犬木加奈子・空路・呪みちる「黄泉からの訪問者スペシャル」(2005年8月20日第1刷発行)

 収録作品

・犬木加奈子「影かくし」
「犬木加奈子先生ご自身の体験談や人から聞いた話を漫画化したもの。
〜影踏み〜
 犬木先生は小さい頃、野原で少女達をよく遊んでいた。
 ある日、少女達が川辺で遊んでいると、サバ子という少女の水面に映った影が魚に飲み込まれたように見える。
 日も暮れ、少女達は影踏みをしながら、帰路へ就くのだが、サバ子の影は薄くなっていて…。
〜青い制服の生徒〜
 季節外れの転校生、君ケ袋。
 彼はクラスには溶け込まず、常に何かに怯えている様子であった。
 そんなある日の晩、クラスメートの女子が、彼と同じ、青い制服を着ている女生徒から学校の場所を訪ねられる。
 彼女は女生徒を学校に案内するが、女生徒の姿は消えていた。
 しばらくして、今度は学校で、彼のいるクラスを訪ねる、青い制服の女生徒が現れるようになる…。
〜くしゃみの呪文〜
 沖縄が琉球と呼ばれていた頃の話。
 子供が産まれたお祝いに、父親は踊り子を探しに出る。
 だが、その日に限って、踊り子は皆、出払っていた。
 彼が途方に暮れた時、帰宅途中の、美しい娘を見かけ、彼は彼女を家へと半ば強引に連れ帰る。
 彼女のお陰で、座に華やかなものとなるが、戸の隙間から彼女を見ると、首だけしかなかった。
 慌てた父親は、夜明け前、彼女を帰らせ、その後をつけると、娘の向かったのは墓場で…」

・「犬木加奈子 スペシャル・トーク」〜幼い頃、影に対して抱いた不安のお話し。

・「呪みちる スペシャル・トーク/悪魔はいつでもそばにいる!」〜「ブラックデビル」に関する解説。

・「地獄をのぞく鏡」(「オール怪談」1999年・No14)
「勉強漬けの毎日をただただ受け入れる少女、佐野ふみ子。
 彼女はホロコーストの写真を見て衝撃を受けて以来、「この世の地獄」に関する本を手に入れようとするも叶わない。
 ある夜道で、奇妙な男が彼女に「地獄をのぞく鏡」を貸してくれる。
 その鏡は、地獄の風景を実況中継する鏡であった。
 彼女は鏡に夢中になり、日がな一日、地獄で罪人達が責め苦にあうのを見て飽きない。
 そんなある日、鏡の向こうから、彼女の亡くなった父親が話しかけてくる…」

・空路「霊視少年真央」
「真央は、幽霊を視ることのできる少年。
 彼と仲良しの少女、あやは母親のことで彼に助けを求める。
 彼女の母親は自殺未遂を起こし、精神的に非常に不安定であった。
 あやに懇願され、真央があやの部屋に向かうと、あやの母親には自殺者した老婆の霊が憑りついていた…」

・犬木加奈子「虫のおしらせ」
「町内一の長寿の老婆が死後、幽霊となって現れた話。
 それがきっかけで、よの子達は「虫の知らせ」に関する話をする。
 だが、次第に、彼女達の周囲はすでに死んだ人だらけで、一人一人と姿を消していく…」

・呪みちる「ブラックデビル」
「ゴミ捨て場から豪華な家具を持ち帰った夫婦。
 以来、家では、物のネジが緩むトラブルが頻発するようになる。
 ある夜、妻は、物のネジを外す、小さな悪魔達の姿を目にする…」

・空路「学校の怪談 教室」
「約束をすっぽかした珠美への罰に、杏奈達は立ち入り禁止の教室を一周するよう命ずる。
 だが、珠美が教室に入った直後、ドアが勝手に締まり、どうしても開かない。
 先生を呼ぶが、彼は、この教室は中から打ち付けてあると言って、取り合ってはくれない。
 実は、この教室は、受験の失敗による自殺者が出て以来、毎年、自殺者が出ているのであった。
 珠美は家には帰らず、翌日、校舎から飛び降り死体として発見される。
 取り乱した杏奈は、立ち入り禁止の教室に向かうのだが…」

・犬木加奈子「どこかにありそうなちょっと怖い話」(1992年「ホラーハウス」5月号)
「今度は、美術部に入部した花姿かたると熊子。
 入部早々、コンクールに出品する絵を描くこととなり、遅遅として進まない熊子はたった一人居残りする破目になる。
 熊子が参考になるような絵を探していると、古い絵の中から顔を塗り潰された肖像画が出てくる。
 これに顔だけ描けばいいと考えた熊子は、皆が下校してから、美術室に独りで絵を描く。
 だが、美術部の部員の間で、熊子の絵に描かれた人物が抜け出ているという噂が立つ。
 どうも美術部顧問の美原先生はこの絵について何か秘密を知っているらしいのだが…」

・呪みちる「いぬつげの男」
「数か月もの間、重度のストーカーに悩まされてきた弓子。
 ある夜、彼女が犬(ジークという名。う〜ん、ダイナミック)の散歩をしていると、公園のいぬつげの茂みから男の顔が彼女に語りかける。
 男の顔は、彼女とその家族が、殺して山中に埋めたストーカーの男が帰ってくると警告する。
 そして、自分は彼女の見方であり、ストーカーの男を始末してやると言うのだが…」

・空路「望々村夜話(ぼうぼうむらやわ)」
「南の森で見つかった老人は、望々村で暮らすこととなる。
 老人は何故自分がここにいるのかも知らないまま、ここの静かな生活に満足する。
 満月の夜、彼は村人全員が集う集会に参加させられる。
 木の祠の前で、彼は自分の過去を語ることを強いられる。
 そして、彼は、自分が唯一望んだものを思い出す…」

・「空路先生 スペシャル・トーク」〜作品同様に、人柄のにじみ出た作品解説です。

 コンビニ本と言えば、良くも悪くも寄せ集めたようなものが多いのですが、この本は、犬木加奈子先生、空路先生、呪みちる先生の三人に絞ったアンソロジーです。
 作品は、なかなかお目にかかれない、良質なものを選んでおり、更に、1ページだけではありますが、先生方の作品解説もあり、非常に充実した内容です。
 個人的には、作品があまり単行本化されていないベテラン、空路先生の作品が読めるのがありがたかったです。

・備考
 後ろ表紙と最終ページに折れあり。

2018年9月20日 ページ作成・執筆

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