渡辺美千太郎「赤太郎奇談/地獄の絵師」(2020年8月15日発行)

 収録作品

・「赤太郎奇談」(東邦漫画出版社)
「昭和三十五年(1960年)。
 東京A区の郊外で、夜帰りの女性が襲われ、血を吸われるという事件が三件立て続けに起こる。
 被害者によると、犯人は幼児であった。
 中条富夫はこの噂について調べるため、その郊外にある「吸血館」に部屋を借りる。
 この荒れ家には、赤太郎と言う名の奇怪な幼児とその母親が住んでいた。
 想像のつく通り、二人は吸血鬼で、その夜、富夫はその毒牙にかかる。
 彼は完全に吸血鬼になる前に、墓地に向かい、棺の中の母親を殺害。
 だが、赤太郎に逆襲され、以来、操られる身となる。
 赤太郎は、富夫の妹の春子を殺し、吸血鬼になった春子は隣家の娘、町子を襲う。
 富夫の友人である山本三郎は、町子の行方を追って、吸血館に行く。
 そこで、彼は、赤太郎の父親によって、地下室に監禁される。
 赤太郎の父親は「原爆で血液細胞を破壊された」息子を救うため、血液の研究に励んでいた…」

・「地獄の絵師」(「白虎」(東邦漫画出版社)収録)
「江戸で名人と謳われる絵師、歌川鬼斎。
 彼は将軍家への地獄絵図を描き上げるが、殿様に「死人の魂が描けて」ないと指摘される。
 鬼斎は絵をビリビリに引き裂き、地獄絵を描きなおすことを決意。
 そのためには、「死人の魂」を知らねばならず、それにとり憑かれた彼は墓荒らしまでしてしまう。
 墓荒らしは重罪で、軽くて遠島、重ければ死罪であった。
 娘のお糸は父親をかばい、死罪の判決を受ける。
 娘が磔にされる日…」

 キクタヒロシ氏によって広く知られるようになった大珍作「赤太郎奇談」、奇跡の復刻です!!(何度も繰り返しておりますが、そうとしか言いようがありません。)
 確かに、「おトラさん」は圧倒的なインパクトで、読後には「おトラさん」しか印象に残らないのは本当に凄い…。
 「百聞は一見にしかず」ですので、興味のある方は今のうちに入手しておいた方がいいです。(オリジナル本はメガ・レアです。)
 併録の「地獄の絵師」は芥川龍之介「地獄変」のような話です。
 作品のラストに「天明年間発行の「奇談集」に載っている話」と書かれておりますが、実際の所は不明です。
(「地獄変」の元ネタは「宇治拾遺物語」の中の一編とのことです。)

 なお、付録ペーパーには、この作品の復刻に尽力されたキクタヒロシ氏による解説が掲載されております。

2022年9月12日 ページ作成・執筆

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