いなば哲「恐怖の館」(190円)
収録作品
・「恐怖の館」
「待望を持って、故郷から出てきたものの、手持ちの金を盗まれ、餓死寸前の侍、森田恵介。
次の部落に向かう途中、嵐に襲われたところを、草原の只中に一軒家を見つける。
どうにか玄関先まで辿り着くと、細面の女中が恵介を迎えに出る。
女中は恵介のことを待っていたと言い、屋敷の座敷に案内し、そこで恵介は飯をたらふく御馳走になる。
食後、人違いをされているようなので、こっそり退散すべく、恵介が屋敷をさまよっていると、誰かの会話を立ち聞きすることとなる。
話の内容は、神からお告げがあり、今日、門前で倒れている男を三日間食事を与えた後、その肉を食べると、若返るというものだった。
恵介は慌てるが、あと三日あり、その間、様子を見ることに決める。
その後、この屋敷の主人と面会することとなるが、年老いた主人は寝たきりで、もうさほど長くはない様子。
主人は、恵介に娘のしのぶをもらってくれるよう頼む。
そうすれば、この家屋敷にある財産が、恵介のものになるのだと言う。
しのぶは顔を伏せたままで見せようとせず、恵介は考えさせてほしいと返事を保留する。
翌日、屋敷をそれとなく偵察するが、どこにも財産なんかありそうにない。
また、主人の娘、しのぶも顔半分にアザができた醜い娘であった。
そして、三日が過ぎ…」
面白いんですが、ラストがイマイチかも…。
・「アシスタント」
「怪奇派画家、前田金穂とその唯一の弟子、琴。
琴は女性であったが、男性と偽り、無理を言って、金穂の弟子となったのだった。
病気で余命幾ばくもない金穂は琴に懺悔話をする。
十五年前頃、絵に行き詰っていた金穂は、鮮やかな生血を使って絵を描く考えに憑りつかれる。
ある日、金穂は往来で、妻が病気で行き倒れて、困る夫と幼い娘に出会う。
薬をあげるからと夫を屋敷におびき寄せ、拘束。
生きたまま、身体じゅうを少しずつ切り刻んで得た血を使って、不動明王の絵を描いたのであった。
その話を聞いた琴は…」
ハーシェル・ゴードン・ルイス「カラー・ミー・ブラッド・レッド」(1965年)よりも(多分)早く「血を絵具がわり」にしております。
あの映画と較べると、残酷描写は大人しいものですが、それでも、当時としてはかなり読者にはショッキングだったんでしょうね。
過激な描写に麻痺して、すっかり想像力が鈍麻してしまっている私には、(マンガに限らず、映画や小説も含めて)内容を想像力で膨らませていた時期が懐かしく思えます。
・「目」
「赤ん坊がいるのに、食事にも事欠く赤貧生活を送る、浪人の夫婦。
いたたまれずに、夫は外出するが、些細なことから、盲の旅女を斬り殺してしまう。
彼は女から金とかんざしを盗んで、家へ持ち帰るのだが…」
よくできたショート・ショートです。ただし、結末はかなり残酷です。
・備考
ビニールカバー貼りつき、また、それによる歪みあり。前後の遊び紙やカバー袖にセロテープの痕あり。後ろの遊び紙に貸出票貼り付け。シミや汚れ、目立つものはないものの多々あり。
2016年3月26日 ページ作成・執筆