北岡朋
「チボンカブリ@」(2022年5月26日第1刷発行)
「チボンカブリA」(2022年12月27日第1刷発行)
「チボンカブリB」(2023年9月28日第1刷発行)


 山に囲まれた小さな町、智峰冠町。
 ここでは昔、法の届かない独立地帯で、罪人を村人自らが私刑にかけていたという。
 その処刑場は今は土地神『チボンサマ』を祀る場所で、禁域とされていた。
 ここでは「やってはいけない事」があるらしいのだが…。

・「第1話」(単行本@/「漫画アクション」2021年12/7号)
「鈴坂佑(すずさか・たすく)は中学生。
 父親はアル中のDV野郎で、母親は彼が小さい時に家を出ていた。
 学校でも彼は孤立しており、唯一の心の拠り所はコンビニ店員の小夏さん。
 しかし、父親に弁当を奪われ、更に、小夏に恋人がいることを知った彼は父親に反抗。
 父親は彼をボコボコにして、死なしてしまう。
 父親は禁域に佑の死体を埋めようとするのだが…」

・「第2話」(単行本@/「漫画アクション」2021年12/21号?)
「禁忌が犯され、『チボンサマ』が黄泉返る。
 その姿は巨大なカラスの胴体に白い人面と幾つもの手足がついたものであった。(単行本@の表紙を参考のこと)
 また、黒い体の『サムライモドキ』(昔、私刑にされた罪人の怨霊)が日本刀を手に次々と町人を殺し始める。
 物陰に身を隠した佑はクラスメートの凪沢という少女と出会い…」

・「第3話」(単行本@/「漫画アクション」2022年1/4号)
「佑と凪沢は一緒に中学校へと向かう。
 途中、二人はサムライモドキの群れに襲われている男性を目にする。
 佑の機転によって男性を助けるが、彼は小夏の恋人の須和であった。
 須和は小夏の家に行くも、彼女の両親は殺され、彼女の行方はわからない。
 彼女は中学校へ避難しているかもしれず…」

・「第4話」(単行本@/「漫画アクション」2022年2/1号)
「佑たちの前に突如、現れたモンスター。
 それは巨大な犬(?)の胴体に三つの人間の頭(遊女・落武者・長髪の童?)がついていた。
 佑は果敢にもモンスターに日本刀で戦いを挑む。
 そこに軽トラに乗った男たちが助けに来る。
 彼らは烏露(うろ)神社の神官たちであった。
 神官の一人、三鼓はこの町は結界の中だと二人に説明する。
 彼らが閉じ込められた『血峰冠』とは…?」

・「第5話」(単行本@/「漫画アクション」2022年3/1号)
「烏露神社には町人たちが次々と避難してくる。
 その中には、佑のクラスメート、蛍田、小森、麻生の姿もあった。
 そして、本殿の奥の部屋では最高権力者である老婆が孫娘の和希にチボンサマを完全に鎮めるよう命じていた…」

・「第6話」(単行本@/「漫画アクション」2022年4/5号)
「軽トラはチボンサマに襲われ、佑・凪沢・三鼓の三人は灌木に身を潜める。
 とりあえずは難を逃れたようで、三人は「チボンサマ」の話をするが、その中に「チボンカブリの伝説」が出てくる。
 佑は自分がタブーを犯したことを知り、また、三鼓は佑がことの張本人であることに激情。
 そのせいで、彼らの居場所がチボンサマに気付かれてしまい…」

・「第7話」(単行本A/「漫画アクション」2022年5/3号)
「佑たちが危機にさらされている時、猟師の土岐と猟犬の錆が現れる。
 チボンサマは銃弾を受けても倒れず、それどころか、佑の腕のアザを見て「ヨカッタ〜」と笑いかける。
 チボンサマが立ち去った後、三鼓は佑に弓を向け…」

・「第8話」(単行本A/「漫画アクション」2022年6/7号)
「通りがかった軽トラに佑・凪沢・三鼓は助けられ、烏露神社に向かう。
 その頃、和希の命により、三人の神官が禁域を訪れていた。
 彼らの目的は祠の下に埋まっているものを掘り出して持ち帰ることだが…」

・「第9話」(単行本A/「漫画アクション」2022年7/5号)
「烏露神社で佑は和樹と会う。
 彼は今までの経緯を全て打ち明け、彼女に腕のアザを見せる。
 このアザは不思議なことに母親にもあった。
 一方、凪沢はクラスメートたちと再会する…」

・「第10話」(単行本A/「漫画アクション」2022年8/2号)
「猟師の土岐はサムライモドキの群れに追われるが、寺に滑り込んで何とか助かる。
 智峰冠町には烏露神社の他に三つの神社、三つの寺があり、烏露神社からの連絡で結界を張り、町人たちの避難所となっていた。
 土岐は化物退治にこれが利用できると考える。
 一方、和希は、佑を土蔵に閉じ込めた後、祖母に会いに行き…」

・「第11話」(単行本A/「漫画アクション」2022年9/6号)
「烏露神社の中で特に重要なものを保管している『陰蔵』。
 そこで和希と三鼓はチボンカブリ伝説に関する古文書を調べる。
 三鼓が見たチボンサマは古文書の絵とそっくりだが、伝承とは違う点もあった。
 その頃、佑は自分の両親について回想する。
 彼の父親は智峰冠出身で、ある町で母親と出会うが、母親には逃げられ、借金で首が回らなくなり、生まれ故郷の町に帰ってきた。
 そう思い返していると、彼の頭にある疑問が浮かび上がる…」

・「第12話」(単行本A/「漫画アクション」2022年10/4号)
「凪沢は佑がなかなか帰って来ないのを不審に思う。
 外に様子を見に行こうとするが、屈強な男たちが彼女を見張っていた。
 彼女は「嫌な予感」を募らせる。
 一方、和希は三鼓を禁域へ様子を見に行かせる。
 だが、あることに気付き、彼女は佑の閉じ込められている土蔵に行くが…」

・「第13話」(単行本A/「漫画アクション」2022年11/1号)
「和希の考え、それは佑を囮にして、チボンサマを呼び寄せることであった。
 そして、鎮守の森にチボンサマをお招きするための舞台を用意し、チボンサマを結界で足止めする。
 その目的とは…?
 また、佑とチボンサマの関係とは…?」

・「第14話」(単行本B/「漫画アクション」2022年12/6号)
「チボンサマが吐き出した女性。
 彼女の名は縫で、チボンカブリ伝説の裏側に係る存在であった。
 彼女と佑の関係は…?
 そして、鎮守の森で神を招く儀式が始まる…」

・「第15話」(単行本B/「漫画アクション」2023年1/3号)
「三鼓と二人の神官は禁域を訪れるも、結界が張られていて、入れば命はない。
 仕方なく、烏露神社に戻ろうとした時、彼らの前に、人の頭が三つついた獣の化け物が現れる。
 彼らは軽トラで逃げようとするが…」

・「第16話」(単行本B/「漫画アクション」2023年2/7号)
「和希の読みが当たり、チボンサマを結界の中に閉じ込めることに成功。
 和希はチボンサマと会話を試みるも、話が通じる相手ではない。
 また、佑はチボンサマに対し怒りを燃やすが、あまりにおぞましい事実を突きつけられ…」

・「第17話」(単行本B/「漫画アクション」2023年3/4号)
「和希は禁域に入れないことを知らされ、八方ふさがりになる。
 チボンサマを鎮めるには、禁域に埋められている依代が必要であった。
 しかも、それを知った男が命惜しさのあまり、佑を人質に取って、チボンサマに禁域の結界を解くよう脅迫する。
 それが更なる事態は悪化を招く…」

・「第18話」(単行本B/「漫画アクション」2023年4/4号)
「結界は破られ、チボンサマは自由になる。
 チボンサマが人を襲おうとした時、佑はチボンサマにとび乗り、空へと向かわせる。
 しかし、土岐に銃撃されたことでチボンサマは荒れ狂い、神社の結界を破壊。
 神社内にサムライモドキが大量に侵入し…」

・「第19話」(単行本B/「漫画アクション」2023年5/2号)
「凪沢は佑の後を追う。
 間一髪で彼女はチボンサマの上に飛び乗り、佑と再会する。
 チボンサマは神社や寺を襲うが、突如、その姿が変わる。
 覚醒の時が来たのであった…」

・「第20話」(単行本B/「漫画アクション」2023年6/6号)
「和希はオートバイで佑の後を追う。
 途中、彼女は禁域が破壊されるのを目にする。
 一方、チボンサマは智峰冠町から解き放たれ、この世の全てを支配しようとしていた。
 だが、その時、予想外のことが起きる…」

・「第21話」(単行本B/「漫画アクション」2023年7/4号)
「チボンサマから転落した佑と凪沢は幸いにも無事であった。
 その二人の前に小夏が現れる。
 彼女はショックで正気を失っていた。
 佑は小夏の様子にショックを受けるが、凪沢は彼女を助けるだけと諭す。
 その時、チボンサマが三人に襲いかかってきて…」

・「最終話」(単行本B/「漫画アクション」2023年8/1号)
「暗黒の中、佑は縫と対峙する。
 彼女は佑に身体を貸すよう命じるが、その目的とは…?
 佑はチボンサマを止めることができるのであろうか…?」

 「チボンカブリ」はモンスターパニックホラー(伝奇ホラーの要素もあり)の力作です。
 ストーリーはよく練られており、途中でダレることなく、ラストまで一気に突っ走ります。
 ただ、若干、説明不足なところがあるのが気になるところ。
(サムライモドキや三つの人間の頭の付いた獣の怪物はどういうモンスターなのか?和希、三鼓の経歴や関係は?猟師の土岐は何者なのか?佑と凪沢はあの高さから落ちて何故大丈夫なのか?…etc)
 まあ、そんな重箱の隅をつついたような疑問を差し引いても、十分面白い作品ですので、ホラー・ファンにはお勧めです。

2024年10月23・25・26日/11月6日 ページ作成・執筆

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