いなば哲「おれは死神」(190円)



・「おれは死神」
「豊永家の人々は、長男である敏十郎とその妻のヨネ、次男の敏五郎、三男の敏三郎とその母、きぬ…の五人である。
 父親が亡くなり、長男の敏十郎が家を継ぐと、後妻であるきぬとその息子の敏三郎を、兄達はとことん冷遇する。
 病弱であるきぬは散々こき使われた果てに喀血、敏三郎が血相を変えて医者を呼びに行く途中、彼は奇妙な老人と会う。
 その老人は敏三郎に、母親の死に目に会いたければ、一刻も早く屋敷に戻るよう言う。
 その言葉通り、敏三郎が屋敷に駆け戻った直後に、母親は息を引き取ったのであった。
 母親が死んでも、厄介払いをしたぐらいにしか考えていない兄達に耐えかね、敏三郎は母親の死体とともに屋敷を出る。
 野辺に母親の死体を埋葬し、自分も死にたいと涙を流す、敏三郎の前に、先程の老人が現れる。
 老人は、人間の死を見通すことができ、世間的には「死神」と呼ばれている、と言う。
 敏三郎が、母親のもとに行きたいと訴えると、そのために兄達の屋敷に戻るよう命令される。
 仕方なく屋敷に戻ると、兄達は心を入れ替えたように情け深く、敏三郎に接する。
 しかし、それは策略で、油断した敏三郎は毒殺され、死体は庭の隅に埋められてしまう。
 そんな敏三郎を生き返らせたのが、死神と名乗る老人であった。
 打って変わって、死にたくなくなった敏三郎に、死神はある提案をする。
 それは、自分の後継者となって、復讐を果たすというものであった…」

・「猫が十匹」(原案/ふな・まさあき)
「ある屋敷に住む老婆とその孫娘。
 娘に原因不明のできものができ、それは全身に広がってしまう。
 悲嘆に暮れる孫娘を不憫に思い、老婆はひたすら神に祈る。
 熱心なお祈りの後、老婆は薬と称する赤い液体を持ち出してくる。
 それを娘の身体に塗り、残りを飲ませるのであった。
 老婆に言われるまま、その治療を十日続けるものの、できものはちっとも改善しない。
 不審に感じた娘が、老婆の部屋を覗くと、天井に猫がぶら下げられ、その滴る血がお椀に溜められていた。
 さて、薬の効き目の程は…?」

・備考
 状態悪し。ビニールカバー貼りつき、また、ビニールカバーに紙らしきものが貼りつき。糸綴じあり。小口研磨のため、サイズ一回り小さし。読み癖ひどし。全体的にシミあり。前後の遊び紙欠如。pp5〜8、下部にコマに大きくかかる欠損あり。

2016年3月5日 ページ作成・執筆

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