いなば哲「怪奇談@」(200円)

・「蟇女(がまおんな)」
「公金を強奪して、逃げる途中の、宮下鉄之進と人志の兄妹と後藤正蔵の三人組。
 彼らは山奥の荒れ果てた洋館に辿り着く。
 が、無人のはずの洋館には、頭巾で顔を隠した娘と、ガマのような風貌の下男が暮らしていた。
 ともかくも、彼らは館で一夜を過ごすことになるが、どうも娘と下男の二人は得体が知れない。
 三人が娘をこっそり窺い見ると、娘はガマのようにできものが顔一面にでき、ミミズを手づかみで食べていた。
 気味悪く思いながらも、こちらは大の男が三人と、休むことにする。
 しかし、元来気の弱い宮下人志が取り乱し、落ち着くまで仕方なく縛り上げる。
 人志が気絶した頃合いを見て、残りの二人も眠りに就くが、宮下鉄之進が目を覚ました時、人志の胸には短刀が突き刺さっていた。
 誰の仕業なのであろうか…?」」
 この作品、いなば哲先生にしては珍しい、お色気描写があります。(画像を参照のこと)
 今現在からしたら、どうってことないのでしょうが、控えめさとサービス精神の狭間に位置する「ほんわかエロス」(と勝手に命名)、実に味わい深いです。

・「地蔵娘」
「ある商店に夜中に押し入った、二人の強盗。
 店の主人とその妻は斬殺、小さな娘は外に逃げ出す。
 しかし、強盗に追いつかれ、お地蔵さまに助けを求めて、縋り付いたところを斬り殺されてしまうのだった。
 五年後、強盗のうちの一人は、奪った金を元手にして、高い身分に登っていた。
 その男の前に、もう一人の強盗が現れるが、彼は芽が出ず、いまだ浪人暮らし。
 浪人の男に金をせびられ、出世した男は彼を誘き出して殺害するが、その場所は、過去に娘を殺した場所であった…」
 「血しぶき地蔵」(「鬼C 日本怪談特集」収録)のリメイクであります。
 また、結末が変更されております。

・「蜘蛛女」
「三田家の土蔵に棲みついている、一匹の蜘蛛。
 蜘蛛は三田家の一人息子、明之助に恋をしていた。
 蜘蛛の願いが通じたのか、蜘蛛は美しい娘の姿となる。
 明之助と出会った蜘蛛は糸と名乗り、明之助の側に置いてくれるよう願う。
 明之助は糸の美しさに打たれ、両親に糸を家においてくれるよう頼むが、両親は頑として聞き入れない。
 自分のことで明之助が苦しむ様を見て、糸は再び蜘蛛へと姿を戻す。
 が、糸のことが忘れられない明之助は、糸を探し求めて、憔悴していく。
 これを見た両親は、ひとまず糸を屋敷に引き取り、様子を見ることに決め、明之助にその話をする。
 同じ話を聞いた蜘蛛は、糸として再び明之助の前に姿を現すのだが…」
 いなば哲「怪談夜泣き傘」(貸本/文洋社)に収録された作品のリメイクであります。
 登場人物の名前等、一部違ってはおりますが、ほぼオリジナルに忠実であります。
 あえて比較すると、こちらの絵の方がスッキリしていて、個人的にはこちらの方がいいと思います。
 とりあえずは、蜘蛛女の「スパイダー・ベイビー」振りを画像で味わってくださいませ。


・備考
 状態悪し。ビニールカバー貼りつき、また、一度ビニールカバーを剥がしたらしく、カバーに痛み。糸綴じあり。小口研磨のため、サイズ一回り小さし。前後の遊び紙欠如。p1、鉛筆による落書きあり。pp20・21、ご飯粒か何かが挟まってできた剥げあり。pp135・136(読者ページ)、穴が二か所あり。

2016年3月9日 ページ作成・執筆
2020年5月5日 加筆訂正

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