いなば哲「死十郎異変」(170円)



・「死十郎異変」
「川に浮かぶ、若い侍の水死体。
 彼の魂は身体から脱け出し、もとの場所に戻ろうとする。
 彼の名は死十郎といい、生前は、浪人の身の故、傘張りで糊口をしのいでいた。
 ある日、彼は、お美代という女性が、チンピラ侍三人にかどわかされようとしている場面に遭遇する。
 娘を解放させる代わりに、死十郎は屈辱的な要求に応じるが、チンピラ侍共はつけ上がるばかり。
 怒り心頭に達した死十郎は、剣技でチンピラ侍共を追っ払う。
 お礼にとお美代は死十郎を彼女の家、浪花屋へと案内する。
 が、お美代の父は死十郎を不逞浪人と見下し、いたたまれずに死十郎は屋敷をこっそりと後にする。
 そこでチンピラ侍達からだまし討ちに合い、瀕死の重傷を負い、川に転落…というのが、彼の死の経緯であった。
 その頃、チンピラ侍達は、お美代をよこすよう、浪花屋に押しかけていた。
 お美代を強奪しようとする彼らの前に、死十郎の亡霊が立ち塞がる…」
 冒頭が、ビリー・ワイルダーの名画「サンセット大通り」のオープニング(水死体のモノローグ)そのまんまです。
 当時の漫画家さん達は一様に映画の熱心なファンが多いようですが、いなば哲先生、なかなか渋い映画を観ていますね。
 ちなみに、このマンガ、読後感はほろ苦いです。

・「その名は鬼」
「鬼が棲むと言われる鬼神峠。
 分け前を横領して、二人の盗賊仲間から追われる男がいた。
 男は、山の中の一軒家に姿を隠し、追手をまく。
 その一軒家には、盲目の老婆が一人住んでいて、大量の小判の詰まった壷を隠し持っていた。
 壺に目を付けた男が小屋を訪ねると、老婆は男を一人息子と勘違いする。
 これ幸いと男は老婆の息子の振りをして、壺を奪う機会を窺うのだが…」

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。糸綴じあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり、また、店名を書いた紙の貼り付けあり。

2016年3月7日 ページ作成・執筆

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