さがみゆき「怪談ふたり岩さま」(1985年8月6日発行/黒28)
さがみゆき「私は幽霊になる」(1987年5月16日発行)
「若者達が集まって、百物語を催す。
トリを飾るのは、女優五木さくらの妹、美代。
美代は、「四谷怪談」を映画化する際に、姉の身に降りかかった、世にも奇怪な出来事を語る。
美代の姉、さくらは映画でお岩の役を演じることになるが、姉も映画のスタッフも祟りを鼻で笑って、お岩稲荷に参ろうとしない。
美代の不安をよそに、撮影が始まるが、さくらを中心に不気味なことが続出するようになる…」
面白いです。文句なしに、佳作だと思います。
よくある「四谷怪談」ものかと思いきや、「四谷怪談」の撮影にまつわる怪異譚でして、着眼点が新鮮。
(さがみゆき先生も「四谷怪談」の執筆時にいろいろとあったようですので、この作品には当時の実体験も織り込まれているのではないでしょうか?)
また、百物語の中の一エピソード「病死した娘が、両親をあの世へ迎えに来る話」は、ゴア度が高く、なかなか強烈。(注1)
ですが、「亡き娘の声を聞きつけ、両親が娘の部屋のドアを開けると、ラブリ〜な人形のアップ」(上右側の画像を参照のこと)といった、「へっぽこぽ〜ん」(注2)なページがあったりして、ヘビーなストーリーとの落差が味わい深過ぎます。
(後で、この人形は「凶器」としても使われますが、殺傷能力は限りなく低いことが証明されます。血だまりの床の上で微笑む人形…。)
ともあれ、一つのテーマで一つの単行本を描きおろす場合、中だるみが出てしまうことが多々あるのですが、この作品に関しましては、構成がしっかりしており、途中でだれることなく、緊迫感を保ったまま、一気に読ませます。
さがみゆき先生の円熟期の名作の一つでありましょう。
・注1
楳図かずお先生の「爺様が子供の首を引きちぎって、袋に入れる話」(タイトル忘れ)の影響があるように思います。
・注2
ローザ・ルクセンブルクの「バカボン」を連呼する歌(タイトル不明)より引用させていただきました。
平成27年12月31日 ページ作成・執筆