白丸健二「百足部落/墓場が呼んでいる」(2019年9月21日発行)
収録作品
・「百足部落」(東京日の丸文庫)
「キャンプの最中に、山に迷い込んだ中川一郎少年。
彼は、へび捕りの老人の家に一晩、厄介になる。
家のそばにある井戸には、蓋に厳重な重しがしてあり、中から悲鳴が聞こえてくる。
老人は、井戸の中には「へびの大敵」が閉じ込めており、翌朝には焼き殺すつもりと話す。
夜、顔のおぼろげな少女が、一郎の夢枕に立ち、助けを乞う。
一郎は井戸の重しをのけると、中から現れたのは、巨大なムカデであった。
それは「むかでの親玉」で、老人は一郎に腹を立てて、彼を追い出す。
再び一郎が山をさまよっていると、山中で、一人の少女が料理をこしらえていた。
一郎も相伴にあずかることとなり、山ごぼうの汁を腹いっぱい食べる。
だが、山ごぼうと思って食べていたのは、実はムカデで、少女は、昨夜、助けた「むかでの親玉」であった。
少女は、一郎はもう「むかでの性質をもった人間」で、これが「わたしのご恩返し」と言って、ムカデに変化し、姿を消す。
ムカデを食べた一郎少年は、狂気の発作を起こした後、身近な人間に毒ムカデを投げつけて、騒動を巻き起こす。
その後、彼は山へと帰るが、彼に恨みを持つ老婆が、ならず者二人に彼を殺させようとする…」
・「墓場が呼んでいる」(東京日の丸文庫)
「植木正一郎という会社員が、針がとび出す双眼鏡で惨殺される事件が起きる。
高校生の松宮あきらは、その双眼鏡は自分のものだと気づき、父親を問い詰める。
警察に連絡しようとするあきらを、父親は乱暴に止めるが、その時、急に発作を起こす。
父親は苦しみにのたうちまわりながら、注射を打つと、ようやく平穏を取り戻す。
そして、「いずれはなす」から、あきらが春の甲子園で投手を務める今は、警察沙汰になるべきではないと説く。
あきらが甲子園に発った後、あきらの父親は、次の凶行に取り掛かる。
父親は、田村という男性を家の庭に作った墓の地下に閉じ込め、中に水を注ぎこんで、溺死させる。
試合に負け、あきらが戻って来てから、数日後、彼は、墓場の中から幽霊が現れる夢を見る。
その夜から、高熱を出し、寝込んだあきらを、彼のクラスメート、黒河内妙子という娘が見舞いに来る。
あきらは彼女に今までのことを話すが、実は、彼女の父親は、あきらの父親の標的であった。
父親は彼女に「脳軸覚乱剤」を飲まし、頭をおかしくしてから、殺そうとするものの果たせない。
そこで、一度、家に連れて帰り、あきらに真実を明かして、彼女を殺させようとするのだが…。
あきらの父親が殺人を重ねる理由とは…?」
毎度毎度、目を瞠るような怪奇貸本マンガを復刻する「貸本奇談シリーズ」。
第七弾は、橋本将次先生の東京日の丸文庫で「現代劇の執筆をするときの名義」(國澤博司氏)である白丸健二の二作品です。
両作品とも、なかなかのプレミア価格で、両方、手に入れようと思ったら、軽く十万円は越すのではないでしょうか?
それが、四千円ぐらいで読めるのであれば、怪奇マンガに興味のある人には入手して損はないと思います。
ただ、早速、稀少本になってしまったようですので、気になって仕方のない人は、キクタヒロシ氏の「昭和のヤバい漫画」に「百足部落」についての詳しい記述がありますので、どうぞ。
なお、付録ペーパーに、辻中雄二郎氏と國澤博司氏の解説が掲載されております。
2020年2月21日 ページ作成・執筆