日野日出志
「胎児異変 わたしの赤ちゃん」(1978年11月28日発行/HC53)
「胎児異変 わたしの赤ちゃん」(1988年9月6日発行/黄235)

・「胎児異変 わたしの赤ちゃん」
「梅木は怪奇小説家。
 彼の妻が産んだのは、巨大なカエルのような赤ん坊であった。
 彼は赤ん坊を殺すよう諭すが、妻は断固拒否。
 赤ん坊はどんどん成長し、母乳よりも動物の生肉を食べるようになる。
 更には、動物を襲うようになり…。
 その頃、世界各地で、公害の悪化により、原因不明の奇病や奇形児の出産が報じられ始めた…」

・「赤い花」
「東京の郊外にある「美花園」という花づくりの家。
 ここの主人の男は、花に対して異常なほどの愛情を燃やし、変人として知られていた。
 彼が花の品評会に出品する作品は「花と女」をテーマとして、その素晴らしい出来栄えは毎回話題になる。
 だが、彼は作品は決して売らず、花つくりの秘密も決して明かさない。
 次の品評会に向けて、彼は新たな作品に取り掛かる。
 花つくりの秘密とは…?」

・「まりつき少女」
「深い山々に囲まれた盆地にある小さな村。
 この村は半年後にダムの底に沈むというので、子供達は幽霊村を見に行こうと話す。
 幽霊村は、その村から山一つ越えた廃村で、恐ろしい伝説が伝えられていた。
 昔、その廃村が平和な村だった頃、まりつき童女と呼ばれる少女がいた。
 彼女にとってまりは友達で、まりを決して身から離すことはなかった。
 ある飢饉の年、近隣の村々は一揆を起こす。
 まりつき童女の村では皆殺しとなり、彼女はまりを切られた後、斬首される。
 以来、この村では村人の怨霊や、まりつき童女の幽霊が現れるようになり、その姿を見た者は皆、無残な死を遂げたのであった。
 子供達は幽霊村におっかなびっくりしつつやって来る。
 すると、どこからか手毬歌が聞こえてきて…」

・「真夏・幻想」
「海岸で海を見つめる二人の恋人達。
 二人は被爆者で、二か月前、女は奇形児を早産して、自殺を図っていた。
 岩陰で二人は抱き合うが、男が目覚めると…」

・「元日の朝」
「元日の朝、森本ケン一はオルゴール時計の音で目覚める。
 一階の台所に降りるが、母親の姿はなく、お雑煮の鍋がガスにかけっぱなし。
 父親の部屋に行くも、テーブルに新聞が広げられ、灰皿には吸いかけのタバコがあるが、誰もいない。
 訝りつつも、彼は河原の土手で開催される凧揚げ大会に向かう。
 町中には人気が全くなく、彼の足音だけが街路に虚ろに響く。
 河原には幾つもの凧が揚がっていたが、人の気配はみじんもなかった。
 異変を感じ、彼が慌てて家に戻ろうとすると…」

・「おかしなおかしなプロダクション」
「血野血出死の漫画プロダクション。
 ここには、大天才の血野先生をはじめ、三人の個性的なアシスタントがおり、やって来た編集者は必ず狂うと言われる。
 今日もまた、一人の編集者が「少年チング」から原稿を取りに訪れる。
 狂わずに原稿を持って帰れれば、編集長の椅子が待っていると言うので、彼はひたすら嫌がらせに耐えるのだが…」

・「水色の部屋」
「安アパートに住む若い夫婦。
 妻は、経済的な事情のため、中絶をする。
 青年は彼女をいたわるが、妻は堕ろした赤ん坊の妄想にとり憑かれていく…」

 詩情溢れる溢れる作品から超ド級のトラウマ作品、へんてこなギャグまで多様な作品が収録された短編集です。
 個人的には、名品「赤い花」と、狂気に囚われていく人妻を描いた、メガトン・ヘビーな「水色の部屋」が特に優れていると思います。
 「あとがき」は1974年に書かれ、日野先生が「劇画」家として生きていく決意が述べられております。(1988年版では「今年、昭和四十九年…」の記述は削除)
 また、「真夏・幻想」は、主人公達が被爆者という設定が問題視されたのか、1988年度版では削除されております。(いつ頃から削除されたのかは不明です。)

2022年8月10日・9月19日 ページ作成・執筆

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