いなば哲「呪いの腕」(190円)
・「呪いの腕」
「雨の夜。
法音寺という寺に二人の男が宿を乞う。
二人の名は後藤と高橋で、強盗であった。
高橋は大人しく礼儀正しかったが、後藤は非常に粗暴で、和尚に酒を出すよう脅迫する。
そこで、和尚は引出しから箱を取り出すと、その中のものにお祈りをする。
すると、村人が急にやって来て、酒を置いていく。
後藤はこれが偶然とは思えず、和尚に箱の中のものを見せろと取り上げる。
和尚はこれは寺の宝物であり、五十両と引き換えに、返すよう頼む。
仕方なく、和尚は箱の中を見せるが、中には、干からびた人間の腕が入っていた。
これは三百年前に当寺を開いた住職が死ぬ間際に自分の腕を切り落とし、魂をその腕に移したものだと伝えられていた。
そして、この腕にお祈りをすれば、どのような願いでも叶えられるのであった。
いわれを聞き、高橋と後藤は早々に和尚のもとを退散する。
その夜更け、後藤はその腕を盗もうと、和尚の部屋に忍び込む。
だが、和尚が目を覚まし、後藤は和尚を斬殺。
腕を手に入れ、有頂天の後藤に、高橋は呪いが怖くないのかと警告するのだが…」
・「奇妙なる出来事」
「江戸での出世を夢見る男が二人(久村と田川)。
彼らは、通行手形を持ってないため、雪山を越えようとするが、途中、雪崩にあう。
運よく無事だったが、久村は雪の中から人間のような形をした氷を見つける。
久村が氷を引っ張っていくと、その先には山小屋があり、田川は先に着いていた。
氷を溶かすと、中から若い娘が現れる。
娘は、山小屋の主人の娘、ユキで、去年、行方不明になっていた。
主人が娘の死体をかき抱いて嘆いていると、娘の死体が甦る。
しかし、ユキは父親のことは全く覚えていなかった。
父親は、花嫁衣装や持参金を彼女の前に出して、ユキの記憶を取り戻そうとするが、徒労に終わる。
これに乗じて、田川は娘を江戸で嫁にしようと考え、彼女を連れ出すのだが…」
・備考
ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。目立つシミ、多し。p59、p91、p109、p113、鉛筆での書き込みあり。最終ページ(pp135・136)、下隅に多少記事にかかる欠損。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕と書き込みあり。
2022年11月1日 ページ作成・執筆