「日野日出志のGO HOME」(2019年10月10日初版第1刷発行)

 収録作品

・「GO HOME」
「第1話 家なき子」
 中学三年生の氏家町子は自分の家が大嫌い。
 勉強勉強とうるさい母親、趣味がビールとナイター鑑賞しかない下品な父親、ゲームオタクの弟…彼女は家に自分の居場所がないように感じる。
 ある日、彼女が帰宅すると、見たことのない女性が玄関から顔を出す。
 町子が表札を見ると「家田」になっていた。
 しかも、隣人も中学校の担任も彼女のことを知らず、警察に行くも、住民票には「氏家」という家は存在しない。
 町子は家出少女として扱われるが、児童相談所で彼女と同じ境遇の少女と出会う。
 二人は児童相談所から逃げ出すが…。
「第2話 メリークリスマス」
 クリスマスイブ。
 持家というサラリーマンの男性が家に向かっている。
 そして、彼の両手には特大のクリスマスケーキ。
 彼は半年前にマイホームを建てたばかりで、家には愛する妻と5歳の娘、そして、3歳の息子が彼の帰りを待っている。
 帰宅後、一家はクリスマスケーキを囲んで、パーティを始める。
 だが、持家は奇怪な幻覚に何度も襲われ…。
「第3話 手の平のお家」
 マミは母親がタチの悪い男と再婚して以来、二人から虐待を受けていた。
 彼女の唯一の慰めは、手の平サイズのおもちゃの家。
 彼女にとってこのおもちゃは「ほんとの家」で、ここに住んでいると想像することによってつらいことを忘れることができる。
 だが、ある日、母親がこのおもちゃの家を捨ててしまう。
 更に、その夜、母親が留守にする間に家出しないよう、マミは縄でぐるぐるに縛られる。
 ところが、マミは姿を消して…。
「第4話 幽霊屋敷」
 少女は我が家に向かって急ぐ。
 彼女は両親の離婚により、父親と弟のヒロシから引き離されるが、母親は彼女を置いて、男と逃げたのであった。
 だが、五年ぶりの我が家は廃墟と化していた。
 近所の主婦によると、三年前に父親は息子を置いて失踪し、男の子は餓死したという。
 そして、男の子の幽霊が出るために、この家は幽霊屋敷と呼ばれていた。
 少女は家の中に入り、弟の幽霊と再会するのだが…。
「第5話 血肉の家」
 大家一族は何十代も続いた旧家で、百年前に建てられた邸は広大であった。
 この一族には、家の者が死ぬと、血や肉や骨を家の一部に埋めこむしきたりがある。
 家の一番奥の部屋には、大家一族の創始者のミイラがご本尊として祀ってあった。
 そして、満月の夜には、一族の女はその血をとり、ミイラに飲ませていた。
 中学生の少女は、祖母の死をきっかけに、この家の呪縛から逃れる決心をするのだが…。
「第6話 異空間の部屋」
 あきらは学校でいじめにあい、引きこもりとなる。
 彼は食事以外は部屋でゲームをしていたが、パソコンを買ってもらってから、昼夜は逆転し、インターネットの世界にのめり込む。
 特にはまっていたのが「バーチャル・アイドル」で、そのうち、深夜に外出するようになる。
 母親は彼が「インターネット犯罪」や「ゲーム殺人」を犯しているのではないかと疑心暗鬼にとり憑かれるようになり…。
「第7話 ダンボールの家」
 煌びやかな都会の片隅にあるダンボール・ハウス。
 ここに住む浮浪者の男はもとは一流企業のエリート社員であった。
 彼は家庭を顧みずに仕事に励み、出世の階段を昇っていくが、それに反比例するように、家庭は崩壊していく。
 ある日、彼の会社が倒産し、彼はショックのあまり、家に引きこもるようになる。
 そして、ベッドに抜け殻を残し、彼は行方不明となるのだが…」
「第8話 となりの一家」
 新しい家に引っ越してきて、一年。
 家田一家(漫画家の父親、絵本作家の母親、中一の姉、小4の弟)は幸せであった。
 ある日、隣の敷地に勝家(夫婦と子供の姉弟)一家が引っ越してくる。
 と言っても、勝家一家の家はトレーラーハウスで、その日暮らしらしい。
 以来、この一家は家田家の生活にずかずかと入り込んでくる。
 しかも、気が付くと、姿を消しているのであった。
 神出鬼没な勝家家の正体は…?
「第9話 氷の家」
 少女の家は何もかも凍てついて冷え冷えとした家。
 無関心で無気力なサラリーマンの父親、自分の人生に虚しさを覚え、キッチンドリンカーとなった母親、高校を中退後、家に引きこもり、パソコンばかりをしている兄、一日中テレビに向かって独り言を言っている祖母…。
 引っ越してきた時は希望に満ち溢れていた家族がどうしてこのようなことになったのか、少女にはわからない。
 ある朝、少女が目覚めると、家の中は氷に覆われていた。
 床も壁も天井も家具も全て凍てついており、家族も皆凍死していた。
 電話が凍って助けを呼べないため、少女は外に出るのだが…。
「第10話 腐った家」
 金持家の豪邸。
 だが、その家は芯から腐っていた。
 汚職政治家の父親。
 虚飾にまみれた母親。
 コネで入った大学に行かず、一日中、家でテレビを見ながら、喰っちゃ寝をしている姉。
 家は今、急速に腐敗を始め…。
「第11話 猫の家」
 資産家の一人娘は両親の死後、屋敷に猫を百匹以上も飼い、「猫女」と呼ばれていた。
 彼女は子供の頃からいじめられ、友達もなく、猫しか信用していなかった。
 近所の奥様方から苦情が出るも、相手があまりに異常なので、どうしようもできない。
 猫女は猫に囲まれて、幸せだったが、ある日を境に、その姿を見なくなり…。

・「狂人時代」
「怪奇と恐怖にとりつかれた漫画家、もしくは、正義と真実の人「ウルトラ漫」を自称する、日野日出志先生。
 その日野先生が、自身の秘密を、そして、出生の秘密を赤裸々に語る…?!」

 「GO HOME」は「家」をテーマにした短編集です。
 バラエティに富んだ内容ですが、世相を反映してか、殺伐とした内容が多いです。
 個人的には、一族と「家」の奇怪な結びつきを描いた「血肉の家」がベストです。

2023年3月10・15日 ページ作成・執筆

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