細野不二彦「ジャッジ@」(1990年1月16日第1刷発行)

 逢魔法一郎は冴えない会社員。
 だが、その正体は、「闇の六法全書」をよく修め、霊能を操りし古の一族の末裔であった。
 この世の法律で裁かれない悪がある時、「闇の司法官」たる彼は闇に潜む悪に裁きを下す…。

・「CODE.1」(「アクション・ブラザー」VOL.1)
「逢魔の会社で、使い込み事件が起きる。
 犯人は経理の山本敬子であった。
 その晩、逢魔のもとに、行方不明中の敬子から電話がある。
 それは恋人の村上隆一に「何もしゃべらない 証拠も残さない だから安心してほしい」という伝言であった。
 逢魔はその伝言を村上隆一に伝えるのだが…」

・「CODE.2」(「アクション・ブラザー」VOL.2)
「逢魔の親友である野村修介。
 彼は司法試験を現役で受かったエリートで、今は特捜検事として大企業ぐるみの土地ころがしを追っていた。
 まずは、地上げ担当の真神開発社長を逮捕し、これを突破口として、黒幕である国友不動産の嵯峨谷会長の捜査に持ち込もうとする。
 だが、悪辣な嵯峨谷は、証人を消すだけでなく、野村修介の婚約者にさえも魔手を伸ばし…」

・「CODE.3」(「アクション・ブラザー」VOL.3)
「不法就労しているフィリピン人女性を狙った連続殺人事件。
 ある夜、逢魔はエミリーという娘と出会い、彼女をアパートに送る。
 彼女はフィリピンから出稼ぎに来ており、クラブでダンサーとして働いていた。
 だが、そのクラブが入管の臨検を受け、逃げ出した彼女は逢魔のマンションにやって来る。
 そこで、逢魔は彼女に抱くよう迫られるが、彼は彼女に現金を渡して帰す。
 翌日、心配になった彼は彼女のアパートを訪ねる。
 しかし、彼が会ったのは、教会で扼殺された彼女の死体であった…」

・「CODE.4」(「アクション・ブラザー」VOL.4)
「東西大附属病院院長、袴田博士は癌研究の第一人者で、彼が論文を書いた抗癌剤、パスツーリンはシェアの半分を占めていた。
 岩瀬は、袴田と深い関係を持つS製薬のプロパー(薬を病院に売り込むセールスマン)であったが、妻が癌になったことから、パスツーリンの効能に疑問を抱き始める。
 彼は、袴田とはライバル関係にある増山博士を訪れ、相談に乗ったもらった後、妻を東西大附属病院から別の病院に移そうとする。
 だが、面子を重んじる袴田博士はそれを拒否、更に、もう岩瀬の妻の全身には癌が転移していた…」

・「CODE.5」(「アクション・ブラザー」VOL.5)
「恐山に隣接する山にある荒れ寺。
 そこで逢魔が浄めの行を行っている最中に、山門から悲鳴が聞こえる。
 住職と逢魔が駆けつけると、門前で老婆が出刃包丁を首に突き刺して、自殺していた。
 老婆は、恐山でも有名な「口寄せ(霊媒)」の清水家の出身で、逢魔の分家であった。
 その夜、老婆の死体を、息子の太一郎と孫の泰明が引き取りに来る。
 太一郎は、母が始めた「メシアのむら」という新興宗教団体を全国規模に押し上げ、信者から巻き上げた金で事業を展開し、巨利を得ていた。
 逢魔は「メシアのむら」を探りに行った際、建物の陰に、息絶え絶えの女子学生を発見する。
 彼女を病院に連れて行くと、薬物中毒であった。
 医者によると、「メシアのむら」では、勧誘の際に正体不明の薬物を与え、その後、合宿と称して監禁し、洗脳するという噂があるという。
 その病院に、太一郎から折檻を受けた泰明が運び込まれてくるのだが…」

・「CODE.6」(「アクション・ブラザー」VOL.6)
「環状署の石巻弘警部は、国家権力を笠に着て、飲み屋街ではただ酒を飲み、パトカーをタクシー代わり。
 しかも、仕事はできず、部下の手柄を奪うばかりの悪徳刑事であった。
 彼は連続強姦事件を担当していたが、第一発見者の青年を犯人に仕立て上げ、彼を追う。
 冤罪を着せられた青年は、暴走族の仲間だった宮原淳のアパートに逃げ込む。
 淳は、彼を逃がし、犯人逃亡幇助のために、石巻に署へ連行される。
 しかし、事情聴取の際、エキサイトした石巻は淳を撲殺。
 これは取り調べ中の自殺として片づけられるのだが…」

・「CODE.7」(「アクション・ブラザー」VOL.8)
「千歳生命の川俣常務。
 彼の前に、一人の男が現れる。
 男は「闇の弁護士」四文裕神(しもん・ひろみ)。
 四文は、川俣が「闇の司法官」に狙われていると告げる。
 二年前、川俣とライバルの川辺勝男は南米の支社に赴任した際、川辺は現地ゲリラのテロに巻き込まれ、死亡していた。
 だが、「闇の司法官」はそれを川俣による謀殺と考えているらしい。
 川俣は弁護を依頼し、二人はある雪山に登る。
 山中にテントを張り、四文は川俣に一週間、山辺の成仏を祈るよう言う。
 そして、テントの外では…?」

・「CODE.8」(「アクション・ブラザー」VOL.9)
「川俣行二は「十王裁判」にかけられることとなる。
 「十王裁判」とは、冥界にいる十人の王を現世に呼び出し、生者を裁かせるというものであった。
 裁判は、四文の働きにより、川俣に優位に進むように見えたのだが…」

・「CODE.9」(「アクション・ブラザー」VOL.10)
「ある夜、帰りの電車の窓の外に、逢魔は弱い霊波の少女を視る。
 少女は同じ車両の中年男性にまとわりついており、逢魔は男の後をつける。
 男は柳原徹という名で、「幸子ちゃん事件」の被害者の父親の知り合いであった。
 「幸子ちゃん事件」は三十年前、二宮幸子という七歳の女の子が殺された事件で、犯人とされた源田一は冤罪として、つい最近、無罪判決を勝ち取っていた。
 父親は悲嘆のあまり、電車にとび込み自殺をする。
 その葬式に柳原が出席すると…」

・「CODE.10」(「アクション・ブラザー」VOL.11)
「逢魔は社員旅行で訪れた温泉で、彼の出身地である鬼獄村の菅原道之と会う。
 二人は菅原の部屋で酒を飲みつつ語り合っていると、菅原は逢魔に「闇の司法官」として最後の仕事を手伝ってほしいと頼む。
 標的は、大門という不動産業者。
 三年前、本来なら危険区域に指定される土地が宅地として売り出され、崖崩れにより一家三人が死亡していた。
 逢魔と菅原は大門を乗せた車を追うが、大門には「闇の弁護士」四文がついていた…」

・「細野不二彦劇場 ―霊能者逢魔霊太郎の事件簿―」(「アクション・ブラザー」VOL.7)
「ある女性の部屋には地縛霊がいた。
 夜中、地縛霊はギターでヘヴィ・メタルをかき鳴らして、眠るどころの騒ぎでない。
 彼女は霊能者、逢魔霊太郎に相談するのだが…」

 細野不二彦先生による名作です。
 大ベテランだけあって、どのエピソードもバラエティに富んでおり、勧善懲悪型のストーリーのメリハリが効いていて、読みごたえはあります。
 また、ムロタニツネ象先生の「地獄くん」の系譜につながる作品で、裁きの方法は派手でシュールなものが多いのも、嬉しいところ。
 ただ、あくまで「司法官」であって、犯罪を未然に防ぐといったことはできないようなので、そこがモヤモヤ…。

2023年1月8日・2月5日 ページ作成・執筆

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