曽祢まさこ「秘密クラブ」(1996年2月1日第1刷発行)

「全寮制の私立女子校、聖・マグノリア学院。
 中庭には、薔薇の咲き誇る温室があり、そこは「秘密クラブ」の部室と言われていた。
 が、温室の扉は固く閉ざされ、誰も「秘密クラブ」に関して詳しいことを知らない。
 月夜の晩に、クラブに入る資格のある者が行くと、入り口の扉が開くという噂を聞き、一人の少女が夜、温室を訪れる。
 彼女が扉に触れると、扉が開いた。
 温室の中央にある噴水に、長い銀髪の美しい少女が座っている。
 銀髪の少女は盲目かつ唖であったが、温室を訪れた少女に向かって心に語りかけてくる。
 ここには心に重い秘密を抱えたものしか入れない、そして、「沈黙の巫女」の生まれ変わりである自分に、心を縛る秘密の鎖を預けるよう諭す…」

・「第1話 闇に光る目」(「LCミステリー '95年5月号」掲載)
「15歳の暮林千里は銀髪の少女に秘密を打ち明ける。
 東野健は、千里の幼稚園の時からのボーイ・フレンドだった。
 二人がまだ幼かった頃に、健は千里に秘密を打ち明けたことがある。
 それは、彼と母親は吸血鬼だというものだった。
 とは言うものの、健の母親は普通の人間だし、子供だったので、千里は単なる思い込みと受け取って本気にしなかった。
 これは二人の間だけの秘密として、二人は成長するが、健は全く普通の少年に育つ。
 ただ、彼は長じても自分が吸血鬼だという考えは揺るがない…」

・「第2話 遠い恋」(「LCミステリー '95年7月号」掲載)
「16歳の安積匠子は銀髪の少女に秘密を打ち明ける。
 匠子は、去年、N高に入学した。
 彼女の隣の席は、愛原智美という女生徒で、新学期から病気で欠席していた。
 前の中学校での写真を見ると、可愛らしい少女だったが、一月後、学校に出てきた頃には、髪を短くして、ボーイッシュになっていた。
 体調が完全でないものの、智美は気さくでクラスにすぐに溶け込む。
 が、ある日、体育の授業で、匠子と智美の二人が見学になった時、匠子は髪を切った智美のことを卑屈だと言って責める。
 智美が打ち明けるには、前の学校でクラスの女生徒の彼氏が心変わりをしたと言われ、
孤立してしまったのだと言う。
 遂には、智美を泣かしてしまい、それ以来、智美は匠子をどことなく避けるようになる。  夏休み、智美は手術の失敗で急死。
 それから、匠子は智美の幽霊をたびたび視るようになる…」

・「第3話 ガラスの絆」(「LCミステリー '95年9月号」掲載)
「本城真奈美は、旧家の金持ちの一人娘。素敵な両親の下で、平和で明るい日々を送っていた。
 しかし、彼女の平穏な日々は、一人の少女の出現により打ち砕かれる。
 その少女、森村葉月は、真奈美と誕生日と産院も同じであることを挙げ、真奈美と葉月が取替えっ子であると告げる。
 葉月が語るには、葉月の母親は、片親のまま、女児を産むが、同じ時期に同じ産院で、昔彼女を捨てた金持ちの息子の妻が女児を出産していた。
 嫉妬や将来への不安から、葉月の母親は赤ん坊を取り替えてしまったのだと言う。
 そして、脳の手術で視力を失うかもしれないその前に、実の娘を一目見たいと願っているのだった。
 真奈美の心は不安に激しく揺れる…」

・「第4話 洋子の場合」(「LCミステリー '95年11月号」掲載)
「16歳の深野洋子は、口下手で内気なことが災いして、小学校の頃、いじめを受ける。
 中学校になって、いじめからは解放されたものの、相変わらずの一人ぼっち。
 中学校三年のクラス替えの時、小学校の頃のいじめっ子グループから同様にいじめを受けていた少女と同じクラスになる。
 少女の名は喜美子といい、洋子は喜美子に近づき、二人は親しくなる。
 が、喜美子はどんどん周囲と打ち解けていくにつれ、洋子を避けるようになるのだった。
 洋子は思い切って喜美子に理由を聞くのだが…」

・「第5話 聖なる巫女」(同上)
「「秘密」を女神に拒否された洋子に、銀髪の少女は語る。
 遠い昔、忘れられた国、大地母神を祭る「沈黙の神殿」の聖なる巫女であった、自分の過去を…」

平成27年9月12〜14日 ページ作成・執筆

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