名香智子・他「恐怖怪奇A 戦慄の館」(1996年7月28日第1刷発行)
・名香智子「危険な微笑」
「鹿沼瑞花は地方デパートの案内嬢として働く23歳。
両親は家を手に入れた直後に観光バスの事故で亡くなり、大学生の弟、将と二人で暮らしていた。
彼女は非常に美しく、弟にとっては自慢の姉であり、彼は姉が幸せになることを心から願う。
ある日、彼女は、杉本病院のドラ息子、杉本潜一と知り合う。
弟の同級生だったこともあり、気軽に接するが、幾度か出会うたびに、潜一は、彼女が自分に気があると思い込むようになる。
潜一の思い込みはどんどん激しくなり、ある夜、家にいた瑞花に暴行を働く。
怒りに我を忘れた将は、杉本家に怒鳴り込むのだが…」
・河あきら「Grey Forest」
「東京での仕事を辞め、故郷に帰って来た槙人(まきと)。
両親は火事で五年前に亡くなり、兄のもとに居候をするが、厄介者扱い。
彼は小学生五年生まで祖母のもとで暮らしており、両親の愛の欠如のせいか、無気力な人間になっていた。
彼は、人の目を逃れ、林の中を一人、散策する。
すると、どこからか彼を呼ぶ声が聞こえ、向かった先には一軒の空き家があった。
その空き家にひどく落ち着く感じを覚え、また、女性らしき不思議な感触を感じる。
だが、ここは彼以外の人間を受け入れようとはせず、彼に言い寄る女性には怪奇現象が起こる。
彼はこの空き家にまつわる過去の出来事を調べ始めるのだが…。
小学五年生の時の失われた記憶が蘇える時、彼の前にあの時の女性が再び現れる…」
・わたなべまさこ「痩女」
「子供を欲しがらない妻と孫を望む祖母の諍いから逃れるため、博史は八甲田山麓にある蔦湯に向かう。
そこで彼は、空中に向かって、誰かが存在するかのように話しかける男を見かける。
博史はその男と宿が一緒で、晩、博史はその男と酒を飲むこととなる。
男は博史に、六か月前に死んだ母親と旅行をしていると話し、ことの経緯を語り始める。
男は柴田鉱太郎という名で、丸の内の一流企業の元・部長であった。
小学校の頃、父を亡くし、教員をしていた母親が女手一つで彼を育て、大学にも行かせてくれる。
結婚後、二人の男児にも恵まれ、母親は孫の面倒もよくみてくれた。
しかも、母親の貯金で、所沢に土地付きの家を購入。
順調満帆のように思えたが、家で彼の母親と嫁の確執が表面化していく。
嫁の母親に対する態度は徐々にきつくなっていくも、母親は決してことを荒立てようとはしない。
鉱太郎もそれを横目で見つつ、仕事を理由に関わり合いを避けていたのだが…」
2018年12月7・9・10日 ページ作成・執筆
2024年6月1日 加筆訂正