古泉智浩「ライフ・イズ・デッド」(2007年3月28日初版発行)

 今世紀初頭より全世界でアンデッド・ウィルスが蔓延する。
 ウィルスはアンデッド発症者からの噛みつきや性交渉などで感染。
 感染者は数週間から数か月の潜伏期間の後、初めは風邪に似た症状が出て、そのうち回復するも、次第に運動機能が衰え、死後完全なゾンビとなる。
 国は感染者をレベルで五段階にわけ、赤星逝雄はレベル3であった。
 彼は、ミュージシャン志望のニートの青年で、ヤリマン女とセックスして、アンデッド・ウィルスに感染する。
 残り僅かな青春の日々を彼は如何に過ごすのか…?

・「ACT.01 オレはゾンビ」
「逝雄がゾンビとなり、赤星家では悩みの種が尽きない。
 父親はいつか来る彼の死の備えを考えねばならず、また、アホ学生からの嫌がらせに神経を尖らせる。
 妹の消子(高校生)は、ゾンビ化しつつある兄を気遣い、一家の将来を考え、アイドルを夢見る。
 そして、逝雄はというと、彼にウィルスを移した張本人の茜から金を貸してと頼まれていた…」

・「ACT.02 親友」
「面井は逝雄の親友。
 彼は、エロ本を林に捨てに行った際に、ゾンビと間違われて中学生に石を投げつけられたり、消子に相手にされていないのに、関心を持たれていると勘違いをしたりと、まあ、そういう奴。
 ある日、彼は逝雄の部屋を訪れるが…」

・「ACT.03 父は銃を持つ」
「逝雄の父親はパチスロ店の主任。
 店にゾンビがやって来て、客が噛まれるトラブルが起きたりと、ストレスがたまることばかり。
 ある夜、彼が帰宅すると、以前、医者から話のあったブツが届いていた…」

・「ACT.04 謎の女ゾンビ」
「面井は先日、捨てたエロDVDを捜しに、林に入る。
 そこで遭遇したのは、若い女のゾンビであった。
 ゾンビ女の乳に感動し、彼は携帯電話で写真を撮りまくる。
 その頃、逝雄と消子が散歩をしていた。
 ふとしたことから、二人の方に女ゾンビがやって来て…」

・「ACT.05 セーフティ・ロック(首輪爆弾)」
「ある日、往診に来ている医師が赤星家を訪れる。
 彼が持ってきたのは、爆発装置の付いた首輪であった。
 今月よりレベル3以上の発症者は首輪の装着が義務付けられ、逝雄もそれをはめる。
 と言っても、何が変わるというわけでもなく、彼はRPGゲームをするのだが…」

・「ACT.06 もう人間じゃない」
「逝雄は三年前の夢を見る。
 彼は面井と共にバンドを組んで、オーディションに参加するも、落選し、面井を首にした後、バンドは空中分解したのであった。
 想いを寄せる看護婦にその頃の音源をあげたところ、好意的な批評を得て、彼は作曲を再開する。
 自分が死んでも曲は残ると考えたからであった。
 そんな時、面井が逝雄の部屋に遊びに来るが…」

・「ACT.07 アンデッド」
「面井が見せたAVのせいで、逝雄は一気にレベル4まで症状が悪化。
 このレベルになると、時折、アンデッド状態になり、家族は大パニック。
 父親は医師から施設や拘束衣など様々な提案を受けるが、父親の決断は…」

・「ACT.08 告白」
「数日後、面井が逝雄の見舞いに来る。
 逝雄は面井に看護婦の桜井への想いを打ち明ける。
 面井は告白するよう勧め、逝雄は桜井に告白のメールを送る。
 その後、面井はトイレに行くふりをして、消子の部屋に侵入。
 いろいろと匂いをかいでいた時、茜が逝雄を訪ねてきて…」

・「ACT.09 魂」
「消子の部屋では、面井が見つかり、大騒動。
 兄がなだめようとしたところ、消子に美少女コンクールの落選通知が届く。
 逝雄は自分の曲でインディーズ・デビューしようと励ますが、消子は彼の曲をボロカスにけなす。
 追い打ちをかけるように、逝雄に桜井から返信が…」

・「ACT.10 ゾンビの夜」
「遂に、アンデッド化した逝雄。
 母親は銃で撃とうとするも、やはり実の子、撃つことなどできはしない。
 皆がうろたえる中、父親はただ一人、単身で息子に立ち向かう…」
(「漫画アクション」2006年9月5日号〜2007年1月9日号)

・「あとがき」
・シナリオ版「ライフ・イズ・デッド」

 徐々にゾンビ化しながらも、残り少ない人生をグダグダと過ごす青年を描いた『青春ゾンビ残酷物語』マンガです。
 劇的な事件は大した起こらず、登場人物達は些細なことに一喜一憂しながら、「日常」を生きております。
 特に、主人公の友人の面井や高校生男子は緊迫感がまるっきりなく、ゾンビに遠くからいたずらしたり、ゾンビ女の乳を見て感動したりと、若い男という生き物がどれだけ愚かなのか的確に描写していて、感心しました。
 ただ、私はこの作品をコロナ・パニックを経た後で読んだので、イマイチ実感に欠け、感情移入はできませんでした。
 アンデッド・ウイルスがもし本当に存在していたら、こんなにのほほんとしていられるわけがないだろう、という思いが拭えないのです。
 未知のウイルスにより全世界が未曽有の混乱に陥った「現実」が残した爪痕はなかなかに深いです…。

2023年2月11日/3月10・11日 ページ作成・執筆

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