまよう。
 落ち武者の亡霊の集団に遭遇した後、彼は、斉藤家衰亡の曲の音を耳にする。
 その曲を吹いていたのは、美しい娘、縫であった。
 侍が声をかけると、縫は我に返った様子で、気を失う。
 そこへ、家人が彼女を探しに来て、侍は藤間家の屋敷に泊まることとなる。
 藤間家の主人は侍に、藤間家と斉藤家にまつわる因縁を語る。
 今から百年前、関ヶ原の合戦の後、豊臣側の斉藤家の生き残り、斉藤宗利は、ここ、不知火ヶ原まで逃げ延びる。
 そこで、宗利は、藤間家の先祖、美乃と出会い、匿われるが、徳川につく父親の知る所となる。
 ある夜、宗利は多数の兵に奇襲され、美乃を恨みながら、不知火ヶ原にて自害。
 そして、百年も前の執念が、藤間家の末裔の縫に憑りついていた…」
 巌太郎先生の作品はどれも味わいにあふれて、素晴らしいです。
 ささくれだった描線が「不穏」という言葉をどうにもこうにも連想させ、一触即発な顔つきの登場人物達がその言葉に油を注ぎます。
 この作品は、どちらかと言うと大人しめの内容で、あまりテンパっておりませんが、その分、読みやすいと思います。

・備考
 カバー、一部を除いて欠。鉄釘にて綴じ。前後の見開き、破れあり。

2018年10月16日 ページ作成・執筆

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