水野流転「水野紀行 奇譚シリーズ@」(2020年11月23日初版発行)
収録作品
・「自転車奇譚」(大陸書房コミックルージュ1986年9月増刊ホラーハウス第1号)
「暗い夜道を歩く若い男女。
コンパの後、二人は待ち合わせて、彼のアパートに向かっていた。
アパートへの近道は灯りは少なく、人気もない道で、途中、放置自転車のスクラップの山があった。
男はかなり酔っ払っており、その中の一台に二人で乗って帰ろうとする。
だが、坂道を下っている時、急にブレーキがかかり、二人は投げ出される。
男は自転車に八つ当たりをした後、二人は歩き始めるが、二人の前に火の玉が現われ…」
・「ヘッドフォン・ステレオ奇譚」(大陸書房コミックルージュ1986年11月増刊ホラーハウス第2号)
「やすしは予備校生。
ある日、彼はアパートの近くで開催されたバザールで中古のヘッドフォン・ステレオを入手する。
これはラジオやカセットテープを聞けるだけでなく、録音もできるので、彼は勉強に利用するつもりであった。
だが、彼がヘッドフォンを付けて録音を聞くと、「おにいちゃん さみしそう マユ さみしいの お話しましょう」と女の子らしい声が聞こえてくる。
どの録音を聞いても同じ声が流れ、そのうち、彼は女の子と話すようになる。
はっきりと言ったわけではないものの、どうやら女の子は餓死したらしい。
彼は怖くなり、喫茶店に恋人のチカを呼び出し、ヘッドフォン・ステレオを聞いてもらう。
しかし、何も聞こえず、結局、彼の妄想ということとなるが、チカは何か引っかかるものを感じる。
彼女は喫茶店で彼の前の席にオカッパで五、六歳ぐらいの女の子の姿を見ていた。
彼女は女の子をどこかで見たような感じがしていたが、ある本に載っていたことを思い出し、調べると…。
このヘッドフォン・ステレオにまつわる曰くとは…?」
・堀内真理子「『ホラーハウス』創刊の頃」
水野流転先生が「水野紀行」名義で初期の「ホラーハウス」(大陸書房)に発表した作品を二作、復刻したものです。
ホラーではありますが、ファンタジックな雰囲気が濃く、不思議な味わいがあります。
個人的には、心霊ものの「ヘッドフォン・ステレオ奇譚」が好きで、タイトルにもなっているヘッドフォン・ステレオがちゃんとヒロインに襲いかかってくるのには感動しました。(若干、「ビデオドローム」入ってますか?)
また、水野流転先生のお知り合いの堀内真理子先生が当時のことを語るエッセイも非常に興味深いです。
大陸書房の「ホラーハウス」について語ったものは、犬木加奈子先生の「ホラー漫画の女王ができるまで」(ぶんか社)ぐらいしか私は知らないので、とても勉強になりました。
とりあえず、(今更のような気もしますが)「奇譚シリーズ」第二巻を是非ともお願いいたします。
2024年9月6・7日 ページ作成・執筆