「怪談特集 鬼B」(150円)
収録作品
・いなば哲「蛇執」
「鳥井育馬は、御前試合で敗れ、失意のどん底にあった。
城からの帰り道、通りすがりの娘といざこざを起こし、鬱憤が溜まっていたこともあり、衝動的に娘を斬殺。
娘は「しず」に仇を討つよう言い残すが、その「しず」とは風呂敷包みの中の蛇であった。
殺害現場は誰にも見られず、育馬は屋敷へと逃げ帰ると、屋敷には、新しく女中が来ている。
その娘の名は「静」といい、先程、殺害した娘にそっくりであった。
育馬は静が蛇の化身ではないかと疑うのだが…」
タイトルから「蛇女もの」とわかりますが、この作品に出てくる蛇女は楳図かずお先生の影響下にあるものではありません。
恐らく、江戸時代の妖怪画の流れを汲んでいるものと思われます。(ちゃんと確証を取ってないのが心苦しいのですが…。)
でも、今から見たら、いなば哲先生の蛇女の方が新鮮に感じるのは、私だけでしょうかね?
・岩井しげお「呂没人(ろぼっと)」
「司源左衛門の一子、呂没人と名乗る侍が、父親の仇を次々と討っていく。
だが、司源左衛門の息子は、生来病弱で、武士を嫌い、十年前に修験道に入ったはずであった。
呂没人の正体とは…?」
まあ、タイトルを見れば、オチはまあまあ見当ついちゃうと思います。
ただ、何故、呂没人が傘をさしているのか、説明がないのが、ひっかかります。
・巌太郎「怪談 霊剣」
「面山市之介は、木津丹波の名刀欲しさに、深夜、親友の神村主膳の屋敷に忍び込む。
だが、主膳に気付かれ、彼と妹の利絵を斬殺。
主膳と仲のよかったこともあり、面山に疑いはかからず、事件は迷宮入りとなる。
しかし、主膳と利絵の怨霊が彼に執拗に付きまとい、苦しめる。
ある日、城からの帰り道、気が付くと、面山は神村主膳の屋敷に来ていた。
中に入ってみると、主膳そっくりの人物がいて…」
この作品を読んで、思った事は、巌太郎先生は「主人公がテンパる描写」にかけては(当時の作家の中で)右が出る者がない、ということ。
錯乱と紙一重のテンパり描写は非常に味があります。
・沢田竜治「幽鬼」
ストーリーはほぼ、ジェイコブス「猿の手」なので、粗筋紹介は割愛。
何故か、願い事が三つから二つに変更され、「起承転結」の「転」がすっとんでおります。
改悪と言っていいかと思います。
・曽根しげじ「死神に憑れた男」
「小泉鉄太郎は、居合術の見世物で日銭を稼ぐ若者。
ある日、仕事を終え、帰宅しようとすると、彼の後を一人の娘が付いて来る。
彼女の正体は、死神であり、彼を午前零時にあの世に連れて行こうとしていた。
死神を追い払うことはどうしてもできず、彼は、日本一の剣士になるから、数年の猶予を乞う。
だが、その願いのために、彼の恋人のさくらが、彼の代わりに、死神に連れ去られそうになる…」
・備考
カバー欠。糸綴じあり。切れ、裂け、小欠損、汚れ、シミ、非常に多し。pp39・40、pp55・56、コマにかかる欠損。前後の袖に紙テープで補強。後ろの遊び紙に貸本店のスタンプ押印。
2018年10月14日 ページ作成・執筆