白川まり奈「犬神屋敷」(2016年8月5日初版発行)

「避暑のため、犬神村を訪れる親子、漫画家の父に、さおりとチー子の姉妹。
 避暑地を探して、父親が新聞に広告を出したところ、ある人から50年も昔に廃村になった犬神村を教えてもらう。
 村は荒涼たる有様で、全くもって凄まじい雰囲気であったが、三人は高台にある屋敷に住むことにする。
 三人が家周りを探索していると、さおりは墓場に少年の姿を見る。
 しかし、墓場には誰もいた気配はなかった。
 その夜、子供の遊び声がするので、さおりと父親がそちらへ向かうと、チー子が一人で遊んでいた。
 チー子は、かずおという少年と遊んでいたが、かずおはさおりと父親が嫌いなので行ってしまったと話す。
 翌日、またもや姿を消したチー子は、一人、墓場で遊んでいた。
 昨夜と同じく、チー子はかずおと遊んでいたと言うが、チー子の前には「犬部和夫」と刻まれた墓石があった。
 以来、かずおは現れなくなったが、一週間後の夜中、さおりは何者かの悲鳴や泣き声を耳にする。
 訝る、さおりの目の前に、血まみれの老人、頭に斧を叩き込まれた老婆、そして、かずおという少年を探し求める、血まみれの女性の幽霊が現れる。
 あまりの恐怖に気絶したさおりは、翌朝、父親に起こされ、事の次第を訴える。
 父親は、この村について知るために、隣町へ出かける。
 そして、犬神村の最後の生き残りである老人から、犬神村で起こった凄惨な事件とその呪いについて聞かされる…」

 高い前評判を裏切らない、素晴らしい発掘です。
 本音としてはもっと他に復刻すべき作品があるとは思いますが、まずは、存在しか知られていなかった未発表作品を読めるようにしていただいたことに、感謝の一言しかありません。
 また、これが一時的な盛り上がりで終わらないよう、白川まり奈先生の再評価が進むことを祈っております。
 そのためには、まずは代表的な作品だけでも容易に読めるようにすることが必要ではないでしょうか?
 まあ、怪奇マンガというジャンルは、マニアの間でだけ、アツ苦しく語られるものなのかもしれませんが、そういう枠に閉じ込めておくには、勿体ないように思います。
(とは言うものの、やはり、一般の方向けのマンガではありません…。でも、せめてマニア以外の怪奇マンガ・ファンにも気軽に読めるようにして欲しいものです。)

 最後に、このマンガのラスト、人によって意見が分かれるようですが、個人的には、いいと思います。
 こういうラストって「え〜ッ、何で〜?!」とあれこれムダに考えてしまい、結果、妙に頭の隅っこにこびりついてしまうのです。
(中身は凡庸なのに、あっけにとられる(もしくは、テキト〜過ぎる)ラストで、ムダに記憶に残っている作品が、皆様の頭の片隅にも幾つかありませんか?)
 あと、個人的には、p119の「曲がったスプーン」にちょっぴり時代を感じました。(注1)

・注1
 何故スプーンが曲がっているのか考察したところ、結局、よくわかりません。
 かずおの超能力がさおりの父親のもとまで達していたと解釈するのが妥当ですが、そしたら、何故復讐しなかったのか?という疑問が湧いてきます。
 多分、そこまでするには力が及ばず、スプーンを曲げるのが限度であったということなのかもしれません。
 あくまでも憶測に過ぎないのでありまして、とりあえず、思うことはこういうことに脳ミソを使っているから、睡眠時間がどんどん削れていってしまうんだよ!!
 まあ、「深読みできる」作品と言えないこともないこともないこともないこともないことも…(無限ループ)。

2016年8月14日 ページ作成・執筆
2017年4月26日 加筆訂正・画像追加

アンソロジー/復刻作品・リストに戻る

メインページに戻る