川島のりかず「みんな死んじまえ!!」(旧題「呪いの針地獄」)
        (1988年4月16日発行/青204)

「引っ込み思案で、陰気な菊子。
 学校では友達が欲しくてたまらないのに、いじめっ子にいびられる毎日。
 家庭環境も複雑で、母親は、二ヶ月前に父親を自動車事故で亡くしたばかりなのに、もう新しい男を家に引っ張り込んでいる、男好き。
 菊子は、いじめっ子に、母親の愛人に憎悪を燃やす。
 ある日、菊子は本でブードゥー教について読み、それをもとに藁人形で呪いをかける。
 菊子は藁人形の全体に針を突き刺し、自分の命と引き換えに、自分が憎む相手の死を願う…」

 いまいち泥臭い絵ですが、内容的には非常に丁寧なつくりになっています。
 川島のりかず先生に多い「派手だけど行き当たりばったり」という展開ではなく、ゆっくりじわじわ盛り上げていくタイプの作品で、完成度は高いと思います。
 ただ、非常にジミ〜です。「私を殺さないでよ!!」より地味です。恐らく、主人公が可愛くないためと思われます。
 粗筋はぶっちゃけ「いじめられっ子の復讐」です。
 その手の定番と言えば「キャリー」が思い浮かびますが、あそこまで派手でなく、地味地味です。
 だって、藁人形ですもん。どうしても陰湿になってしまいますね。
 また、「キャリー」と同じく、家庭状況はかなり複雑です。このいじめられっ子の少女の家庭が、母子家庭で、母親が身持ちが悪く、しょっちゅう男を家に引っ張り込んでいる様を、やけにリアルに描いているので、生臭さ満点。(性描写がエロいよりも生臭いところが、ジョージ秋山先生ちっくかも…。)
 いじめに加え、この母親が家に連れ込んでいる愛人に対する憎悪(土間にある男の靴を踏みつけるシーンがリアル)や構ってくれない母親への寂しさなど、様々な要素が少女を追い込んでいく様が160ページに渡って描かれています。
 そして、残り20ページで憎悪が炸裂、呪いが暴走する様は圧巻です。呪いのパワーを恐れながら、そして、その呪いが自分に返ってくるのを知りながら、自分の憎悪を抑えることができない少女が非常に哀れです。勿論、「人を呪わば穴二つ」で終わります。
 ちなみに、この漫画では呪いの力が発動すると、全身、体内から針が突き出すという死に方をするのですが、これは東南アジアの魔術師が病気を金属片として取り出すという治療法からインスパイアされたのでしょうか? ちょっと斬新だと思いますね。(注1)

・注1
 犬木加奈子先生の「不思議のたたりちゃん」で、身体の内側から針が飛び出る話があったように思います。犬木加奈子先生が川島のりかず先生の作品を読んでいるかもしれないと考えると、ちょっぴり嬉しかったです。

平成18年9月19日 もととなった文章執筆
平成27年1月11日 ページ作成・執筆

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