好美のぼる「少女一寸法師/なめくじ少女」(2023年1月1日発行)

 収録作品

・「少女一寸法師」(東京漫画出版/1967年2月頃)
「晩冬、信州の山深い里。
 タネとナエの姉妹は両親を亡くし、孤児となる。
 しかも、姉のタネは身体が徐々に縮んでいくという奇病にかかっていた。
 叔父・叔母達は誰が姉妹の面倒を見るかで、醜く言い争い、結局、くじ引きで決まる。
 タネは人の良い叔父のもとに、ナエは労働力が欲しい、年老いた叔父のもとにそれぞれ引き取られる。
 だが、引き裂かれた姉妹の運命は過酷なものであった。
 タネは叔母やその娘に「一寸法師」と罵られ、苛め抜かれる。
 一方のナエは強欲な老夫婦にこき使われ、息つく暇もない。
 水汲みに行かされた時、ナエが姉を慕って嘆くと、川の水面にタネの姿が写る。
 そして、姉妹をいじめた人々に罰が下されるのであった…」

・「なめくじ少女」(曙出版/1967年8月頃)
「朽ちかけた一軒家。
 そこに、くる美という、両親を亡くした少女が一人で住んでいた。
 少女のもとには毎夜、なめくじの化物が現れ、彼女の手足を奪って、なめくじにしようとする。
 逃げようとしても、なめくじの大群に連れ戻され、くる美は憔悴。
 やつれた彼女は、友人のサチ子に家に逃げ込む。
 サチ子と母親はくる美の言葉を信じ、家の庭にワラ小屋を用意し、くる美とサチ子はここにこもる。
 このワラ小屋にはナメクジの嫌う塩水を含ませてあった。
 サチ子の両親がくる美の家に下着を取りに行っている時、ワラ小屋を一人の老婆が訪れる。
 老婆はくる美の祖母で、彼女を引き取ろうとするが、どうも疑わしい。
 結局、くる美は老婆に引き取られ、自分の家に戻る。
 しかし、老婆の正体はなめくじの化物であった。
 危ういところを、くる美はサチ子の一家に救われる。
 くる美は、サチ子の一家の協力を得て、なめくじの化物に立ち向かうのだが…」

 キクタヒロシ氏の「昭和のヤバい漫画」で紹介された「少女一寸法師」と、タイトルだけでワクワクしてしまう「なめくじ少女」の復刻カップリングです。
 どちらも読みごたえはありますが、個人的には「なめくじ少女」の方が面白かったです。
 岩城理恵氏が解説で述べた「弱者が抗う熱い魂の物語」とは実に言い得て妙で、少女の「成長」物語として(一応の)筋が通っているので、読後感は意外と爽やかです。
 また、世知辛い「少女一寸法師」と違い、ヒロインを助けようと奮闘する家族の描写もまた心温まるものがあります。
 好美のぼる作品の「人情もの」はベタではありますが、人柄がにじみ出て、じんわり心に染み入ります。
 この復刻をきっかけに、そういう作品が更に発掘されるよう心より祈っております。

 あと、付属のペーパーには、まんだらけ渋谷店の高橋一成氏「好美作品におけるハッピーエンド」、まんだらけ札幌店の岩城理恵氏「叡智と情と勇気(と多量の塩)を武器に」が掲載されております。

2023年1月3・4日 ページ作成・執筆

アンソロジー/復刻作品・リストに戻る

メインページに戻る