いなば哲「無責任殺人事件」(170円)
収録作品
・「無責任殺人事件」
「植木人四郎(うえき・ひとしろう)は、十万両という親の遺産で、好きなように暮らせる結構な身分。
彼は、広い屋敷で、使用人の老人、不古田善助(ふごた・よしすけ)、女中のおゆき、そして、南蛮渡来の高価な猫、タマと暮らしていた。
ある日、彼の屋敷を、見知らぬ浪人が訪れる。
一の字進兵衛と名乗る浪人は、人四郎の親友だと言って、ずかずかと屋敷に入り込む。
だが、人四郎は彼に全く見覚えがなく、戸惑うばかり。
進兵衛は、おゆきに取り入り、我が物顔に振る舞うが、彼の目的は、蔵に眠る十万両であった。
人四郎は、進兵衛に脅され、蔵の鍵を渡すも、中には罠があり、進兵衛は罠にはまって、死亡。
その時、人四郎は、進兵衛とおゆきが兄妹で、彼女が兄の手引きをしていたことを知る。
人四郎は、おゆきが兄の仇を討とうとするのを察し、返り討ちにしようとするのだが…」
・「腕」(ふな・まさあき・ヒント)
「山中を移動中の侍の兄弟。
急な雷に襲われ、兄は、弟が止めるのも聞かずに、大木の下に行こうとする。
案の定、大木に雷が落ち、倒れた大木の枝が、弟の右腕を刺し貫く。
兄は負傷した弟を連れ、先を急ぐが、雷雨となる。
そんな時、兄弟は人家を見つけ、休ませてくれるよう頼む。
しかし、そこの家の主人は、妻を侍に殺されたことがあり、二人に対して邪険にする。
ただ、娘だけは親切にしてくれ、どうにか、物置小屋で休ませてもらえる。
だが、手当てらしいことは何もできず、弟の状態は悪化の一途をたどる。
弟の腕は変色し、このままでは切り取らねばならず、兄は神に祈る。
すると、神が現れ、弟を救うには、娘の腕を切り取り、それを食べさせることでしかないと告げる。
兄は、心を鬼にして、娘の腕を切りに行くのだが…」
故・植木等さんを恐らく、無断で主人公に据えた作品です。
最初は植木等である必要はないと思ってましたが、飄々とした態度とは裏腹に、腹黒で、目は笑ってない主人公に、実はぴったりはまっているかも…。
ストーリーはブラック・ユーモアの濃いもので、そこを植木等・似の主人公の人を食った雰囲気で中和してると思います。
ともかくも、かなり面白いです。
「腕」は読者の投稿を参考にして描かれた作品です。
かなりグロい話で、一応の筋は通ってますが、こじつけっぽくて、スッキリしない作品です。
・備考
カバー貼りつき、また、痛みや補修、裂けあり。ビニールカバー剥がし痕あり。糸綴じあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2021年5月28日 ページ作成・執筆