「怪談特集 鬼D」(150円)



 収録作品

・岩井しげお「蛞蝓(なめくぢ)」
「ある夜、新吾という忍者が、高山の鬼代官、浦野刑部を暗殺すべく、寝所に忍び込む。
 しかし、悪賢い刑部に裏をかかれ、暗殺は失敗、捕らえられてしまう。
 刑部は、忍者を針金入りの縄できっちり締め上げ、深い穴底へと落とす。
 竪穴は底は十畳敷程度、そして、垂直の壁が九十メートル。
 更に、幾つもの朽ち果てた刺客の死体が転がり、その腐肉を餌とする蛞蝓が大量に這っていた。
 彼は、蛞蝓を食べながら、必死になって脱出の方法を探る。
 いつしか彼は蛞蝓になることを願うようになり…」

・「奇談・怪談 海坊主の子供」(文章)

・いなば哲「墓穴」
「江戸を少し離れた、黄昏の街道筋。
 敬助と大五郎という、二人の浪人が、江戸から来た飛脚を待ち伏せて、斬殺する。
 二人の目当ては、飛脚の運ぶ金であったが、金の代わりに、水野河内守という旗本の書状を発見する。
 その書状には、駿河の国の藤林太左ヱ門に、三男の京之助を養子にくれと書かれてあった。
 それを読み、大五郎は、京之助に化けて、水野家の後継ぎに納まっては、と思いつく。
 早速、敬助を京之助、大五郎は京之助のお供として水野家を訪れると、計画はとんとん拍子に進む。
 しかも、河内守の娘、美雪はなかなかの別嬪さん。
 大五郎はことの発覚を防ぐために、河内守を殺すよう、敬助を促すが、敬助はこのまま、水野家を継ごうと考え始める。
 ある夕方、彼は通りで、殺した飛脚の亡霊を目にする。
 そのことを大五郎に告げると、大五郎の精神は徐々に不安定になっていき…」

・曽根しげじ「死霊の慕情」
 多少のアレンジはあるものの、筋は「牡丹燈籠」ですので、粗筋は割愛いたします。
 それよりも、気になるのは、小島剛夕先生の影響。
 頑張って、似せてますが、気を抜くと、地が出てしまうのが何とも…。
(とは言え、もともとの絵も決して下手ではなく、味があります。個人的に、かなり好きな絵です。)



・巌太郎「黒い死影」
「婚礼を間近に控えた侍、仏生寺幾馬(ぶっしょうじ・いくま)。
 彼の最大の心配事は、三年前に打ち首にした、女中の雪の亡霊にいまだ悩まされていることであった。
 ある夜、友人宅からの帰り道、彼は、雪の兄に、敵討ちのため、斬りかかられる。
 幾馬は、今まで幽霊に悩まされたのは、雪の兄の仕業と考え、彼を返り討ちにする。
 だが、雪の命日の九月四日、屋敷に一人きりになった幾馬を、雪の怨霊が襲う…」
 後半の怒涛の「テンパり」描写はやはり独特。
 望月みさお先生に匹敵する迫力だと思います。

・沢田竜治「屍(しかばね)」
「亀井城の剣術指南の座を得るため、鬼頭は、二人の侍と共に、一心流の黒岩斎角を、屏風滝で襲う。
 その際、傷ついた斎角は、一人の侍と共に、谷底に落下。
 鬼頭はこれで自分達に疑いはかからないと帰宅するが、鬼頭家の使用人に、斎角が屋敷を訪れたと告げられる。
 二人が恐る恐る部屋に入ると、確かに、一部、濡れたところがある。
 すると、急に灯りが消え、鬼頭は、もう一人の侍を、斎角と見間違え、斬り殺してしまう。
 侍の死体を始末して後、斎角の死体が見つからなかったため、行方不明の扱いとなり、鬼頭は剣術指南の席に納まる。
 数年後、鬼頭は、無人となり、荒れ果てた、斎角の屋敷の前を通りかかる。
 回想に耽っていると、彼はいつしか、屋敷の中に入り込んでいた…」

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2020年5月4日 ページ作成・執筆

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