日野日出志「恐怖のモンスター」(1988年5月16日発行/青198)

・「恐怖のモンスター」(aka 「愛しのモンスター」)
「天才科学者、腐乱犬酒多飲博士は、腐った深海魚の肉塊からモンスターを生み出す。
 博士の死後、モンスターは町に出て、市中は大混乱。
 何の理由もなく、攻撃されることにモンスターは人間に対する怒りを募らせ、無差別に人を殺戮するようになる。
 政府は、モンスターが焼酎と味噌汁が大好物であることに注目して、ある作戦を立てるのだが…。
 それから、時が経ち、退治されたはずのモンスターが巨大化して海から姿を現す。
 眠りから覚めたモンスターが太平洋の無人島で身体を休めていると、自衛隊が彼を総攻撃。
 彼は自分がモンスターであることを思い出し、「怪物の宿命」である東京タワーを目指す…。
 それから、時が経ち、海中に落ちた怪物の毛から、怪物の赤ん坊が生まれる。
 怪物は魚を食べて、成長し、陸へと上がる。
 そこで出会ったのが、子供を亡くしたショックで気が狂った女であった。
 彼は狂女に育てられ、漁村の子供達と仲良くなる。
 彼の成長は目覚ましく、漁村で重宝されるが、大人達は皆、彼を不安視し…」

・「ゆん手」
「ひろしは平凡な少年。
 彼の夢はD51(デコイチ)の模型を手に入れる事であった。
 最近、彼は左手に妙なうずきを感じるようになる。
 以来、彼の左手は無意識のうちに、店の商品や友達の持ち物を握っていた。
 彼はこのことを両親に知られることを恐れ、毎日、盗んだものをゴミ捨て場に捨てる。
 だが、子供にその現場を見られると、左手は石で子供の頭を殴打する。
 彼は自分の左手が何をするのか恐ろしく、その夜から、左手を針金で縛るのだが…」

・「鶴が翔んだ日」
「雪国。
 ユキは病弱な少女で、自分の部屋から出ることはほとんどなかった。
 父親は出稼ぎで、母と祖母の三人暮らし。
 彼女の楽しみは、鶴の姿を部屋から見ることであった。
 ただ、年々、鶴の数が減っていくのが少女の気にかかる。
 また、彼女には秘密があった。
 鶴を折り、部屋から折り鶴を飛ばすと、鶴はどこまでも飛んでいき、数日後、戻ってくる。
 それを枕元に置いて寝ると、様々な夢が見られるのであった。
 父親が戻ってくる日の朝、少女が庭を見ると、鶴が全部死んでいた。
 彼女は庭に出て、鶴の死骸を胸に抱いて、嘆くのだが…」

・「山鬼ごんごろ」
「山鬼ごんごろは気は優しくて、力持ち。
 山のみんなに愛されていたが、秋のある日、彼は下界に行くことを決める。
 下界には「人間」という「この世でいちばん恐ろしい生き物」が住むと止められるが、彼は一番の力持ちだからと山を降りる。
 人里の近くで、彼は盲目の娘を一目惚れする。
 その時、竜巻と共に大蛇が現れ、ごんごろはその大蛇と対決し、見事勝利。
 娘がごんごろにお礼を言うと、その娘の美しさにごんごろは心を打たれる。
 一旦娘と別れ、山に戻っても、考えるのは娘のことばかり。
 もう一度下界に降りたごんごろは娘と再会し、娘の屋敷で暮らすことになる。
 娘は次第に彼の優しさに惹かれ、二人は夫婦になる誓いを立てる。
 だが、娘の両親や村人達はごんごろが鬼の本性を現すのではないかと恐れ…」

 「恐怖のモンスター」は正直、私の趣味ではないです。(怪獣映画へのオマージュなのかもしれませんが…。)
 それよりも、併録の短編三つがどれも素晴らしい!!
 心理ホラーの「ゆん手」、美しい叙情的ファンタジー「鶴が翔んだ日」、あまりに残酷な民話風の「山鬼ごんごろ」と日野日出志先生の多彩な才能が濃縮されております。
 特に、「山鬼ごんごろ」はのどかな絵柄ですが、胸が押し潰されそうなほど、悲しい悲しい傑作です。

2022年9月17日 ページ作成・執筆

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