飯島市朗「現代コミック読本選集 死のアルコール」(2022年8月14日初版発行)

 収録作品

・「猫は見ていた」(「現代コミック読本」1972年12月号掲載)
「貿易商の津山信行とその妻、恵美子。
 その家で働く家政婦の竹内音枝は、妻の座を狙い、恵美子を三階から転落死させる。
 計画通り、津山は彼女を妻に迎えるが、ある日、猫をつれた老婆がやって来る。
 老婆に頼まれ、音枝が乳房を見せていると、津山が帰宅し、音枝は変態扱いされ、家を追い出される。
 津山は老婆に見覚えがあり、何者か尋ねる。
 すると、老婆は、津山が捨て子で、津山家とは血がつながっていないことを指摘し、彼に復讐すると告げて去る。
 一方、音枝が公園のベンチで一人、しょんぼり座っていた。
 そこに、老婆の飼い猫が彼女のもとにやって来る。
 猫は、赤鉛筆で馬に印のついた競馬新聞と一万円札をくわえており、その馬に賭けると、大儲け。
 猫は次々とメモを持ってきて、音枝は億万長者となる。
 一方、津山は音枝が去って一か月後に事業に失敗して破産。
 彼女は津山の屋敷を購入するのだが…」

・「死のアルコール」(「現代コミック読本」1973年3月号掲載)
「クマ印玩具。
 企画部部長、手塚光輝は天才アイデアマンであったが、ただ一つ、欠点があった。
 その欠点とは、並外れたアルコール中毒だったのである。
 アルコールだけが彼の悩みを解決してくれるが、彼の最大の悩みはアルコール中毒ということで、このジレンマに彼は苦しめられる。
 彼の家族は、病身の妻と三つ子の男の子達で、彼らは傍若無人な父親に復讐を企てていた…」

・「儀式」(「現代コミック読本」1973年10月号掲載)
「2500年、地球人は、資源の尽きた地球を離れ、数百個の惑星の宇宙区に移住する。
 銀河宇宙歴300年、日本国惑星。
 正能家は平凡な一家(祖父母、両親と男児が二人)。
 ある日、祖父の徳治郎が午後八時に「儀式」を決行すると息子の音也にに告げる。
 徳治郎は家族に心構えを説き、音也に介錯を命ずる。
 午後八時、辞世の句を詠み、徳治郎はいざ切腹するのだが…」

・「欠落の時間」(「現代コミック読本」1973年12月号掲載)
「山森は会社への行き返りにバス停で、小学五年生ぐらいの少女と顔を合わせる。
 会釈程度の仲だったが、ある雪の降る晩、彼は少女に声をかける。
 彼は少女を家に連れて帰るが、ついつい成り行きで、彼女を抱く。
 以来、彼女は一日で一年分の成長をするようになり…」

・「怪奇薬」(「現代コミック読本」1975年12月号掲載)
「多沢は倉田病院に勤める医師。
 彼は、皮膚癌細胞を消滅させる薬の研究しか眼中になかった。
 彼は病院の事務長の娘と付き合っていたが、院長の娘に言い寄られると、あっさり鞍替え。
 そのために、事務長の娘に恨まれることとなる。
 ある日、偶然から、彼は奇妙な薬品を作り出す。
 それは皮膚に塗布すると、その部分が透明になり、一定時間が経つと、またもとに戻るのであった。
 彼はこの薬を利用して…」

・「不幸な祈り」(「現代コミック読本」1976年5月号掲載)
「池上遼三と理利子の結婚式。
 幸せの絶頂にいる二人であったが、狂人が理利子に襲いかかり、その右腕を切断する。
 片腕でありながら、彼女は一雄を出産し、子供に生きがいとする。
 だが、夫が半年間、アジア支社に出張になる間、彼女はカタワな自分に劣等感を抱く。
 そんな時、彼女は聖書の一句に救いを見出すのだが…」

・「殺しのラーゲ」(「現代コミック読本」1976年8月号増刊掲載)
「野田正也は、作曲家を目指し、東京のある音楽家の弟子となる。
 音楽家の家には妻の時子と、歌手志望の山田美代子が住んでいた。
 だが、彼の師匠は、食わせ物で、彼のアイデアの自分の作品に平気で盗用。
 しかも、ホモで、山田美代子は、本当は男だった時子に強姦され、堕胎を強要される。
 二人は夢をあきらめるが、奴らを許すわけにはいかない…」

 不勉強のため、「現代コミック」という雑誌がどんなものかよくわからないのですが、面妖なセンスの下に描かれている作品ばかりです。
 SF、ホラー、ファンタジー、ミステリーといろんな要素をぶち込み、できあがったものはアクの塊のような強烈な「ゲテモノ劇画」。
 ここまで来ると、「飯島市朗」先生そのものがジャンルになっている感さえあります。
 何ともコメントしがたい作品ばかりですが、個人的には「欠落の時間」が好きです。
 ラストの「あきらめるか」のコマ、非常に味わい深いです。

2023年1月13日/2月13・14日 ページ作成・執筆

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