日野日出志「まだらの卵」(1985年1月6日発行/黄1)

 収録作品

・「うろこのない魚」
「夏、漁港の町に住む少年は、夜ごと悪夢に悩まされていた。
 しかし、どうしても夢の内容を思い出すことができない。
 悪臭と暑さの中、少年は度々幻覚に襲われる。
 そして、少年が悪夢の内容を思い出す時…」

・「セミの森」
「夏休み、人里離れた別荘で過ごす姉弟。
 木陰で昼寝をしていると、少年は姉の悲鳴を聞く。
 駆け付けると、森の中で姉が巨大なセミに首から血を吸われていた。
 少年が竹竿でセミを叩くと、巨大なセミは無数のセミに分裂し、飛び立ってしまう。
 夜、別荘で休む二人を、セミの群れが襲撃、姉は行方不明となってしまう。
 三日後、姉は別荘に戻ってくるのだが…」

・「マネキンの部屋」
「ビルの狭間にひっそりとたたずむマネキン工房。
 そこに住む少年の父は、腕の立つマネキン製作者であった。
 だが、亡くなった妻とそっくりなマネキン人形をつくり、それに毎夜話しかけるという変わり者でもあった。
 また、気に入ったマネキン人形は人に売らず、ある部屋に集め、少年にも立ち入りを禁じていた。
 ある日、少年がその部屋の前を通りかかると、その部屋からひそひそと話す声を耳にする。
 中に立ち入った時、ものの拍子で、和服の少女のマネキンを壊してしまう。
 その夜から、少女のマネキンは少年の前に度々現れ、少年に復讐すると告げる…」

・「地獄へのエレベーター」
「マンモス団地の最上階に住む少年。
 野球の試合に出かけるために、少年は一人、エレベーターに乗り込む。
 しかし、乗客は気味の悪い連中ばかり。
 少年はエレベーターから降りようとするのだが…」

・「がま」
「秋。下校途中の兄弟。
 兄は、がまに驚いた腹いせに、がまを殴打、遂には、腹を裂いて、解剖してしまう。
 以降、兄の顔に、がまのようなできものができはじめ、更に、激しい頭痛に襲われるようになる。?
 兄は病院で開頭手術を受けることになるのだが…」

・「ともだち」
「家が隣近所ということもあり、幼い頃からずっと一緒だったマコトとサチコ。
 ある日、サチコは原因不明の病気にかかり、どんどん顔の皮膚がただれていく。
 そんなサチコにマコトは、容姿に関係なく、友情は変わらないと断言する。
 結局、サチコは死亡。
 寂しいと同時に、ほっとしたマコトであったが、彼の周辺にサチコの影がつきまとい始める…」

・「おかしな宿」
「山奥の民宿、深山荘を訪れた一家。
 しかし、その宿の主人の家族は皆、キチガイであった…」

・「まだらの卵」
「工場地帯の一角に住む少年。
 ある日、少年がドブ川で遊んでいると、原色に彩られた、まだらの卵を発見する。
 動物好きな少年は、その卵を部屋で孵そうと試みる。
 数日後、学校から帰ってくると、卵は割れ、中の生物は川へと消えていた。
 一か月後、そいつは少年のもとに帰ってくる…」

 新年を迎えるにあたって、第一弾は、怪奇マンガの至宝と言うべき、日野日出志先生の単行本「まだらの卵」であります。
 と言うか、これ以外には考えられない!!
 日野日出志先生の怪奇マンガは、グロと抒情性をミックスさせた「蔵六の奇病」のような作品の方が、一般的な評価は高いとは思いますが、個人的には、抒情性皆無の、純粋なトラウマ怪奇マンガの方が遥かに魅力的です。
 グロと不快さ以外には一切何もない怪奇マンガの数々は、その徹底さと浅薄さ故に、装飾や媚といったムダなものが微塵もなく、清々しい印象さえあります。
 例えるなら、それは血に塗れた珠玉。
 血の色を通して、怪しく輝く幻色の宝石の数々は、怪奇を愛好する人々を永遠に魅了してやむことはないでありましょう。

 あと、この単行本の凄いところは、袖に川島のりかず先生の写真が掲載されていることです。
 私が持っているヒバリ・ヒット・コミックスの中で、川島のりかず先生の写真が載っているのは、この一冊のみ!!
 しかも、日野日出志先生とのコラボ!!
 これがひばりのミラクルなのか…。

・備考
 カバーや本体表紙に折れあり。最初のページに折れあり。(美本が欲しい…。)

2017年1月1日 ページ作成・執筆

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